Episode 2
外は意外にも少し暖かかった。
梅の花が咲き、桜の木も蕾をつけようとしている。
もうすぐそこで、春が待っているようだ。
でも、そんなこと僕には関係ないなぁ。と、いつものように朝から元気な鳥たちの声を遮るようにヘッドホンをして、スマホでなんとなく好きな曲を聞いて上がりそうにない気分を上げようと試みながら学校へと向かう。
もう、見慣れてしまった景色を眺めながら。
学校に近づいていくに連れて、見知った顔が増え、友達を見つけた人たちが集まり、騒がしくなってくる。朝から騒ぐ人たちを横目に校内へと入る。
下駄箱で靴を履き替えていると、
「今日、2年に転校生来るって!!!」
「え、まじ!?イケメンかな!!!」
「男かどうかはわかんないって笑」
「えー、まぁそうか。」
思わず聞き耳を立ててしまった。転校生が来る。しかも、この学年に。
何も関わらずにいれることを願いたい。ほんとに。
教室に入ってもなお、聞こえる会話の内容は転校生の予想ばかりだった。
なぜ、転校生が来るだけでこんなにも舞い上がるのか。
【キーンコーンカーンコーン】
予鈴が鳴り、担任が教室へと入ってきた。
「はい、おはよう。
えー、知っていると思いますが、転校生が”うちのクラスに”来ます。」
え、うちのクラス!?とみんなざわめく。
「静かに。じゃあ、入ってもらおうか。小林くん。」
ガラガラと音を立てて扉が開く。一人の男子が入ってきた。
「えー…はじめまして!九州から引っ越してきました!小林
頑張って標準語で話そうとしているのか、あたふたしていたように感じた。
「じゃあ、廊下から4列目の一番うしろ、席用意してあるから。そこ座って。」
「はーい、ありがとうございますー!」
え、えぇっ…僕の後ろ…?
「はーいはーいっ!!!ねぇねぇ陽翔くんに質問していいー?」
「だめだ、ホームルーム進めるぞ。」
「せんせ、けちー!!」
漫画とかでありがちな感じだ。今日も騒がしいな。そう思って、すっと伏せてた。僕の後ろに座った転校生は何やら鼻歌を歌っているようだ。
伏せたままホームルームを終え、授業の支度をしようとして立ち上がったその時。
僕の席の周りは転校生と仲良くなりたい女子たちでが押し寄せ、座れなくなってしまった。
「ねぇねぇ、陽翔くんって九州のどこから引っ越してきたの〜?」
「ねぇ、彼女いる?」
「陽翔くんのタイプってどんなの?」
さっき聞けなかった反動なのか転校生に質問攻めをしている。転校生は困りながらなんとなく答えている。少し離れたところで空くのを待っていただけのに、その転校生が何故か僕の方を向いたので、不意にも目があってしまった。
「好きなタイプは…んーそやなぁ、人に迷惑かけん子たい。」
と答えた瞬間、周りにいた女子は支度すると言って離れていった。女子がいなくなったので自席に座ろうとすると、転校生から話しかけられた。
「なぁ、お前、かわいい顔しよるなぁ。」
え?
「お前のこと、好きになったっちゃん。」
はぁっ…?
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