変態はベッドに潜む


 その後、新たに鬼畜でショタで、夜のお盛んな魔王として誤認された俺。




「ヒック、ヒック、ウゥゥゥゥゥ。」




 隣で泣き止まないリアベルと、リアベルをちょこちょこと足蹴りしているリナを連れながら、城の中を散策していた。




「はぁ、明日からずっと噂される奴じゃん」


「この、駄キュバス」


「すびまぜん」




 何だろう、凄く残念な感じになってる。


 俺の下についちゃった人ってポンコツ化でもするのだろうか。


 泣きながら、蹴られながら、ついてくるリアベルを見るとついそう思ってしまう。




 ※メインヒロインであるエリスも十分にネジが外れていることをカイザーは知りません。




「それで、部屋の場所わかるんだよな?」


「ばい、最初に見せてもらった城の設計図に乗ってたので全部覚えています」


「いちいち優秀なんだよな」




 今はリアベルの案内で新しい部屋に連れてきてもらっている。


 まあ、連れてくるときもその他大勢に大いに誤解されたが。




「鬼畜ショタの部分は間違ってない」


「その通りです」


「身内にも誤解されていたというのか」




 どうにかこうにか二人の誤解は解けずに部屋の前についてしまった。


 いかにも特注で作りましたみたいな部屋だった。たぶんこれ身分が高い人の部屋ですけど。自分平民魔王ですけど。




「リソースの半分以上をこの部屋に費やしたと聞いてます」


「馬鹿なの?」




 リナ、君はわかってくれるか。




「すべて費やすべき」


「ちなみに私なら作業効率を200%まで上げられます」




 どちらもポンコツだった。




 言い争う二人を置いて、中に入る。




「おぉ」




 ひっろい部屋だ。


 浅はかな感想しか出なくて恥ずかしいが、それくらいしか出なかった。


 既に家具や、テーブルなども置いてあり、すぐに住み始めることもできそうだ。




「ベッドがふかふか!」


「ここにスラちゃんを…」




 ついてきた二人はすでにハイテンションだ。


 そしてリアベル、お前は不穏なものを置こうとするんじゃない。


 部屋に怪しげなものを置いたり、布団で飛び回っていたリアベルを窓から追い出し、リナをジャガーに引き取ってもらった。




 そんなわけでようやくゆっくり出来るというわけだ。


 部屋の中にある大きなベッドに倒れこみ、大きくため息を吐く。




 本当に最近はいろいろあった。




 魔王にはなるし。


 人様の娘さんを俺のもの認定するし。


 変態を何人か飼うし。




 思い返してみると、実にやばい道のりを進んでいる気がする。




 ヒロインや主要人物と関わるたびにエロゲの世界で生きているのだと実感している。


 エロゲ世界の住人になって、自分というキャラは何者なのか、そんな疑問が頭に浮かぶこともあるが考えなかったことにしている。




 考え事ばかりしていると、だんだんと眠気が強くなった。


 意識がゆっくりと沈んでいった。




『じゅるっ♡』




 不穏な音が聞こえたが気のせいだろう。








「しかし、他の魔王は何の接触もなしか」


「ああ、それがおかしいんだ」




 夜、皆が寝静まるころ、二人の男性が話し合っていた。


 現四天王のゾルディスとガルドだった。




 もともと先代から魔王軍に従事していた二人はこういう国の混乱や対策においては慣れていた。


 新たな魔王の誕生、周りの魔王からの襲撃など、起こりうる事態はいくらでもあった、はずだった。




 しかし、今になって起こったことは名も知らぬ魔王が襲ってきたのみ。




「龍という存在が明るみになっている」




 国にすぐに勧告をしたものの、国の外から来ていた数少ないものでそれを目撃したものにより噂になっている可能性は高い。


 にもかかわらず、襲ってきた魔王が一人のみ。




「どこぞの大物が狙っておるというわけか」


「その可能性は十分にある」




 大抵、古い国にも資源はあり、魔王以外にも、野盗、山賊、人間の国からの進軍があってもおかしくないほどの事態だった。


 考えられる可能性は、先にこの国を狙っていた魔王がいる。




「グリス様の件、ランドのクーデターだけが原因ではないかもしれんな」


「…うむ」




 兄の一方的な嫉妬による玉座の簒奪の事件は何かが後ろにあった可能性が出てきた。




「姫様の件はどうじゃ?」


「馬鹿なっ!?ありえない、姫様の異能はどこにも漏らすことなどないっ!」


「どんな些細なこともなかったのか?」


「…ないわけではない」




 エリスのその特異な能力が発現したときにその場にいたのは、エリスを生んだ母君にグリス、そしてそれを手助けした部下。


 その部下から漏れた可能性は十分にある。




「その時にいた人物は?」


「既にほとんどが他界している、いまだ残っているものも確認できなかった、はずだ」


「出所はわからぬか」




 ゾルディスもガルドも思わず、ため息を吐いてしまう。


 これから狙われる魔王にも、これから起こりうる事態にも。




「お互いに大変なものを抱えることになるの」


「エリス様はグリス様が最後に残した国の希望だ。これからも支え続ける」


「わしの孫は好き勝手に突き進むからな、気になって夜も眠れんわい」




 お互いに苦労を打ち明けながらも、これからの若者の未来を楽しそうに語った。



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エロゲで戦闘力特化で転生したところで、需要はあるか? トム爺 @rasengasa

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