3、閉じ込める

僕は大学生になった。成績は割と上の方だったので少し遠くの2流大学に僕は一般で受けてすんなり合格した。大学でも僕はラグビー 部に入部して適当に続けた。皮肉なもので適当に続けた大学ラグビーの方が結果は出て、僕は2年生の時にはレギュラーになり試合に出場していた。

 学生生活の方はいろんなものを見て見ないフリをした。いろんな事を挑戦すらせずに諦めるようになった。つまり俗に言う「大人になる」という行為を行った。だって挑戦しなければ後悔も絶望もない。気楽でいい、心地よかった。大抵の事は誰かが解決してくれる。流れに身を任せていればね。

自分の事も適当に決めればいい、誰かのせいにするためにね。

するとなんだか楽になった、適当な言葉を身に纏っていれば剥がれたところでまた適当な言葉を身に纏えばいい。

 そうして僕は就職した、笑顔で嘘をついて面接を突破して、先輩にこびを売って、僕はようやく普通になった。大体ガスや電力の会社に就職したい理由ってなんだ?みんな安定してる事と待遇、福利厚生でしか見てないだろうに、面接で言うと落とされるからと言ってもっともな理由を無理やり引っ張り出して、上手く取り繕う。上手に嘘をつける人から受かっていく。社会はそう言うシステムだから僕のついた嘘は正しい。こうして昔ヒーローに憧れていた子供が上手に嘘をつく大人になっていくのだ。

今まで僕は暗闇にいた気がした。だが今はそこまで感じない。

ある朝の5時に目が覚めて、ふとベランダに出る。

世界が黒から青に変わる、朝露に濡れた草木たちがはっきりと視認できる様になった。朝日が昇って世界が光に包まれるまでのほんの数十分、青の世界は出現する。青く染まる世界に喜んでいるのか、びっくりしたのかは分からないが、鳥が鳴き、虫が鳴き活動を始める。

この時間はいい、今この青の世界では動いている人が少ない、今この瞬間だけは頑張らなくていい気がするから


光はまだ見えないけどもう少しで見えそうだ、きっと時間が経てば光が溢れる。それまではただ、この青の深さに心を沈めて。

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黒から青に変わる @sasanqua13

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