小説のタイトル

 最近、モーパッサンの短編(柊圭介さんの解説で)を読むことが多く、それにつけて思うのですが、モーパッサンの作品はタイトルが短く、凝っていないということです。たとえば、「父親」、「墓」、「初雪」、「首飾り」など。

 それは新聞に連載していた短篇なので、別にタイトルで人を惹きつける必要がなかったからでしょう。


 でも、普通、フランスの(単行本)の小説は、タイトルを聞いただけで読みたくなるのが多いように思います。たとえば、思いつくままに書いてみますと、「失われた時を求めて」、「異邦人」、「悪の華」、「ドルジェル伯の舞踏会」、「悲しみよ、こんにちは」、去年のノーベル賞のアニー・エルノーの「シンプル・パッション」、それからロートレアモン伯爵の「マルドロールの歌」など。

 飛びついて読んでみると、よく理解できないというのもありましたが。


 話変わって、ウェブ小説のタイトルというのは、これまでの本のタイトルとは違いますよね。スマホなどで読む人が多いので、一目で何が書いてあるかわかるように、工夫がなされているのでしょう。

 たとえば今日のカクヨム総合一位は、☆8180(どうしてこんなに☆がもらえるのだろうか!)を獲得している驚異の作で、岳烏翁さん著、

そのタイトルは、

【祝200万PV! 】転生チートの空間魔法使いは正体隠して目立ちたい!~国でもトップレベルの美人・美少女バーティに探されてますが、それ俺ですとは言えません~


  キャッチコピーが、

「ああ…・今の俺、すっごく目立っている・・・・・!」、

 この方、文章のほうもそうだと思うのですが、タイトルとかコピーをつける才能が抜群ですよね。


 それでは、みなさまはこれまで読まれた本の中で、このタイトルはすごいと思われた本は何でしょうか。

 わたしはサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」でした。

 英語では「The Catcher in the Rye」(ライムギ畑の捕まえ人)ですから、別にどういうことはありません。日本のタイトル、「つかまえて」という「て」という助詞で終わらせるタイトルを考えた人に、特別のセンスがあったということですよね。

 また古いスコットランド民謡「ライ麦畑を通ってくる」を知っていれば、それほど新鮮に聞こえなかったかもしれません。


 タイトルを見ただけで、これはぜひ読みたいと思った小説には、カポーティの「遠い声 遠い部屋」、三島由紀夫の「仮面の告白」、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」、

最近の方ですと、村上春樹「ノルウェーの森」、吉本ばなな「キッチン」、カズオ・イシグロ「わたしを花さないで」、角田光代「愛がなんだ」などがあります。


 もっとほかにあったとは思うのですが、思い出せません。起きたばかりだからということにしてください。きっと後で、なぜこれを忘れていたのだろうかと思う小説が何冊もありそうです。


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自由人のお散歩 九月ソナタ @sepstar

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