女子高生が先生の頭を蹴る話
ふじこ
セックスなんてただの暴力だ。
「こどもを作らないならセックスする意味ってなんですか」
瑞香の低くてよく通るまっすぐな声が、数学の授業で質問をするときと同じように、先生に向けられた。先生は、今年赴任したばかりだという若い先生は、「えっ」と兎が飛び跳ねるような声を出して、視線を宙に泳がせている。うろたえて授業もままならなくなっている先生の様子を見ていい気味だと思う。瑞香は先生から目を逸らさない。
性別というものが意味をなさなくなって久しい。私たちの誰も腹の中の子宮で育まれてはいない。私たちの誰も産道を通って産まれてきてはいない。繁殖は採取された卵子と卵子から遺伝子操作された精子が顕微鏡の下で出会うことが担っていて、私たちはその様を小学生頃には工場見学する。自力での繁殖を手放したのに生殖機能は体に残っていて、月経もあれば排卵もする。でも私たちが性交を通じて妊娠することはあり得ない。
だから瑞香が問うのはセックスする意味なのだろう。理由ではなくて。理由なら性欲処理でも暇つぶしでも暇つぶしでも、ただ触れ合っていたいという欲求の満たし方でも、なんでもある。暴力を振るいたいという理由もあり得るだろうし、暴力的じゃないセックスなんてない。理由じゃなくて、動機じゃなくて、意味は。意味はなんなのか。意味付けすることが泥沼から抜け出す第一歩だと私たちは知っている。
先生は何ひとつ答えることなく教室を去った。そして私の下に居る。私の股の下に先生の口があって、膣口やクリトリスを柔くて湿って温かい舌がれろれろ舐め回している。気持ち悪い。快感が気持ち悪い。これを良かれと思ってやっている先生が気持ち悪いし腹が立つし死んでしまえばいいと思う。先生の小ぶりな胸に手をついて体を起こし、先生の顔から股を離す。立ち上がって先生の頭を蹴った。サッカーボールを蹴る感じだ。どうしてあなたの方が傷ついたような顔で私を見るのか。
「ねえ先生、セックスする意味って分かりましたか」
どうせあなたは答えられない。誰にも答えられない。瑞香だって知っている。知っていても先生に聞いたのは困らせて恥をかかせたかったからだ。暴力を振るわれたのだから別な種類な暴力を振るい返したっていいじゃないか。どうしてそんな手段まで奪うのか。繁殖にも何にもならないセックスには暴力を正当化するような意味があるのか。
瑞香を好きだった私が彼女に手を伸ばせないのは先生が私とセックスをしたからで瑞香は私がそう思っていることを知っていて先生だって分かって私にセッくすを強いた。暴力を振るってきた相手を好きになるはずなんてないというささやかな抵抗。瑞香も私をまだ好きでいてくれているというかすかな希望。もう一回先生の頭を蹴る。股から太ももにを体液が伝っていくのがわかる。死にたい。死んでしまえ。死にたい。
やっぱりセックスなんてただの暴力だ。
女子高生が先生の頭を蹴る話 ふじこ @fjikijf
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