火曜日の先輩

@seiichi_120

第1話 公園での失敗と出会い

最近はラップを聞きながら散歩をするのにはまっている。

家の近くの公園は、周りが住宅街なので夜はほとんど人がおらず、音楽を聴きながら散歩をするのにちょうど良い。

最近聞いているのは海外のラッパーの曲だ。

新曲が出ているのだが。特にフック(サビ)の部分がよくつい口ずさんでしまう。

今日もいつも通りスーパーで買い物をした帰りに音楽を聞きながら公園を歩く

(んー、イェー)

声にこそ出さないが、心の中で音楽に乗りながら歩くのは気分がいい

(ふん、ふん)

フックに差し掛かりだんだん曲も盛り上げってくる

(ふん、…いえー!!」

「え、なに…?」

「あ、す、すみません…」

人がいた、終わった。曲の盛り上がりで思わず声を出してしまったが、まさかこの公園で人に会うとは…。

暗闇だったので気づいていなかったが、角を曲がったところのベンチに女性が座っていたようだ。死角になっている上に音楽に夢中になっていて気づかなかった。

あまりに恥ずかしかったのでのですぐに立ち去ろうと思ったが、

ふと相手の方を見ると、目が合ってしまう。

そこにいたのは黒髪で、スウェットにTシャツとうラフな格好をした女性で、きれいな黒髪と三白眼が印象的な整った顔立ちをくしゃくしゃにして…、泣いていた。

何があったかは知らないが、とにかくタイミングが悪い。

弁解をしようとしたが、ただでさえいきなり男性から声をかけられると怖いだろうし、何より目の前の男は先ほどいきなり奇声を上げた男だ。場合によっては警察沙汰だろう。

普通ならこういう場合は迷ったあげく逃げてしまうのだが、そうしなかったのは、女性の泣き顔がやけに様になっていたからだろうか。

「…これ、あの、暖かいお茶…、開けてないです。あとこれはハンカチなんで。」

「え?あの…」

「すみません、じゃあ」

そうして僕は早足でその場を去った。

とっさに何かをしようと思った結果、先程買ったばかりのお茶と、大したものではないハンカチをを置いていった。

いきなり奇声を上げて、ハンカチとお茶を置いていく。変質者か新手の妖怪の所業だ。どっちに思われたとしても救いはない。

今日はもう帰って寝よう。

唯一の救いは、もう多分あの女性と会うことがないという事だろう。

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