ゴブリンライダー

石造りの扉を潜ると学校のグラウンド程の空間が広がっていた。そして部屋の中央に佇む影が一つ。


一回り程身体が大きいキラードッグに跨るゴブリン。ネットには『ゴブリンライダー』と書かれていた記憶がある。ゴブリン&キラードッグなんて正にこのダンジョンに出現するモンスターの最終形態だろう。


「騎乗してたらキラードッグの機動性が失われるんじゃないのか?」


キラードッグの特徴は高い機動力で相手の攻撃を回避するところにある。騎乗してしまってはゴブリンの重さでその機動力が損なわれてしまうのではないだろうか。

そんな疑問を抱きつつHK416をセミオートにし、ゴブリンライダー目掛け3発射撃する。しかしそんな俺の疑問をゴブリンライダーは一蹴してきた。


「・・・おいおいマジかよ!?」


俺が射撃した瞬間ゴブリンライダーが大きくジャンプし銃弾を回避する。そうしてそのままボス部屋の外周を回り始めたのだ。

今までのキラードッグは直線的に突っ込んでいき、こちらの攻撃をサイドステップで躱すだけだったが、このゴブリンライダーは明らかにこちらを翻弄し、死角からの攻撃を狙っている。


「鞍上がいれば動きも変わるってか!?」


続けて数発射撃するが、またもや巧みなステップで躱されてしまう。


「っ!・・・弾切れ!?」


そんな射撃しては躱されを何度か繰り返している内に、スライドストップが掛かる。弾切れだ。

俺は急いでマガジンポーチから新しい弾倉を取り出すが、そんな隙を見逃してくれる程ゴブリンライダーは間抜けではない。


ゴブリンライダーは両手に持った鉄の剣を振り上げ、俺に向かって飛び掛かってくる。それを横跳びで回避した俺はレッグホルスターからグロック17を抜きゴブリンライダー目掛け数発射撃した。

ゴブリンライダーも回避しようとするが、飛び掛かり攻撃後ですぐには動けないのか全て躱すことができず左腕に1発弾を受け鉄の剣を落としていく。


「流石に攻撃後には隙ができるってか?」


俺はHK416のスリングを締め、邪魔にならないよう身体に密着させる。相手の攻撃を回避して一撃を加えるのであれば、HK416のような長物の銃よりもグロック17のような拳銃タイプの方が動きやすいと判断したのだ。


「俺は専業の探索者になるんだ。こんな初級ダンジョンのボス相手に苦戦するつもりはない!」


距離を取ったゴブリンライダーが再び外周を駆け始める。先程と違うのはゴブリンライダーからの殺気をビンビン感じるところだ。傷を負わせた俺を許さんとばかりに鋭い視線を送っている。


「来いよゴブリンライダー。次で決めてやるぜ」


俺の声に呼応するかのようにゴブリンライダーが正面から飛び掛かってくる。あれだけ俺の死角を狙っていたのに正面から飛び込んでくるとは、戦士としての意地か、それとも所詮はモンスターなのか。


「ここっ!」


俺は飛び掛かってきたゴブリンライダーに照準を合わせる。狙いはゴブリンの下。キラードッグだ。

『将を射んとする者はまず馬を射よ』ではないが、通常よりも大きいキラードッグに照準を合わせるのは鞍上のゴブリンを狙うより容易だ。何よりゴブリンライダーの機動力はその殆どが乗騎のキラードッグに依存している。つまりキラードッグさえ何とかしてしまえば後は通常のゴブリンを対処する要領で戦える。

そして何より。


「動き回るキラードッグが無防備に頭を晒すのはこのタイミングってな!」


キラードッグの頭部目掛けグロック17を5発放つ。銃弾を受けたキラードッグは空中で態勢を崩し俺の目の前に落下した。流石のボスキラードッグも頭部に5発もの9mm弾を喰らえばひとたまりもなかったようだ。


「よしっ!・・・・・っ!?」


地面に横たわるキラードッグの陰からゴブリンが斬りかかってくる。狙い通りキラードッグを仕留められたと安堵した瞬間、俺は気を抜いてしまい反応が遅れてしまった。

何とかバックステップで直撃は避けることができたが、剣の切っ先が俺の防弾ベストと上着を切り裂いた。インナーがダンジョン素材を使用した防刃仕様でなかったら俺の身体にも傷が入っていただろう。


「あっぶなっ!?ふざけんな!」


グロック17の弾倉に残った弾を全てゴブリンへ向け放つ。グロック17が全ての弾を吐き出し、スライドストップが掛かるころにはゴブリンは霧となって消えていき、横たわるキラードッグも消えていった。


「・・・ちょっと撃ちすぎたかな。ていうか防弾ベストとSWAT風の上着がバッサリと・・・高かったんだけどなぁ」


幸い防弾ベスト(コスプレ)に付けていたマガジンポーチとHK416の弾倉は無事だったが、正直ショックが大きい。


「まぁ、探索者になる前からサバゲーで使ってた装備だから傷みもあったし、これを機に買い替えるかぁ」


折角の初ボス撃破&初ダンジョン踏破なのにこんなケチが付いてしまったのはアレだが、ここは装備の更新時期が来たと考え、気持ちを切り替えることにしよう。


「父さんと母さんを飯に連れてこうかなぁって思ってたけど、装備代に消えそうだなぁ」


地面に落ちたゴブリンライダーの魔石を拾い、俺は何とも言えない気持ちで帰路へとつくのであった。

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銃で戦うダンジョン探索 トロロ将軍 @mikuni1945

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