薬草発見!
朝の勉強が終わった後は、ある程度文字が読めるようになったから冒険者として依頼を受けて良い事になっている。魔物を倒す依頼とかは駄目だと言われたから、街の周辺で薬草採取ぐらいしか出来ないんだけどな。
鞄は持った!ナイフも持った!防具も着た!準備良し!
「行ってくる!」
「おう、怪我するなよ。もし魔物と会ったら戦わずに逃げることを優先するんだぞ」
「分かってるって!」
まったくブレストは毎日同じことを言うんだ。心配し過ぎだっつうの!俺が依頼に行っている間に、ブレストはダンジョンに潜ってるらしいけどそっちの方が俺より危険だろ。俺は宿を出て冒険者ギルドへ急いで行くと、昼間でギルドは人で溢れてたが大体が酒を飲んだり喋ったりダンジョンの人ばかりだ。俺は依頼が張り出されている場所に行くと
「おう、今日も来たのかガキ」
「・・・・」
「無視かよ、今日はお守りが居ないみたいだが大丈夫でちゅか?」
「・・・・」
「なんとか言えよ」
「フィリックスが金はまだかって言ってたよ。沢山借りてるのに、返さないでここで酒飲んでるのがバレたらどう思うかな~」
「てめっ」
「返す当てがあるってマフィアに嘘つくなんて不味いんじゃない?」
「・・・・」
何で知ってるんだって顔してるけど俺達の情報網を舐めるなよ。ガキ達はそこら中に居て話を聞いてるんだからな。まったく毎回毎回絡んでくるから今日は仕返しだ。仕事もしないで、ただ馬鹿みたいに威張り散らしてるだけのバカは放っておいて、良い依頼あるかな~ウェイク草は森の奥に行かないと駄目だし、マロンは時期じゃない。サンブルーム・・・・これなら良さそうだな。
「これお願いします」
「サンブルーム採取の依頼ですね。十本ずつの納品と報酬となりますが宜しいですか?」
「分かりました」
「ありがとうございます、それでは冒険者カードを拝見します・・・・依頼の受理を完了しました。こちらが依頼の控えです。貴方の冒険に祝福があらんことを」
こんな俺でも態度を変えずどんな人でも丁寧に対応してくれる受付嬢さんは、ブレストの話だとブレスト並みに強い人達らしい。何でもギルドの職員になるには凄く難しいテストに合格して実力も無いとなれないんだって。偶に荒っぽい奴らが絡んだりしてるけど全く動じないのは、あんな奴ら簡単に倒せちゃうからなんだろうな。
早速俺は街の出口に行き衛兵に冒険者カードを見せて外に出て森に行くことにした。サンブルームが生えている場所は日当たりが良くて平地になってる場所だからもう少し先に行かないとな~周りを警戒ながら木から木へと移りながら進んでいると
「うわぁあああ!!」
奥から魔物の声かと思う程の叫び声が聞こえてきた。音がした場所は遠くないな・・・・ブレストから危ない場所には近づくなって言われてるけど悲鳴っぽいし
念の為見に行った方が良い気がする。方向を変えて急いで声が聞こえたところに向かうと、俺より大きな四人のガキがゴブリンたちに襲われていた。俺は咄嗟に風の矢を作り出し剣の男を棍棒で殺そうとしているゴブリンに向かって放つ。
「え、何が!?」
「魔法!?」
「誰!?」
風の矢はヒュンッと風を切る音を立てながらゴブリンの頭に綺麗な穴を空けた。
風の矢で十分倒せるみたいだな
俺は木の上から姿を見せずに、今見えているゴブリン七体全てに風の矢を放つ。狙い通り六体のゴブリンの頭に穴を空けれたが一体避けられてしまった。そのゴブリンは、弓を持っている女に突撃しようとしたが木の枝を勢いよく蹴り接近して風でさらに加速しその速さですれ違いざまに首をナイフで斬る。そしてそいつは緑色の気持ち悪い血を流しながら倒れた。
ふぅ、何とかなったな。魔物を倒すのは初めてだけど、やらなきゃこっちがやられるんだ。躊躇なんて絶対にしない。
「貴方が助けてくれたの?」
「あぁ」
「ありがとう、助かったぜ・・・・」
「小さいのに強いんだな」
「怪我してるな、さっさと街に戻った方が良いと思うぞ。じゃあな」
「あ、待って!ゴブリンはどうするの?貴方が倒したら所有権は貴方にあるのだけど・・・・」
「要らない」
そんな汚くて気持ち悪い奴なんて要らないに決まってるだろ。それに魔物の中では小さいほうとはいえ、俺と同じくらいの大きさはあるしそんなの抱えて森を動けないっての。変な事を言うんだな~と思いながら俺はさっさと木に登りサンブルームが咲いてる場所に急いだ。
「後処理は私達でやりましょうか」
「なんだったんだあいつ・・・・」
予想外のことがあったけど、その後は特に魔物や荒っぽい動物に遭うことなく目的の森を少し抜けたところにある平原までやって来た。まだ大丈夫だと思うけど~あ、良かった。平原には綺麗な大きな花を咲かせるサンブルームが大量に咲き、その足元には中々の値段で売れるスッラ草もあってついてるぜ!
「さて、さっさと採らないとな」
サンブルームは日が出ている間はとても綺麗な花を咲かせるけど、日が落ち始めるとしぼんでしまうのだ。花が咲いてる間に茎を切れば、咲いたままで採れるってブレストの本に書いてあったのでその通りに切り取り袋一杯になるまで詰め込む。ついでに、スッラ草も集めておこっと。周囲を警戒しながら採取が終わったので、花を傷つけないように気を付けながら素早く街へと向かった。
道中何事も無く街に戻り冒険者ギルドに着き受付嬢さんに採取した物を渡し、ブレストが戻ってくるまで何しようかな~と考えていると
「納品を確認しました。こちらが、報酬になります」
「は~い」
「それと、急で申し訳ありませんがこの後のご予定はありますか?」
「いや、何もないけど・・・・」
「実は配達の依頼が来ているのですが、少し特殊なので街に詳しい方に依頼させて頂きたいのです」
配達の依頼か~何度か受けたことあるけど何でわざわざ俺に頼むんだ?
「特殊ってなんですか?」
「実は、マロリンさんとムービさんそれとパントさんに急ぎで渡して欲しい手紙なんです」
「あ~・・・・なるほど」
今言われた三人はこの街で有名な至る所で芸を披露するグループだ。この三人は劇場や何処で披露するかが決まっている訳じゃなくて、その日の気分によって場所を変えるから見つけにくいんだよな。かなり前にスラムにも来たことがあるんだけど、予想外の場所に居たりするから街に詳しい人じゃないと見つけ出せないだろうな。
「クロガネ様は街や人に関して詳しいとお見受けしましたので、この依頼受けて下さいませんか?」
「分かった、受けます」
「ありがとうございます、こちらが依頼の控えと手紙を届けた際にはこの紙にサインを貰ってください。それではよろしくお願いします」
報酬を見ると銀貨三枚っていうかなり美味しい依頼だったので、気分良く手紙をしっかりとしまい冒険者ギルドから出た。この街で探し物をするなら、ガキ達か大人の女達に聞けば楽勝だぜ。俺は何時ものパン屋でパンをいくつか買うと、ガキ達が居る場所へ向かった。
「あ~サイラ通りで見たよ」
「お、ありがとう」
予想通りガキ達は三人の場所を知っていた。礼としてパンを渡して俺は教えてもらった道へと急いだ。ガキ達が見たというのは少し前だというのでもしかしたら移動してるかもしれないが、居なければそこら辺で話を聞けば良いだけだしな。この三人はパッと現れてパッと消えると有名なんだけど、その仕組みは・・・・
「お、見つけた!」
芸を披露しているとは思えない程地味な服装をした三人が歩いているのを見て、俺は屋根から降りると驚き身を寄せ合う三人。
「なんだ!?」
「手紙の配達で~す」
「手紙?人違いじゃないかしら?」
「だって、マロリンさん達でしょ?」
この三人は芸を披露する直前に派手な格好に着替え化粧をし素顔を隠して、芸が終わったら路地に素早く隠れて地味な格好に着替えるのだ。それが姿が消える正体だ。
「・・・・何で私達のこと知ってるのかしら?」
「薄暗い路地なんて俺達ガキの縄張りだぜ」
「そう、お願いだから私達のことを他の人に言わないでもらえるかしら?お金が必要なら勿論出すわ」
「俺はただ配達の依頼を受けただけだぜ。だから、金も要らない。はい、手紙」
この街の至る所に俺達は居る。だから、隠れ場所なんて無いぜ。マロリンさん達は手紙を見て少し不思議そうな顔をした後中身を見て頷くと
「なるほど、偉い方がこの街にいらっしゃるのね。どうりで急ぎな訳ね。ありがとう、小さな冒険者さん。秘密を守ってくれるささやかなお礼にこれをどうぞ」
「ん、ありがと。後これにサインもお願い」
「分かったわ」
俺は貰った飴を口の中に入れサインと何かを書いた紙を貰うと、鞄にしまいまた屋根に上がって冒険者ギルドに戻った。
「手紙届け終わったから報告に来ました」
「随分早いですね・・・・受領証を確認しました。素早い依頼完遂ありがとうございます。これが報酬です」
ん~金も稼げて飴も貰えるなんて良い依頼だったな。こういうのばっかだったりすれば楽なんだけどな~この後は魔法の練習でもしようかなとギルドを出ると
「クロガネ」
「ん?ブレストだ」
「よう、今日の依頼は終わりか?」
「うん、この後は魔法の練習でもしようかと思ってたんだけど。ブレストはもうダンジョン終わったの?」
「おう、上層の依頼だったからな。魔法の練習なら付き合うぜ」
別れてから二刻半ぐらいしか経っていないけど、この短い時間でブレストは俺の何十倍も稼いでるんだよな~俺も早くそれぐらい稼ぎたいぜ。
「それじゃ宿に戻るぞ。」
「はーい」
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