大文字伝子が行く176

クライングフリーマン

大文字伝子は年中無休(後編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

 中津健二・・・中津興信所所長。

 中津(西園寺)公子・・・中津興信所所員の1人だが、中津健二と結婚している。

 中津敬一警部・・・中津健二の兄。捜査一課、捜査二課、公安課、EITOとの協同捜査等を経て、副総監付きの特命刑事となる。警視庁テロ対策室所属。村越警視正の部下。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。

 山城(南原)蘭・・・山城の妻。南原の妹。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田(小田)慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。

 小田祐二・・・やすらぎほのかホテル社長。伊豆のホテルが本店。箱根にもホテルがある。小田慶子の叔父。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。

 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本の妻。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻文子と塾を経営している。

 南原(大田原)文子・・・南原の妻。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。

 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム管理部長。

 本郷隼人二尉・・・海自からEITO出向のシステムエンジニア。本郷弥生2等陸佐の弟。

 中島空自二佐・・・MAITO班長。

 島袋英一警部・・・高速エリア署交通課課長。

 西部警部補・・・高速エリア署刑事。

 鈴木校長・・・高峰舞子の通う小学校の校長。ある事件以来、伝子とEITOの協力者になる。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後5時。

 なぎさは、バイクに伝子を乗せてホテルを出発した。志願した江南と工藤のバイクが距離を置いて、護送する形だ。小田社長は喜んで2台のバイクを用意してくれた。

 高速に入った直後に、バイクが追走してきた。

 念の為、高遠は別行動で物部達の自動車で帰宅することにして良かった、と伝子は思った。

 追走してきたバイクは、引火し、ドライバーは火だるまになったまま、走った。

 なぎさは、すぐに減速、カーブに差し掛かる時に、バイクを反転した。

 伝子を振り落とすことなく、リターンした。

 追走バイクは炎上している。

「MAITOは間に合わないな。あ。来たか。」

 前方からMAITOのオスプレイが、到着した江南達のバイクの後方から、パトカーがやって来た。MAITOから消火弾が落ちて、すぐに鎮火した。

 MAITOのオスプレイから中島空佐が、パトカーから、島袋警部と西部警部補が近づいて来た。

「初めまして、EITO隊長の大文字伝子です。」「また、遭いましたね、皆さん。副隊長の橘です。」釣られて、3人も自己紹介をした。

 伝子となぎさが挨拶すると、「お美しい。」と西部が言い、「いいんですか、素顔になっても?」と中島が言った。

「お身内ですから。他の車が来たら、ヘルメット被ります。どうも時限装置で発火したようなのですが・・・。」と、伝子が中島に言うと、中島の部下が「仰る通り、時限装置らしき破片があります。」

 間もなく、救急車がやって来た。伝子達は、ヘルメットを被った。

「後処理はお任せ下さい。道中、お気をつけて。」3人は、それぞれ敬礼をした。

 午後6時半。伝子のマンション。

 伝子のスマホが鳴動した。伝子はスピーカーをオンにした。

「おねえさま大変なことが分かりました。火だるま男は、先日トラックを横転させた男でした。半グレの仲間だと思っていたら社員にはいませんでした。おねえさま達を監禁した後、行方知れずでしたが・・・ちょっと待って下さい。」と、あつこは、電話を保留にした。

「おねえさま。Zedで確認して下さい。サンドシンドロームが声明を出したようです。」

 高遠は、スマホでZedを起動し、サンドシンドロームの動画を再生した。

 頼みもしないのに、余計なことした者がいる。こちらで、処分したから、安心しろ。次の計画は、明日中に発表してやる。楽しみにしていろ。

 》

「楽しみには、ならないな。やはり、別口だったというのは確かに助かるニュースだけど。・・・。」

「今夜は早寝出来ないな。」「うん。午前0時1分でも明日だからな。」

 翌日。午前0時1分。

 高遠がZedを見ていると、しっかり、サンドシンドロームのアップロードがあったようだ。

 小学校の生徒、小学校の父兄、小学校の教師、小学校の校長が酷い目に遭うとしたら、どうするね?隊長さん。

 》

「今度は、『大文字伝子』って言わなかったね。まあ、死んだことになってるけど。」

 EITO用のPCが起動した。

「起きていたのか、大文字君。」と夏目警視正が驚いた。

「まだ、宵の口ですよ。どうやら、他の『幹』のようにヒントを与えていたぶる方針に変えたようですね。キーワードは、『どこの』より、『何故、対象を4種類羅列した』か、ですね。」

「私も、そう思う。明日、会議しよう。午前9時だ。お休み。」

 画面の警視正の姿は消え、もう映っていない。だが、伝子はまだ見ていた。

「お風呂、今沸かしてる。」「気の利く婿だ。来い!可愛がってやる。」

 伝子は高遠を引きずり、無理矢理、寝室に連れて行った。

 やっぱり、普通の家と違うんだろうな、と高遠はおぼろげに思った。

 午前9時。EITO本部。会議室。

「昨夜、学とブレーンストーミングしました。小学校を連呼しているのは、4つの対象が同じ名前だろうという結論に達しました。学校のことなら、と南原に電話しましたが、鈴木校長のルートで調べたらどうか?ということになりました。そこで、今朝、出勤前の鈴木校長に電話して、校長の名字と小学校の名前が一致する小学校を調べて貰うよう、依頼しました。」

 その時、伝子のスマホが鳴動した。伝子はスピーカーをオンにした。

「ありましたよ、大文字さん。1件目が『たかぎ』、2件目が『しばた』、3件目が『なりた』、4件目が『やまなか』。東京都では以上です。他府県なら、もっとありそうですが、東京都だけでいい、ということで。平仮名で判断して欲しい、ということなので、1件目は漢字では違う文字だけど、入れました。大文字さん。ひょっとしたら、誘拐ですかね?」「可能性は高いと思います。その場合は、救出が遅れれば、命が危険です。」

「ああ、心配だなあ。結果、教えて下さいね。」電話は切れた。

「資料は、学のPCアドレスに送るようにお願いしてあります。届いていれば、転送しています。」と、伝子が言うと、「よし、警察から小学校に協力依頼して貰おう。久保田管理官。」

「了解しました。河野事務官。そのデータを、こちらにも転送して下さい。」久保田管理官の画面は消えた。

「おっと、理事官。こちらにも転送願いますよ。聞き込みは任せて下さい。」中津健二の画面も消えた。

「教師と校長は一致するのかしら?校長先生も教師ですよね。」と静音が言った。

「父兄と生徒も同じ家なのかしら?」と馬越が言った。

 午後1時。会議室。

「高来小学校の高木校長、この小学校には、高木校長の娘、高木鈴子が教師として勤務している。そして、小学2年生の高城美佐がいる。ところが、美佐ちゃんには、家族がいない。事故で亡くなったからだ。それで、里子になった。里親の名字は小鳥遊だ。小鳥が遊ぶ方だ。高い梨の木じゃない。ここで行き詰まってしまった。そこで、中津君のアイディアで、校長に、子供の名字が『たかぎ』でない、養父母の名字が『たかぎ』のケースを探して貰った。1つだけ当てはまるケースがあった。生徒の名字は山口だが、養父母の名字が『たかぎ』だ。こちらは、高い樹木の方の『たかぎ』だ。」と理事官が説明した。

「馬越のカンが当たったな。誰でも親子一緒に考えるからな。4つの名前が揃ったところで、皆が集合する場合と言えば、運動会だ。明日は、運動会の予行演習だ。」と伝子が言うと、浜田が「隊長、いつですか?予行演習と言えば、入場行進とかですよね。」と伝子に尋ねた。

「いや、その前に準備だ。今すぐ行こう。『酷い目』が気にかかる。みんな、行こう。中津さん達に、マルタイ、いや、高木校長と高木先生から目を離さないように言って下さい。」最後は理事官に向けて言った。

 午後3時。高来小学校。

 入り口近くに、自動車が2台止まっていた。オスプレイからホバーバイクが降り立ち、その自動車の近くに停まった。ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』をEITOが採用、改造した、運搬・戦闘用バイクである。

 EITOボーイズの青山が降りて、中津に尋ねた。「中の様子は?」

「30分位前に、職員室が占拠されました。立てこもりですね。指示通り、一旦引いたのは正解でした。誘拐の可能性は既に校長に言ってあるので、冷静に対処したようです。」と応えた中津に、警察を呼ぶことも出来ないでしょうね。」と青山は言った。

「SATには連絡してありますが、飽くまでも隠し球です。」「分かりました。潜入ですね。」と公子は青山に言い、勝手に校庭から職員室に向かった。

「高崎。お前はお父さん役だ。」と、中津健二は言い、青山にウインクした。

 公子と高崎が渡り廊下を進んで行くと、校舎から男が2人出てきた。

「どこへ、行く?」「職員室。」「許可はとってあるのか?」「おまいう。誘拐犯のくせに。」「何?」気色ばんだ男達の背後から、稲森と大町が送襟絞めで落した。

 更に公子と高崎が進むと、やはり校舎から男が2人出てきた。

 今度は結城と財前が出てきて、背負い投げで男達を倒した。

 公子と高崎が職員室に入ると、隅に教職員達が縛られていた。公子はすかさずDDバッジを押した。

 職員達を見張っていた男達が全員振り向いた。「校長先生。明日の予行演習では、寸劇も行うのでしょうか?」公子は言ってすぐ、高崎と逃げた。

 追手の数人に、陰から出た、田坂、安藤、浜田が矢を放った。怯んだ彼らに、あかり、下條、小坂のシュータが跳んだ。シュータとは、うろこ形の手裏剣で先端にしびれ薬が塗ってある。足止めのシューティングは、あかりが一番上手い。

 一方、職員室には、催涙弾が投げ込まれ、金森とあつこがブーメランで敵を倒した。

 猛毒ガスを身に着けた、馬場と井関が職員達を誘導した。

「おねえさま、職員室には、親子がいないわ」。と、あつこはインカムに叫んだ。

「了解。職員と生徒の誘導は、あかり達に任せて、井関と校庭に出てくれ。」伝子の指示に、あつこは頭にたたき込んだ、この学校の見取図を思い浮かべ、裏口に回ってから校庭に出た。

 校庭では、ケージに入れられた数組の親子が見えた。そして、そこに続々と武装した集団がトラックに乗って集結をしていた。

 目を凝らして見ると、ケージの中の親子には、ダイナマイトのジャケットが巻かれている。「成程ね。井関君。分かってるわね。」「勿論です、警視。」

 トラックから降りた男達を、リーダーらしき男が見渡して言った。

「よし、揃ったな。」とリーダーが言うと、「点呼は要らないぞ。」と言う声が聞こえた。

 リーダーが、声の方を見ると、装甲車が2台、こちらに向かってくる。装甲車の上には、エマージェンシーガールズの姿の伝子と、なぎさが乗っている。

「馬鹿な!!」集団の男達は、装甲車目がけて拳銃や機関銃を乱射した。

 伝子となぎさが、素早く飛び降りると、静かに併走してきた、高木と青山が運転するホバーバイクに乗り移った。

 SATの装甲車は、容赦なく集団に突っ込んでは蹴散らして行く。

 どこからか現れたエマージェンシーガールズは、ペッパーガンと水流ガンで敵に射出した。ペッパーガンとは、胡椒等を主成分にした弾を撃つ銃で、水流ガンとは、射出するとグミ状に変化しる水を撃つ銃である。

 敵の戦闘能力の殆どを奪ったエマージェンシーガールズは、バトルスティックで男達の電磁警棒やバットに向かって行った。バトルスティックは3段階に変化する棒で、この先端にも痺れ薬が塗ってある。

 午後4時半。

 闘いを終えた伝子は、長波ホイッスルを吹いた。

 その時、集団の男達の乗って来たトラックが爆発炎上した。

 伝子は悟った。長波ホイッスルを利用されたことを。敵は既に長波ホイッスルの周波数を解析している。それで、メッセージを送る際にその周波数の音声を仕込んだりする。

 長波ホイッスルの長波で、トラックの起爆装置を作動させるのは造作もないことだ。

 トラックの爆発で、近くにいた男達は吹き飛んだ。サンドシンドロームは失敗には容赦がない。やはり、あのスタントマンは殺されたのだ。

 救急車のサイレンが聞こえる。MAITOのオスプレイがやって来て、爆発したトラックを鎮火した。なぎさが呼んだのだ。

 エマージェンシーガールズ、EITOボーイズが伝子の元にやって来た。

 後ろから、あつこが声をかけた。「おねえさま。誘拐されていた人達を、一足先に病院に運ぶわ。」「うん、そうしてくれ。」伝子があつこに応えると、あつこは井関、飯星と共にオスプレイに向かった。

「やられたな。」そう言ったのは、SATの守谷隊長だった。

 運動場の端の方では、逮捕された集団が警官隊に連行されていく。

 大町達が戻って来た。「隊長。避難誘導した生徒や職員達、帰宅させてよろしいでしょうか?」

「うん、そうしてくれ。」と、伝子が応えると、ホバーバイクの筒井がやって来た。

 沢山の機器を箱に入れてある。「戦闘を記録する積もりだったようだな。すぐに通信不能にした。戦闘中も探したが、もう無かった。」

「捕まった人達に死傷者がいなかったのは、幸いですね。」と、愛宕が言った。

「筒井。長波ホイッスルは改造が必要になった。」伝子は手短に状況を説明した。

「敵は、どの程度、我々の戦闘力を把握しているか分からない。困ったもんだ。お前の正体も知っているから、もう替え玉で誤魔化せないし。」

 2人の会話に公子が割り込んだ。

「それでも闘う。かっこいいわ。主人捨てて、大文字さんと不倫をしようかな?」

「中津さんが泣くな。」と伝子が言うと、「ボスの泣き顔、想像しちゃいました。」と、中津興信所の泊が言い、あきが笑った。

 中津警部と中津健二がやって来た。「お前、後悔してるだろ?」「流石は、兄貴だ。」

 MAITOの中島二佐がやって来て、伝子に、あるものを手渡した。

「トラックの下に受信装置があったようです。炎上したトラック以外のものは不発だったようです。どこからかリモートしたんでしょうね。」

 伝子は、その言葉には反応せず、「大文字、そろそろ、引き上げるか。」と、筒井が誤魔化した。

「そうだな。なぎさ。」

「了解しました。」なぎさは、にっこり笑って言った。

「未亡人か。感じさせないな。」と思わず言った、中島に「MAITOが火傷しちゃ洒落にならんでしょう。」と橋爪警部補が呟いた。

 愛宕と筒井は必死に笑いを堪えた。

 ―完―


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