私立探偵「園宮 美香子」の鎮魂曲

黒川宮音

これは的確なのだろうか?

プロローグ 「I have BUSY」(めんどくさい)

静寂せいじゃく暗闇くらやみにランプの明かりが灯った。


「皆さん、はじめまして。」


10代前半の若い男性....いや少年といったほうが適切だろう。


「私はこのミステリーの案内役。

ひとまずL《エル》とでも名乗っておきましょうか。」


Lと名乗った少年はミステリーの案内役だと言った。


「皆さんは「絶体絶命」に瀕したことがあるでしょうか。」

「ですが、恐怖など ほんの些細ささいなことに過ぎません。」


そして、語り始めた。


「本日お話するのはとある事件」


女児連続誘拐事件じょじれんぞくゆうかいじけんについてです」


場面はロンドンの下街へと移り変わった。


二人の男女が足早あしばやに街路を歩いている。


一人は帽子にハーフコートを着た少年。


もう一人は片手に本を携え、カクテル帽を被った若い女性。 年齢はわからない。


「先生、早すぎます。」


ハーフコートを着ている少年はそう口を開いた。


「Lくん、早いの定理とは一体なんだね。」


先生と呼ばれた若い女性はさっきの少年「L」に疑問を投げかけた。


「はぁ...先生、そういうの屁理屈へりくつっていうんですよ.」

「へ.....屁理屈へりくつ.....だと?」


さっきの質問にきちんと答えてもらえなかった悲しみによって


すでに彼女の心は折れかかっていたのだった。


「そんなことより、本当に早すぎませんか?」

「依頼主との待ち合わせって13:00《一時》じゃありませんでしたっけ?」


冗談はさておき。と助手のLが質問した。


一方彼女はというと。


「h..へ..h屁理屈だと...この私が..」


心が折れかかる3秒前のような...この世の終わりのような表情をしていた。


「そうだった。Lくん、今の問いだが依頼主は時間にうるさくてね」

「なにせこの街のお役人をまとめる市長....ラインゲールからの依頼なんでね」


そう言いながら一つの手紙を見せる。


「これは昨晩、私が留守の間に届いていた。」

「君が留守番をしていたはずだったんだが」


そう言いながらLの方を見る。


「いやぁ...あのときは僕、忙しかったのかなぁ...アハハ..」


彼女の視線がLの真横まよこから向かってくる。


生ゴミを見るような視線を...


「はぁぁ、居留守も悪くないがほんとうに

重要なことがあったときどうするつもりだ?」


(このご時世、盗人が入って重要な書類が取られたりでもしたら


私の首一つで収まるかどうか....)


「ぶっそうなことつぶやかないでください..」


Lは焦りながら答えた。


市長..ラインゲールとの待ち合わせまであと30分ほど。


彼女は助手のLに一つ、忠告をした。


「いいかい、Lくんこれから会う依頼主は市長である前に私欲しよくにまみれた

クズ野郎だということを覚えておいてほしい。」


冷静な顔で依頼主であるラインゲールの悪口をさらっと話す彼女はやはり


只者ではなかった。


「誰が、私欲にまみれたクズ野郎だって?」

「「え?」」


声がする方を向くといかにもクズや...悪そうな中年男が立っていた。


「先生、あのおっさん誰ですか?」

「あれか?あれはな....」


彼女の顔が瞬く間に曇った。


「いい度胸じゃないか?市長の...さらにはあろうことか眼の前で」

「貴様が探偵でなければ真っ先に牢屋送りにするところだったぞ」


笑いながらそう言い放った、ラインゲールの顔は正しく悪人そのものだった。


「アイツ、根はいいやつなんだが....流石は権力者と言ったところだろう」


彼女は少し残念そうに答えた。


「早速で悪いんだが.」

「すこし、場所を変えましょう。ここだと聞かれてはまずいこともあるでしょう」


彼女はそう言い事務所で話を聞くことにした。


「粗茶です。どうぞ.」


助手のLがラインゲールの前に粗茶...ハーブティーを差し出した。


「あぁ、すまない。」


カップを手に取り一口。


「うっ..ごほっ!ごっほっh」


一口飲みかけたままハーブティーを吐き出してしまった。


「なっ..何だこれは!私を殺そうとでも言うのか?」


助手のLは慌てふためきさっき自分が入れた紅茶のボトルを確認する。


「先生...これって」


そう言いながら紅茶のボトルを見せた。


<激辛唐辛子配合! 飲めばたちまち疲労回復!>


あっ...という言葉が溢れたのを誰もが見逃さなかった。


「おっほん。ではラインゲール殿、依頼内容を教えていただけますか?」

「あぁ...ってなるかーい!たった今貴様は客人である私を危うく殺しかけたのだぞ!」


あぁ、それですか..という顔をしている。


「いやぁ、運悪く昨日買った激辛ハーブティーを客人に出してしまうなんて」

「これは事故ですねぇ〜」


ニヤケ顔でそう言った。


流石に悪ふざけがすぎると思ったのか。


「先生、ラインゲール殿。依頼内容について話し合わなくてどうするんですか?」

「このまま話す気がないなら、僕は夕飯の買い物にでかけたいんですが」


仕切り直して。


「事の始まりは.....」


ラインゲールはゆっくりと口を開き、依頼内容について話し始めた。







                      次回:「I don't know」(知るか)







<次回予告>


先生:いやぁ〜。あの唐辛子紅茶は格別だったなぁ


L:お陰で話し始めるまで30分かかりましたから


先生:唐辛子の辛味と紅茶の深みが合わさって....


L:って!先生いつの間に!


先生:いいじゃないか...減るもんじゃないんだし


L:先生、威厳いげんというものを守ろうとは思わないんですか?


L:こうもっと自分を評判を上げたいとか.


先生:ないな..ところでLくん、昨日私が留守にしている間なにか変わったことは?


L:あー特にはなかったですよ。


先生:おかしいな....


先生:帰ったら部屋の明かりが全てブレーカーごと落とされていたんだ。


先生:なにか知らないか?


L:いやぁ〜、知らないですね。ちょうど買い物にでかけてたので


先生:買い物?私はたしか君に留守番を頼むとお願いしたわけだが。


L:先生?ちょっと無理やり激辛紅茶を飲ませようとするのはやめてください!


L:ちょっと!はっひゅ.ゴクン(飲み込む)


先生:どうだ?辛さと紅茶の深みを感じるだろう?


L:せ...ん...せい...こreれは...


先生:Lくん?ちょっとなんで気を失っているんだ?


先生:ちょっと!しっかり!・・・・・!


L:次回、「I don't know 」        













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