第3話きのこ狩りペア

 秋の収穫祭の活動は、給食を食べ終えた後、5時限目と6時限目を使っておこなわれる。授業が2コマも潰れるため、喜ぶ生徒が大半なのだが、大吾はそうではなかった。わざわざ20分かけてきのこ園へと赴き、なにかしらの作業をしなければならないからだ。大吾にとっては教室でぼーっとしているほうが100倍マシだった。

「よかった。ちゃんと来てくれた!」

 亜希が大吾に声をかけてきた。大吾は思わず目を背けると小声で言った。

「昨日、約束したから......」

「うん?なんて?よく聞こえない!」

「なんでもないよ!」

「なんで顔が真っ赤になってるの?」

「みなさーん!今日は来てくれてありがとうございます」

大吾が返答に窮していると、園長の春日飛男が喋りはじめた。

助かった......大吾は安堵のため息をついた。

「まず最初はみなさんにきのこと触れ合ってもらおうと思います。裏山に行ってきのこ狩りです!イェイ!イェイ!」

園長はやけにハイテンションで生徒達に喋りかける。

 「それでは、今からペアを作ってもらいます!ペアになる人がいなくても安心して!私がペアになりますから!やったー!!」

大吾はハイテンションな園長を横目に絶望した。クラスでろくに喋らない自分に友達などいない。つまり、ペアになる人間はいないのだ。

 やっぱり帰ろう......大吾がその場から離れようとすると.....ガッ!と誰かに腕を掴まれた。

 それは長瀬亜希だった。

「じゃあ私、長野君とペアを組みます!」

「えー!」

 周りにいた生徒達は驚愕の声を上げた。

「......」

わけがわからなくなった大吾は考えるのを辞めた。

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真面目で清楚な委員長は猫をかぶるのをやめた ウルトラサイダー @525

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