第2話 遥陽side

小学校で同じクラスだったヒナタ。

大体休み時間になると外に出て遊ぶのに、この時は授業でテストが返されたのをヒナタは机に突っ伏して泣いていた。


「おい、何泣いてんだよ?腹痛てぇの?」


声出して泣く訳でも無く、ただ静かに泣いていた。


「え、、?あ、遥陽だ。お腹痛くないよ。」


顔上げたヒナタの顔はおでこに赤く跡が残り、目は泣いて赤くなっていた。

それと同時に俺に見られたくないのか、返却されたテストを俺に見えないようにうまい具合に隠した様子を見ておおよそ察しがつく。


「はあぁぁ。テストの点数か?悪かったのかよ?」

「ううぅぅ、、はるぅぅ〜!!おれ、算数なんて嫌いだよぉ!!」


察しは見事に的中し、一生懸命堪えてた涙はまたポロポロと溢れ出し、テスト用紙はヒナタの涙で文字は滲みぐしゃぐしゃになる。


ヒナタはドがつくほどの負けず嫌いだが、勉強が苦手なのが弱点。

特に算数は拒否反応が出るほど苦手。

でも、ヒナタには才能がある。

運動も出来れば絵だって描ける。

幼馴染の俺からしたらちょっとしたヒナタの自慢ポイント。


「悔しいよぉ!頑張ったのに〜!!」

「ちなみに何点だったんだよ?」

「絶対ヒカない??約束してくれる?」

「分かったから早く言えよ!」


うまく俺から隠したテストの点数を掌で薄く覗かせてきた。

「ん??2、、8??」

「、、うん。」

「、、、」


自分の席に座ってるヒナタはゆっくりと俺の顔を見上げる。

俺の顔を見て何かを察したのか、俺が上手く表情を隠しきれなかったのか。

容易に想像がついた。


「ほら!!ほら、その顔だよ!遥陽は正直なんだよ!全然隠しきれてないじゃん!ヒイてんじゃん!だから見せたくなかったんだよぉ!!」


「いや!違うって!ヒイてんじゃないから!なっ!だから泣くなよ。もう休み時間終わるぞ?」


ヒナタは俺の服に顔を埋めて悔し泣きをする。

こいつ本当に俺と同い歳なのか、、?

弟を慰めてる気分だよ。


「また頑張ろうよ。お母さんもヒナタの負けず嫌い知ってんだからそこまで叱らないと思うぞ?」

「遥陽、一緒に来てよ。お母さんに俺頑張ったってちゃんと言ってよ!」

「え、、?」

「ね??良いでしょ?おねが〜い!!」


服に埋めて泣き止んだヒナタが笑顔で俺を見上げお願いする。


「はあぁぁ。俺はいつこの流れ卒業できんの?」

「え?卒業したいの??」

「いや、、別に嫌とかじゃないけど、中学高校なっても俺一緒に行かねぇからな!」

「だって俺勉強苦手なんだもん。遥陽が教えてくれないと落ちこぼれだよ?」

「分かったよ、、今回だけだからな!」

「うん!!」


ヒナタは俺を上手く操る。

まるで掌で転がされてるみたいに。

でも、あの太陽みたいな笑顔でお願いされると断れない俺も俺だ。


気づいたら休み時間も終わりクラスメイトも校庭から走って戻ってくる。

ヒナタは涙も引いて目の赤さも落ち着いた。


当の俺は、今日に限って緑の服を着てしまったからヒナタの涙の跡がくっきり残りジメッとした感じがまだ残ったまま席に戻ることになった。


汚ねぇの、仕方ねぇヤツ。


でも口から出た言葉でも本心ではない。

ヒナタが俺を呼び、俺を頼り、俺に笑顔を向けてくれる。

その些細な表情が心をくすぐり涙で濡れた服を見て微笑みながら出た言葉だった。











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薄衣の恋 縁-enishi- @0228_0713

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