Episode 3

頭の中の整理がつかない。僕のことが好き?いわゆる、”一目惚れ”ってこと?

落ち着くためにゆっくり座った。

「んね、名前なんていうと?」

「ぇあ、えっと、新井…玲音れおん…です…」

「玲音!!これからよろしくな!絶対、玲音の事落としちゃるから。」

不敵な笑みを浮かべてそう言った。そんなの、僕の鼓動を早くさせるには十分過ぎた。遠くで陰口を叩く女子たちの声が聞こえるけど、そんなの気にしていられない。

熱くなった頬、いつもよりはるかに早い鼓動を気にしていると、予鈴が鳴った。

「きりーつ、礼。」

日直のやる気のなさそうな声で始まった授業。プリントは回さなくちゃいけないし、班活動はあるしで僕の心は収まらずにいた。お願いだから、落ち着かせて…



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転校初日、少し緊張しながら教室に入ったら、目を輝かせる女子たちや、がっかりする男子たちよりも先に、ホームルーム中なのにもかかわらず、ずーっと机に突っ伏してて肩にヘッドホンをかけてる子に目が行った。かわいいとか、かっこいいの感情よりも先に好きが勝った。話しかけよう、絶対。そう思っていたら、

「じゃあ、廊下から4列目の一番うしろ、席用意してあるから。そこ座って。」

よっしゃ。あの子の後ろだ。

「はーい、ありがとうございますー!」

自分の席へと向かって歩いてく。はぁ、やばい、ばり好きやわ。遠くで先生とリーダーっぽい女子が話してるけど、気にしない。席につくと、丸まった愛らしい背中が目に入る。俺は、ニヤけて、鼻歌を歌いながら教科書を机に入れる。もう、俺は恋に落ちている。なんとなく話を聞いているといつの間にかホームルームが終わった。終わった途端、気がつくと俺の席は女子に囲まれていた。

「ねぇねぇ、陽翔くんって九州のどこから引っ越してきたの〜?」

「あ、福岡たい。」

「ねぇ、彼女いる?」

「ぇあ、いない。」

あー…しゃーしいなぁ。早くどっか行ってくれんかなぁ。

「陽翔くんのタイプってどんなの?」

あ、あの子と目があった。あ、座れんのか。

「好きなタイプは…んーそやなぁ、人に迷惑かけん子たい。」

そう言ったら、俺の周りにいた女子たちは去っていった。あの子が、席に座ろうと近づいていくる。

「なぁ、お前、可愛い顔しよるなぁ。」

あ、言ってしもうた…もうよか、言ったる。

「お前のこと、好きになったっちゃん。」

何言ってるかわからんって顔しとる…ばり可愛い…

可愛い顔したままゆっくり座ったその子に尋ねた。

「んね、名前なんていうと?」

「ぇあ、えっと、新井…玲音れおん…です…」

「玲音!!これからよろしくな!絶対、玲音の事落としちゃるから。」

俺は、今できる一番の笑顔でそう答えた。

予鈴が鳴って授業が始まる。玲音からプリントは回ってくるし、班活動はあるしで、最高過ぎる授業だった。どう抑えようとしても、俺の心臓の音はうるさいままだった。

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