あるペンキ屋さんの社長が自社の倉庫を綺麗にしようと思ったところから話しは始まります。
何故なら……どこに何があるかもわからず、そのせいで毎年決算時の棚卸しで約200万円もの在庫を廃棄しているから。
そして捨てるのにこれまた費用がかかるから。
これっておかしくね?
という訳で倉庫の整理が始まります。
この話、私は凄く感動しました。
大体、この手の話しは大企業とか外資系コンサルとかが出てきますが、そういう方々は一切出てきません。
倉庫整理という改善が自社の経営改革になり、それが新しい事業にも繋がっていくなんて、もう素晴らしいの一言に尽きます。
全10話で難しい専門用語が出てくることもないので、あっという間に読めると思います。
ビジネスものとして意義あるものだと思います。
そして、
日経産業新聞はこういうところにこそ取材に行くべき。
街のペンキ屋さんの成功例なのだから。
塗装業(ペンキ屋さん)を営む社長“フク”は、倉庫整理をしようとした中で認識した。仕事が交錯する中で使い切れないペンキが増える。それらが消費期限を迎えれば産業廃棄物として廃棄しなければならない。その額はなんと年間200万円! かくてフクは一念発起、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)から始まるDX(デジタル革命)へと踏み出した。
倉庫を綺麗にしたい。本作はそこから始まった経営革新の道程を描いたものですが、その過程が簡潔でありながら起伏に富んでいて本当におもしろいのですよ。経営者と現場で働く方々との間に生じる軋轢しかり、実施する中で思いつく新しい試みしかり、それによって増大するフクさんの負荷しかり。すべてが次の挑戦へ繋がって、やがてひとつの成功を形作っていく。このカタルシスはまさに王道!
物語も現実も動かしていくのは人です。自ら動いて物事を動かし、成功を掴んだ人を描くこのお話、あなたの心にきっかけをくれること間違いありませんよ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)