I don't know (知るか)

「事の始まりは....」


私と助手のLくんは依頼主であるラインゲール市長と依頼内容について話し合っていた。


事の始まりは、2010年 6月3日 夕方頃


ロンドンの街を友人と歩いていた女児一名が何者かにさらわれたという。


そこから3日、4日、5日後と立て続けに女児の誘拐が発生した。


現時点でわかっている人質の数はおよそ10名ほど。


その中には有名な資本家、企業家、議員や政治家などの親族が含まれていると。


私に依頼のおはこが回ってきたのもそのことだろう。


しかし...誘拐事件か.


稀に例を見る悪質なものでない限りこの手の事件解明には手慣れているものだ。


そう....


「それで、犯人の目星はわかっているのだろう?」


1分前の私はそんなことを知る由もなく犯人の特徴について聞いていた。


「それが.....」

「「?」」


ラインゲールの顔から血の気が引いていくのが感じられる。


この時点で悟るべきだったのだろうが、そんなもの私が無いだろう。



そして現在へと戻る。



「はい?...」


私は二回ほど聞き直していた。


「だから、犯人は捕まっているんだ.」

「女児だけがいまだ行方知れずで。」


はい...予想した通り(大嘘)


この手の誘拐事件は悪質なものが多すぎるんですよ。


犯人が見つかっているのに被害者だけ未だ見つかっていないと。


詰んだぁ〜。


完全に詰みゲーですね。


「Lくん、客人を玄関まで見送っておいで」


(L視点)


先生は僕に冷静な顔で指示してきた。


あ、これは先生がお手上げなサインだろう。


「わかりました、ラインゲール殿お見送りします」


(視点回帰)


ラインゲールもさぞかし運がない。


この手の誘拐事件の共通点。


それは、人質がすでに亡くなっている場合が高いことである。


(人質が別の事件に巻き込まれる危険性がある)


さて、ああは言ったもののラインゲールは心底心配しているのが本心だろう。


「私の孫娘もいるんだ...」

「頼む....報酬金はその分弾む.」


ラインゲールは静かに涙を流していた。


私とLくんは顔を見合わせていた。


「先生....このまま帰らせていいんですか?」


うぅ...そう言われてしまうと、本当に返して良いものか。


「あぁ、わかりましたよ.依頼を引き受けさせてもらいます」


そう答えると、ラインゲールはすまないと答え事務所をあとにした。


「先生、今回の報酬金いくらだったんですか?」


ラインゲールから提示された報酬金は100万€(ユーロ)


事務所を改装できるどころか新たに建てれる程の額だ。


「ひゃ、百万ユーロ!?」


「とんでもない額じゃないですか!」


あぁ、桁だけ見ればな..


こんなに報酬が大きいのは危険が高く伴うからだろう。


安い報酬金であればうまく言いくるめることはできたが....


「先生がお金に目がくらむのも納得できます」


「な..何を言うLくん....私はお金にくらんでなど....」


しかし、実際のところ前金だけでも10万はあった。


流石、市長をしているということはある。


それだけの財力があれば私に頼らずとも警官隊に捜索させれば良いものを....


何かしら警官隊に頼れない事情があるのか.....


「I don't know 」(知るか)


「あいにく、他人の事情にグサグサ入り込むほど情は腐ってない」


さて、事件の詳細がもう少し詳しく知りたい。


明日にでも事件関係者に聞き込みに行くとするか..


「Lくん、今日はもう遅い,聞き込みは明日からにして今日はもう寝るとしよう」


私は寝間着ねまきに着替え、自室へと戻った。


「しかし....ラインゲールのあの顔....」


(私の孫娘もいるんだ....頼む...)


「考えるだけ脳の無駄か....また明日にすればいい..」


「では、先生,僕ももう寝ますので明日は早めに,起きてくださいね?」


あぁ、おやすみ......


そうして私は眠りについたのだった。




<ラインゲールの帰った直後>


L:「先生、ラインゲール殿の意向を危うく無駄にするところでしたよ?」


(窓の外を覗く)


先生:「別に...私はただ厄介な事件は面倒だと思っただけで..」


(紅茶をすすりながら顔を横に向ける。)


L:「先生....本気でそう思ってるわけじゃありませんよね?」


(ジトーと顔を先生の方へ向ける)


先生:「あぁ、もちろん,私はそこまで情に腐ってないんでね」


(笑っているが、少し顔が引きつっている)


L:「はぁ....それで、ラインゲール殿から受け取っていたものは....」


(茶封筒の中身を少し覗く)


先生:「Lくんや、時には知らなくてもいいことがあるものだよ」


(新しい紅茶でも買おうかな....)


L:「もしかして、賄賂...ですか?」


(口に含んでいた紅茶を思わず吹き出す)


先生:「ごほっ...ごほっ、何を言い出すんだ君h...」


(末恐ろしい....勘違いにも程がある)


先生:「前金だよ、頭金」


先生:「危険が伴う事件にはこのくらい普通さ」


L:「もしかして、先生が不必要なものをたくさん買える理由って....」


先生:「では、私は失礼しようかな....」


(ゆっくりと後退りする)


L:「そのお金、僕が管理.....しま」


(Lが振り返るがそこに先生の姿はもうない)


L:「はぁ...次回 I will can do it (どうにかなるさ)」


先生:「この昆虫の出汁紅茶....なかなかだな...」


(先生は自室で紅茶を飲んでいたのだった)


L:「先生!!!!!!!」


先生:「分かったから!紅茶を取り上げるのはやめてくれ!」


(先生との乱闘紅茶の取り合いは夕方まで続いたのだっった)
















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私立探偵「園宮 美香子」の鎮魂曲 黒川宮音 @kurokawa_miyane

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