リジー発見
五番通りにあるリジーが捕まっている倉庫に着くと指を差し
「この中に居る」
「ここか・・・・おい、ここを取り囲め誰一人として逃がすな。そして、出来るだけ殺すなよ、後で地獄を見せるんだからな」
「了解」
「お前達はどうするんだ」
「俺達は一緒に正面から入る」
「そうか、邪魔するなよ」
バルドは部下たちに指示を出し店を取り囲み誰も逃げ出さないようにすると、バルドは扉を勢い良く蹴破り俺達も一緒に雪崩れ込んだ。
「なんだ!?」
「衛兵か!」
「違う、何だこいつら!」
「おう、俺の事すら知らねーとは舐めたもんだな」
大きな音を立てて扉が壊れたことによって、酒を飲んでいた奴らは飛び上がり武器を構えるがバルドの正体が分かって無いらしい。ほんと、馬鹿な奴ら。バルドは歩きながら男たちに近付き隙ありと攻撃されるが一歩動くだけで躱し一撃で男を沈めていく。俺の目的はリジーなので男たちは無視し、店の奥へと走った。扉を開け地下に続く階段を下りていくと男が居たので、勢い良く顔面を蹴りナイフで斬ろうとしたらブレストが腹に一撃入れて男を倒してしまった。
「何だお前!っぐわぁ」
「クズ共が」
部屋の奥を見るとそこにはいくつもの鉄の牢屋があり中には何人もの人が入っていた。
「リジー!どこだ!」
「ここにいるよぉぉお」
泣き声と一緒に声がした方向に行くと、金髪の緑色の目をしたガキが居た。良かった、無事だったのか。
「助けに来たぞ、すぐに出してやるからな」
俺は急いで鍵を外そうとしたが固くてナイフが負けてしまう。鍵が何処かにあるはずだと、探そうとするとブレストが剣で簡単に鍵を斬ってしまった。
「!ありがとう」
「あぁ他の人達もすぐに出してやるからな」
そうやって鍵を斬っている内に上から悲鳴が聞こえることが無くなり静かになった。恐らく決着が付いたんだろう。そう思っていると階段を下りてくる姿が見えて警戒したが下りてきたのはバルドだった。
「こんなに居たのか・・・・これは引き締めないと駄目そうだな」
「終わったのか?」
「あぁ終わった。今回の事は俺の監督不足だ。だからお前達は俺が責任もって元の場所に帰してやろう。外に出て良いぞ」
それを聞いた捕まっていた人達は泣きながらお礼を言い倉庫を出て行く。俺もリジーの手を握りながら外に出ることにした。一階では男どもが山のように倒れていて、一人震えて蹲ってる男が一人。恐らくあれが商人だろう、マフィアの縄張りで好き勝手するなんて馬鹿な奴だ。外に出た俺はリジーの涙を拭きながら
「もう大丈夫だ、他の奴らが心配して待ってるからな」
「ゔん、ありがどう」
「怖かったな」
リジーが泣き止むまで慰めやっと泣き止んだころには部下たちに指示していたバルドが店の外に出て来た。
「おいガキ、名前は」
「名前なんて無い」
「ふっそうか。今回の件お前に借りが出来た。何か有ったら俺に言いな、何とかしてやる」
「分かった」
「全く末恐ろしいガキだぜ」
「リジー少し待ってくれ」
「うん」
そう言ってバルドは男達と連れ去られた人達、部下を連れてアジトへ戻って行った。それを見送り俺も帰るために一緒に来てくれたブレストに礼を言っておかないとな。
「ブレスト、来てくれてありがとう」
「いや、俺は何もしてない。殆ど一人で解決したようなもんだ」
「アジトに付いて来てくれてありがとう、本当は凄く怖かったんだ」
「力になれたようで良かったぜ。もし力が必要な時は俺に声を掛けてくれ、暫くこの街にいるからさ」
「分かった。リジー帰るぞ」
「うん」
俺はブレストに手を振り、リジーを寝床まで連れて帰ると心配で仕方が無かったガキ達が飛びついて来た。
「リジー!戻って来てよがっだぁ」
「ごめん!一緒に居たのに何も出来なくてぇえええ」
「俺、どうじようがと思っだぁ」
「うん、戻れて私も嬉しい!!」
「黒いのありがどうぅ」
「いいって、もう攫われないよう気を付けろよ」
「うん!もう二度とあっちに行かない!」
「もっと気を付ける!」
「おう、その意気だ」
これでこいつらは懲りて、もう危ない場所には行かないようになるだろう。危ない奴は常に近くに居るんだ。俺達なんて誰も探してくれないんだから互いに守り合うしか無いのだ。俺は泣きだしたガキ共と分かれ、クタクタで寝床に戻り拾ってきて気に入ってる毛布に倒れ込む。安心できる場所に戻って来たからか、今日一日抑え込んできた感情が抑えられなくなり目から涙が溢れてきて止まらない
怖かった、死ぬかと思った。失敗したらボコボコにされて誰にも気づかれずに、死んじまうんじゃないかってずっと怖かったんだ。もし、リジー見つからなかった?もし、死んでたら?そう考えると、怖くて足が竦んじゃって何とか抑え込んでたけどもう止まらない。
怖い奴らを怒らせるなんて馬鹿がやることだ、死んだっておかしくない。俺は逃げるのは得意だけどあんな奴らに追われたら絶対に殺される。
痛いのはヤダ、辛いのもヤダ、俺は飯を食べて好きに生きたいだけなんだ。ガキなんて探さなきゃ良かった、だけど見捨てるのも怖くて、でも助けられて本当に良かった。
この街じゃ簡単に死ぬんだ。俺なんか力も無くてただ逃げれるだけのガキなんだ。人を助けるなんて出来る訳が無いだろ。
涙が止まらず不安な気持ちと恐怖で頭を支配され、体と心は疲れているのに全く眠れる気がしない。溜息を付きながら目を腕で覆い何とか眠ろうと体の力を抜こうとしたら
「大丈夫か?」
「・・・・ブレストか」
もう驚かないぞ。俺の寝床を知っていて、心配するやつなんてあいつくらいしか居ない。弱いところを見せたらつけこまれると、涙をぬぐい立ち上がろうとしたけど体が言う事を聞いてくれない。クソッ動けよ、こんな所を見せたら殺されるぞ。
「大丈夫だ何もしない」
「・・・・」
「いきなり来るのは悪いと思ったんだが、お前の様子が気になってな。舐められないように背伸びしているけど、お前マフィアのボスに会いに行った時震えてただろ」
「そんなこと無い」
「俺の目は誤魔化されねーぞ、今だって気が抜けて起き上がる事すら出来ないじゃないか」
俺の傍まで歩いてくるブレストの気配を感じるけど、どうしても立ち上がれない。そうこうしている内にブレストは俺の隣に座った。そして、優しい温かい手で俺の頭を触ると
「話した時は大人びて見えたが、こうしてるとちゃんと子供なんだな」
「触んな」
恥ずかしくて、むず痒くて馬鹿にするなと思うけど少し嬉しい。そんな優しい触り方なんてされたこと無いから変な感覚なんだ。
「強がるなって、本当は怖かったんだろ?寝ている間は俺が守ってやるからゆっくり休め」
優しくゆっくり撫でてくる温かい手を振り払うことが出来ず、段々眠気が襲ってくる。手を振り払わないのは体が言う事聞かないから仕方ないんだ。いつもだったらこんな手引っ叩いてやるけど・・・・今日は少し疲れた。
「おやすみ、ゆっくり休めよ」
夢を見た。優しい顔をした男と女と一緒に俺は大きな家で温かくて美味しい飯腹一杯食べる夢だ。こんな事ある訳ないと頭では分かってるのに羨ましくて仕方が無い。どうして俺には、守ってくれる人が居ないんだ?どうして俺は毎日死ぬかもしれないと怖がらなければいけない場所に居るんだ?俺が不吉な子だからか?化け物だからか?・・・・起きた時には俺は少し泣いていた。
「よう、起きたか。どうした怖い夢でも見たか?」
「・・・・本当に居たんだな」
「そりゃ勿論約束しただろ?」
「俺はしてない」
さっさと起き上がり横に座っていたブレストから離れる。昨日はこいつのおかげ色々助かったけど、こいつは俺の仲間じゃない。それに、もう困ってることは無いしこいつとはさよならだ。
「一応礼は言っとく、ありがと!」
「おう、元気になったみたいだな」
「それと、ニホンっていう言葉は誰も聞いたことが無いってよ」
「・・・・そうか」
「それだけだから、じゃあな!」
俺の言葉を聞いて少し悲しそうにしたけど、知ったこっちゃない。俺は今日も金を稼ぎに行かないといけないのだ。マルロの様子も見てこないといけないしな。
じゃあな!
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