第2話委員長との約束

 放課後になり、誰もいなくなった教室で大吾は1人、ポツンと座っていた。

 ちなみに、話を聞いていなかった罰として、大吾は一番人気のないきのこグループに入れられた。

 別にサボるからいいか。大吾は自分にそう言い聞かせると、帰り支度を始めた。

「長野君、ちょっといいかな?」

「え?」

大吾は驚いた。この教室には自分以外、誰もいないと思っていたからだ。

 声をかけてきた相手は、長瀬亜希だった。 「長瀬さん、まだいたんだ」

「バスケットシューズを忘れちゃって。取りにきたの」

「ああ、そう。じゃ、部活頑張って」

あまりにそっけない会話。話すのがめんどくさくなった大吾は話を切り上げると、席を立った。

「あっ!ちょっと待って!」

亜希は慌てて大吾の前に立ちはだかった。

「な......なに?」

「長野君、明日のきのこ狩りサボろうとしてない?」

大吾はギクっとした。その様子を見た亜希はニコリと笑った。

「やっぱりね」

「な......なんで分かったんだよ!」

「分かるわよ。あなた、去年の秋の収穫祭さぼってるでしょ?今年もサボるんじゃないかと思った」

 大吾は反論のしようがなかった。

「別にいいだろ?長瀬さんには関係ないんだから」

「よくないわよ、私がきのこグループの班長なんだから。私が班長である以上、サボりは絶対に許しません!それに、参加したら案外楽しいかもよ?」

  亜希は上目遣いで大吾を見た。

 大吾はそんな亜希を見て、一瞬ドキッとした。

「ま......まあ考えとくよ」

「絶対来てよね。約束よ」

 亜希はニコリと笑うとバスケットシューズ片手に教室を出て行った。

「約束......めんどくさいなぁ」

 大吾は誰もいなくなった教室で1人ため息をついた。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る