士別ダンジョン踏破を目指して

三浦達カースト上位4人と遭遇した翌週、俺は再び士別ダンジョンに足を運んでいた。

目的はただ一つ。今週末中にこの士別ダンジョンを踏破することだ。


「別に初心者ダンジョンだから踏破しなくても問題ないんだけど、折角なら踏破してから次に行きたいよね」


俺が士別ダンジョンの踏破を急ぐ理由、それは探索者ランクを上げたいからだ。

専業の探索者になるには最低でもCランクまで上がる必要がある。理由は単純に実入りの問題だ。Cランクから入場を許されるダンジョンは危険度も格段に上がるが、その分魔石やレアドロップの買取額もDランクダンジョンと比べて格段に上がるらしい。

今の内から貢献度を積んでおき、できれば高校を卒業する頃にはCランクに上がっていたい。


「その為には、もっとエイム力を鍛えなくちゃな」


HK416の薬室に弾薬が装填されていることを確かめ、俺は3階層へと下っていく。

今日はまず3階層でキラードッグ相手に素早くエイムを合わせる練習と、できれば最下層である7階層の下見ができたらと考えている。


事前に調べた情報では、士別ダンジョンのEランク指定されている6階層と7階層だが、出現するモンスターに変化はないらしい。ただ、モンスターの出現数が上層よりも多くなるため、Eランク指定がされているらしい。


「っと、早速お出ましだな」


4階層への階段を探して歩いていると、前方からキラードッグが1匹こちらへ向かって走ってくるのが見える。俺はすぐに安全装置をセミオートに切り替え、キラードッグへ銃口を向け引き金を引く。キラードッグは避ける間もなく銃弾を受けると、そのまま前のめりに倒れ、霧になって消えていった。


「素早くエイムを合わせることには慣れてきたな。もう数体練習してから4階層に向かうか」


キラードッグの魔石を拾いながら自分の成長を実感する。何事も練習の成果が出るのは嬉しいものだ。俺は自然と口角が上がるのを感じながら魔石をバックパックに入れる。


その後もキラードッグ相手にエイムの練習を続けた。相手のサイドステップに合わせて照準をずらし射撃する練習では命中率は8割程度だった。以前に比べれば向上した方だが、まだまだ練習が必要だ。


「さて、そろそろ4階層へ行ってみるか。あんまり長々と練習してても7階層に行く時間が無くなっちゃうからな」


俺はHK416の弾倉を交換し、空の弾薬に新しい弾を詰めると、4階層へ向けて歩き始めた。情報だと4階層と5階層はゴブリンとキラードッグの混成、6階層と7階層も出現するモンスターは変わらないが、ゴブリンの武器が棍棒から鉄の剣に変化しているらしい。今まで以上に攻撃を受けないよう立ち回らなくてはいけないようだ。


「でもレアドロップの鉄の剣って5000円で買い取ってくれるらしいからもしドロップしたら嬉しいかも」


捕らぬ狸の・・・って訳ではないが、手に入るかもしれないレアドロップに心を躍らせながら俺は4階層へと足を踏み入れた。


























「なんて思ってた時期が俺にもありました」


はい、今俺は7階層のボス部屋の前にいます。

鉄の剣?何それ美味しいの?


「まさかあれだけゴブリンを倒して1本もドロップしないとは・・・。流石レアドロップというやつか」


最下層である7階層までは全く苦戦せずに辿り着くことができた。6・7階層での鬼門だったモンスターとの遭遇率も増えはしたが、HK416とグロック17の前に蹴散らされていた。飛び道具って本当に強いなと思いました。(小並感)


問題なのは鉄の剣装備のゴブリンを30体程倒したのにレアドロップの鉄の剣を1本も落とさなかったことだ。いくらレアドロップとはいえ1本もドロップしないとはどういうことだろうか。


「まぁドロップは運とも言うからなぁ」


そんなこんなで今に至るのである。

現在時刻は15時。本当ならば7階層のボス部屋までのルートを確認して本日の探索は終了の予定だったが、士別ダンジョンの階層の広さがそこまで広くないため、予定よりかなり早く最深部に辿り着いてしまったのだ。


「このままゴブリンを狩って鉄の剣集めをしてもいいけど、次に行く予定のダンジョンにもゴブリンは出るからなぁ。・・・このままボスを倒しちゃうかな!」


持ってきた弾にも余裕があるし、何より帰りのバスまでまだ2時間以上余裕がある。初心者ダンジョンということもあってボスの難易度も低いとネットには書いてあった。ならば今日士別ダンジョンを踏破してしまって、明日は装備の整備と休養日にしてもいいかもしれない。


「ボスの魔石はそこそこ高値で売れるらしいし、明日は父さんと母さんにご飯でも御馳走する日にするかな」


そう決めた俺は装備の確認をおこない、ボス部屋への扉を開く。石造りの巨大な扉だったのでかなり力を使うかと思ったが、案外すんなり開いたので少し拍子抜けしてしまった。


「初のボス戦だ。・・・緊張するなぁ」


俺は緊張で普段よりも脈打つ心臓を感じながら、ゆっくりとボス部屋に足を踏み入れるのだった。









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【ボス】

各ダンジョンの最下層には『ボス部屋』と呼ばれるエリアが存在し、通常出現するモンスターよりも強い『ボスモンスター』が現れる。当然通常モンスターよりも強力だが、その分魔石やレアドロップは高値で取引される。

基本的にボスモンスターを討伐することでそのダンジョンを踏破したとされる。

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