第7話 冒険者登録
———冒険者。
主にモンスター狩りや国と国との戦争に金で雇われる傭兵チックな事、更にはとある田舎の家の建設の手伝いなど、多岐に渡って依頼を受ける、所謂何でも屋の様な職業である。
我の世界にも、この冒険者と同じ様な仕事をする———ハンターはあったらしい。
まぁ我の様な魔族の国にはなく、主に人間共がやっていた職業であったが。
そんな冒険者なるべく、我と、嫌々ながら無理矢理連れて来たレティアと共に、邸宅を出ていた。
———ゲームの舞台である王都へと。
1度もこの身は来たことなどないが、何回もこの光景を見て来た。
我の魔王城よりは勿論小さいが、それでも目を見張る程の巨大で豪華絢爛な城。
その城下町は活気に溢れ、様々な種族の者が行き交っている。
「ふ、ふはは……フハハハハハハ!! これぞ我が夢見た世界ではないか! フハハハハハハ!!」
いきなり狂った様に笑い出した我に、レティアのみならず、周りの様々な者達もギョッとした様に目を見開いて我を見る。
「ど、どうしたんですかアイン様!? いきなり狂った様に笑われて頭でもおかしくなったのですか!?」
「見るのだレティアよ! 素晴らしいではないか! 我が画面から見ておった世界が我の眼前に広がっておるのだ!」
これを一ゲーマーとして興奮しないでいられるであろうか?
———否!
そんな奴は真のゲーマーなどではない!
「
「ちょっ———物凄く恥ずかしいんですから笑わないでくださいッッ!!」
我がギルドに着くまでに、様々な場所に寄り道をしたせいで、着くのに半日の時間を要した。
「———や、やっと着きました……」
「む、何をそんなに疲れておるのだ?」
「アイン様のせいですけど!? アイン様がギルドに行かず、彼方此方フラフラと道草を食うのがいけないのです! 今はもう夕方ですよ!? 私達が来たのは朝なんです!」
「そう怒るでない、レティアよ」
「どの口が———はぁ……分かりました」
まだ何か言いたげであったレティアであったが、どうやら何とか我慢することを選んだ様である。
懸命であるな。
我は静かになったレティアを連れて、冒険者ギルドの建物へと入る。
中に入れば、呑んだくれてベロベロの冒険者達の怒号や歓声が我の鼓膜を貫く。
レティアはあまりの五月蠅さに耳を押さえておるが……仕方ないことであろう。
「う、五月蝿いですね……」
「うむ、少し待つがよい。もう少しで我が黙らせてやるのでな」
我はそのまま冒険者達には見向きもせず受付へと向かおうとするも……やはりただでは倒してくれぬ様だ。
我の前に、顔を真っ赤にした大男2人組が立ち塞がる。
「おいおい〜此処はこんなお子ちゃまが来る様な場所じゃないぜぇ〜?」
「それよりそこの姉ちゃんマジで可愛いなぁ? どうだ? 俺達と一杯しないかぁ? その後は俺の部屋で———」
「お断りしま———」
「ふむ……無謀にも、其方は我のメイドに手を出そうと言うのか?」
我は2人の言葉を遮り、レティアに伸びた腕を掴む。
すると掴んでいる手をもう片方の手で握っては何やら力を入れてきた。
「お、やんのか坊ちゃん? 俺は強いぜぇ?」
「……我に喧嘩を売っておるのか?」
「おうよぉ! お前みたいなお子ちゃまなんぞ俺が力を入れれば一捻———うごっ!?」
どうやら我は喧嘩を売られているらしい。
此処は、元魔王として受けぬわけには絶対にいかぬ。
我は対抗して《第1階梯強化魔法:身体強化》を発動し、『ミシッ』と骨が軋む音が聞こえるほどに強く握りしめる。
突然強くなった我に驚く冒険者は、我の手を退けようとするが……我に勝てる筈もなく、そのまま腕の骨が折れてしまった。
「ぐぁあああああ!? お、俺の腕が!?」
「ふん、その腕は指導料である。我の前に立ったこと、我のものに手を出そうとしたことを悔いるのだな」
我が軽い殺気を放ちながら言うと、冒険者は酔いが覚めたのか、赤い顔を一気に真っ青にしてギルドから一目散に逃げて行った。
一気に静かになったギルドで、ドタドタと2階から誰かが階段を駆け降りてくる音だけがこだまする。
「———そこの君達! 取り敢えず僕と一緒に別室行こうか!?」
現れた眼鏡を掛けた好青年がそう言うと、突然我の身体とレティアの身体が転移した。
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今日は2話投稿。
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