35.【Fairies】西澤杏奈さん

https://kakuyomu.jp/works/16816700428703928422


あらすじなど(作品ページより引用)

【カクヨムコン期間限定】毎日7時12分更新!

普通の少女だったはずのキャサリンは、ある日人々が恐れる「ペスト」となる。マダーと呼ばれる謎の女に命を助けられた彼女は、仲間のペストから隠れて生きのびる術を教えてもらい、ペスト最大の謎の組織「神の僕」、安全保障隊の兵士たちと関わることになる。


数々の人と会い、ペスト側、人間側の過去、光と闇を見、キャサリンは気がつく。彼女が二つの道のうちいずれかを選ばなければならないことを。

人類を滅ぼすか、ペストを滅ぼすか。



☆☆☆



第35弾です。

西澤杏奈さん、ご参加ありがとうございます。

物凄い時間かかりましてすみませんでした。

がっつりネタバレ含みますのでご注意下さい。




今作は現代ファンタジーです。

第17話まで読みました。


作品としては、アイデンティティがテーマになるんでしょうか?

信じていたものが実は一面の切り取りでしかなく、ではこっちかな?と思った方もまた、一面の切り取りでしかなく、どちらも正義とは言えないじゃないか!みたいな感じになるのかな?と思います。


あらすじの意訳なんですが 笑


読んだ部分までで言うと、人間が正義、ペストが悪と思っていたけれど、自分がペストになると、あれなんか思ってたのと違うっぽいぞ?となったような部分でしょうか。


ここから恐らく、ペスト側の存在意義に踏み込んでいくような形になるのかな?と思います。


100話まで公開されてる中の、17話までの話ですので話が進めば変わる内容も含まれると思うんですが、キーになるのが、『群像劇』という表現方法かな、と思います。


群像劇。

投稿サイトでは難しい表現だと思います。


狙いとしては、多視点というか仲間の経歴とか価値観を掘り下げることによって、主人公の価値観の変容に説得力を持たせるという仕掛けかなとも思います。

そのため、仲間一人ずつの歴史や行動原理が分かるように、それぞれが主人公になるようなテーマの変更が起こっているのではないでしょうか。


少し抽象的ですね。


例えばです。

自分が、ここが安くて品質がいいと信じてやまないスーパーマーケットがあるとします。これをA店としましょう。

しかし、B店の方が、価格帯は少し高いけれど、品質との差、つまり費用対効果がいいということを知ってしまった。


このスーパーB店がいかに優れているかを納得した瞬間を表現する方法は二つあります。

一つは、自分が買って、衝撃を受けたという表現です。

え?このパスタA店では売ってないハイブランドなのに、値段が30円しか変わらないなんて!!って感じです。


もう一つは、B店のドキュメンタリーをやることです。創業者の意志とか、企業努力の内容とか、バイヤーが走り回ってる姿とかを見せて、ああ、Bの方が凄いんだ!!って思わせる仕組みです。


今作は、後者です。

なんか少し違う気がしますが、雰囲気が伝われば大丈夫なのでこのまま行きます。


そんな感じで一言で表せば客観性を持たせるための群像劇という表現かなと思います。


群像劇。

投稿サイトでは難しい表現だと思います(二回目)。

更に、今作の群像劇は、マラソンタイプの群像劇なんですよね。

だから、なおさらです。


またなんか言い出したぞ、って感じかもしれませんが、群像劇には、マラソンタイプと駅伝タイプがあるのかなと思います。


マラソンタイプって要するに、スタートからばーっと登場人物が出てきて、ぞれぞれの紹介がわーって始まるタイプです。

駅伝タイプは、一人ずつ順番に出てきて、ぞれぞれが持ち場を担当しながら紹介されるタイプです。


勝手に私が思ってるだけです。


今作は、前者。

登場から割りと登場人物が次々と現れて話が進みます。

この場合の難しい所って単純で、登場人物を読み手が把握しきれないんですよね。


書き手は、この話がどこに繋がるのか分かってるので――私が書くと分からないことが多いですが 笑――、当然その登場人物の役割と、その話の帰結――この場合は、本筋のどこに繋がるかです――が分かるんですが、読み手はそれが分からないので、その人物の『個性』を把握できないままに話が進むんですよね。


だから単純に、これ誰だっけ?ってなりやすい。


何度か書いてるんですが、投稿サイトの小説って、『読む』より『見る』感覚が強いので、個性が薄れると逃がしやすいです。


当然、読み進めて行って、終盤、大きな流れが出来た時、ストーリーが分厚い分だけ感動は大きくなるんですが、そこまでの引き込みが難しいな、と思います。


駅伝タイプにすると、スタートで主人公の掘り下げがしっかりできるので、軸がぶれにくいという特長はあるかと思います。

ただ、駅伝にするとチーム戦になるので、主人公の物語としての感動は弱くなります。


箱根駅伝で、学校の名前って連呼されますけど、選手の名前って埋没しますよね。

マラソンは、勝っても負けても選手の名前が前に出ます。


そういう違いがあるかと思います。


これもどこかで書いたような気がするんですが、読む側って、あらすじとか、タイトルとかから、読む目的を探して読み始めてます。

これは特に、投稿サイトでは強い傾向かと思います。


なので、あらすじで、主人公はどちらを選ぶのか?と書いてあると、主人公がどっちを選ぶんだろう?と思って読み始めるわけです。


しかし、主人公の話がなかなか出て来ないとなると、読む人が迷子になります。


うどん屋さんに入って、メニュー表に定食とかカレーしか書いてなかったら、『あれ?うどんのメニューはどこ?』って探すような感じです。

この時、何定食があるか、はほとんど頭に入ってきません。

エビフライ定食が美味しくても、うどん探すのに必死です。


こんな感じで、この人は誰?感が更に増すという難点があるのではないでしょうか。

そうなると、何書いてあるのか分からなくなります。

目が滑ってしまいます。


ただ、この前提を外して読むと、話が変わります。

一度、読み初めまして、ああなるほど、主人公の話はあとからやるんだねと分かったうえで、もう一度、読むと、物語の進行もスムーズで、展開もドラマティックですいすいと読めました。


一話辺りの分量が読みやすい量に絞られているけれど、話はきちんと進みますし、それぞれに読ませる場所もあります。


だから、もう少し嵌る形に落とし込めたらもっとたくさんの方に届くんじゃないかな、と思います。

たぶん、書く人からの評価は高いと思います。

書く人は読もうとする人が多いです。


だから、なぜこんなに褒めてもらえるのに?ってモヤモヤがあるんじゃないかと勝手に推測してます。

要らん世話ですが 笑


さて、こんな本作。

作品をしっかり読み込みたいという方には特に伝わりやすいのではないでしょうか?

是非一度、ご一読を。


https://kakuyomu.jp/works/16816700428703928422


改めまして西澤杏奈さん、ありがとうございました。


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