喋る、赤べこ

宇宙(非公式)

神様ってどんな存在なんですかね

「ねえ、独白の反対は何か分かる?」

皆黒かいこくとか?」

 赤べこは頷いた。少し間を置いて、彼、いや、彼女、否、正確には私は分からないのでそれは言った。

「うん。そうだね。さらに言えば、外黒がいこくとも言えるね」

「で?」

「つまり、外国と開国で通じるのは独白と反対、喋り続けることだ同義なんだよ」

「へえ。いつものこじつけか」

〈彼女〉がつまらなそうな、実際には全く興味がないのだが、とにかくそういう返事をしたのは、そろそろ『あの』時間が来るからだろう。

「ねえ、君はさ。神様を信じるかい?」

「僕やリリィに糧秣りょうまつをくれるあの方がいるじゃない。あの方を神と呼ばずしてなんと呼ぶのさ

赤べこは首を縦に振ることしかできない。その代わりというか、まあその代わりでいいのだろうが、

「でも神様はさ、いろんな世界を見てないと。きっと神様は色々な、沢山ある世界を、違う次元から眺めているんだよ」

彼はそう、『言葉』を使って否定した。

「あ、じゃあそろそろ糧秣の時間だから」

「ああ、うん」

「君は食べないんだもんね」

「まあ、君が神だと思うヤツは、僕は食事をしないと決めつけているからね」

〈彼女〉は、だって君はそういう存在だろう、という言葉を飲み込んでいるように見えた。

「やっぱ神様って不思議な存在だね」

「私にとっては貴方みたいな存在こそが神様に見えるけど」

〈彼女〉がそう言ったからだろうか。直接的ではないにせよ、赤べこは首を嬉しそうに振った。


〈彼女〉は飛び跳ねるように階段を登る。聖杯に聖水が盛られ、その隣に香ばしい香りのする飯が置いてあった。〈彼女〉は幸せそうな顔をする。その近くに、猫を抱えた男性が近づく。


 首を振り通しである赤べこのそばに、エプロンをつけ、ゴミ袋を持った女性が近づく。


「なんか、君みたいな生活になりそうだ。ホームレス生活から、裕福な生活に一変するなあ」

「貴方のこじつけ、あんま好きじゃないのだけれど」


 赤べこはゴミ袋の中に放られ、首を振るのをやめた。

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喋る、赤べこ 宇宙(非公式) @utyu-hikoushiki

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