俺の特技
ブレストと修行(ブレストにそう言えって言われた)を始めて早くも一ヶ月が過ぎた。一ヶ月というのは空に浮かんで光る丸い星が完全に消えるまでの期間のことで数に表すと三十日って教わった。朝早くから起きて、飯を沢山食べた後に文字の勉強を毎日しているんだけど、これが楽しいけど大変なんだよな・・・・
「まだ書かなきゃ駄目?」
「あぁ、思い出すことなく自然に書けるまで練習だ」
「うぅ~文字多すぎ!」
「50文字しか覚えなくて良いだけマシだろ」
「うぐぐ」
「それに、それは基本の文字だから魔法を勉強するならもっと文字は増えるぞ」
「魔法は勉強しなくても使えるし!」
「知識は強みになるんだ、勉強しておいて損は無いぞ」
ブレストは読み書きが出来るから簡単だって言うけど、聞いた話だと大人だって沢山読み書きが出来ないやつがいるらしいじゃん!だけど、生きてられるらしいからそこまで勉強しなくても良いと思うんだけどな~・・・・勉強を始めたことで読める物が多くなって色々知れたのは楽しいけど、何度も書くのはめんどくさい!
「ほら、そこ曲がってるぞ」
「はぁい」
「この世界の文字はその基本の文字を組み合わせて使ってるから、それさえ完璧に出来るようになれば読み書きは完璧に出来るようになるぞ。頑張れ!」
「む~はぁい」
何度も何度も同じ文字を書くのは好きじゃ無いけど、これも冒険者になるためだし頑張るしかないか。それに、この勉強の時間が終われば次は楽しい勉強だしな!俺はお手本の文字を綺麗に写す作業を長い時間やり、ブレストが作った本を読み上げて文字の勉強は終わりだ!
「よし、今日の文字の授業は終わりだ。ほら、外に行くぞ」
「やった!」
勉強道具をブレストに貰った鞄の中に入れて、俺は勢い良く部屋を出ると女将さんが
「今日もまた勉強かい?」
「うん!」
「そうかい、頑張ってね」
ここに三十日も居たおかげで女将さんは俺のことを覚えてくれたみたいで、良く話し掛けてくれるようになったんだよな~偶にお菓子をくれたりするし優しくて好きだぜ!俺は元気良く宿の裏口に向かうと、そこは大きな何もない広場で端に井戸が置いてある。女将さんからここは壊したりしなければ好きに使って良いって言われたんだよな。
「クロガネはこの授業が好きだよな~俺も体育の授業は結構好きだったぜ」
「だって体動かすの楽しいもん!」
たいいくって言うのはよく分からないけど多分体を動かすってことだよな?
「それじゃあ、まずは準備運動からだな」
「はーい」
ブレストに教わった不思議な動きを一緒にやったら木で作ったナイフを構え、さぁ楽しい授業の始まりだ!
「最初は魔法禁止な。よ~し、来い!」
「っ!」
ブレストが武器を構え、開始の合図を言うのと同時に俺は自分が出来る全力の速さでブレストに近付き足を狙う。俺の身長だとブレストの頭や首を狙うのは難しいから、まずは急所で守りにくい足からってな!
「お、良い速さだが馬鹿正直に正面は駄目だな」
そんな馬鹿みたいに突っ込むわけ無いだろ!振り下ろされる剣をよく見て右前に飛び込むように避けて、がら空きの横から斬ろうとしたが剣が俺を追ってきたのでナイフで受ける。俺にはブレストの軽い攻撃でも受け止め切るのは大変なので、体を浮かせ衝撃を受け流しながら膝を蹴って離れる。
「おっと」
膝は人間が鍛えることが出来ない場所だから、俺でも相手の姿勢を簡単に崩せるって教えてもらったけどこれ楽しいな!姿勢が崩れたブレストに追撃しようとすぐ跳び込む。ブレストは剣を横にして俺を斬るつもりみたいなのでギリギリまで、近づいて振った瞬間に飛ぶ!剣を飛びながら避けて頭貰いっ!
「んぎゃ」
「はい、残念」
獲ったと思ったのに次の瞬間には左手で服を掴まれてしまった。手なんて斬ってやるとナイフを手に振りかざそうとした瞬間ブレストの剣が俺の首に
「良い所だったが、甘かったな」
「うぅう悔しい!」
「剣と急所に注目し過ぎて左手の存在忘れてただろ。相手は武器だけじゃなくて体全てで戦ってくるんだから全身の動きを見るんだ」
「は~い」
「それと、前も言ったが魔法無しの時にそうほいほいと飛ぶんじゃない。空中に居たら出来る行動は極端に少なくなるんだ、手練れ相手に安易に飛んだら殺してくださいって言ってるようなもんだぞ」
「だって飛ばないと届かない!」
「飛ぶならもっと考えて飛ぶんだ。例えば空中に居る時間を減らしたり、障害物を蹴ったりして向きを変えたり体を動かして捻らせたり工夫をするんだ」
「魔法使えば飛んで戦えるから良いじゃん」
「駄目だ。魔法が使えない場面なんて沢山あるんだぞ。ほら、もう一回」
その後何回も手合わせをしたけど、一発も体に当てることが出来なかった。今の俺だったらそこら辺に転がってる荒くれ者ぐらいは倒せると思うし・・・・これはブレストが強すぎるのが悪いんだよ!
「よし、魔法無しはここまでだな。クロガネの軽さと素早さは武器だが同時に弱みでもあるんだ今後も気を付けるように。それじゃあ魔法使って良いぞ」
「やった!」
ふふん、魔法ありだったら魔法無しのブレストともう少し粘れるもんね。魔法ありのブレストは・・・・あれは反則だから仕方が無い。
「よ~し、行くぞ!」
「はいはい、来な」
教わった身体強化を使いさっきとは比べ物にならない速さで、ブレストに突っ込み首目掛けて飛ぶとそれに反応し剣を振ってくる。俺は予定通りに足の下に風の足場を作って体の向きを変え勢い良く踏み込み、急降下して横を通り抜け後ろを取る。がら空きの背中に向けてナイフを振ろうとしたら、勢い良くブレストの回転蹴りが来たのでそれを風の盾で防ぐ。そして上から振り下ろされる剣を体を捻らせながら避けて首へナイフをと思ったけど、左手が掴みに来たのでまた足に風の足場を作り後ろに回転しながら避け距離を取る。
「もう少しだったの・・・・」
「何の躊躇も無く首を狙ってくるんじゃねーよ、なんか冒険者じゃなくて暗殺者を育ててる気分だぜ」
弱い所があるならそれを狙うのが当たり前だろ!それに人間の弱点はブレストに教えてもらった事だしな。
さて、今の攻撃を何度も繰り返しても良いけどそのうち捕まっちゃいそうだな・・・・前に教わったの試してみよっと。俺はナイフを構えながら空中に風の矢を三つ作り出し放つのと同時に走り出す。ブレストは驚きながらも、剣で矢を弾き剣を振り下ろした隙に懐に入ると右肩を狙って飛ぶ。体を捻られ避けられたけど、また空中に風の矢を作り出して放つ。
「うおっ」
ナイフと一緒に矢を防ぐのはいくらブレストでも大変だろ!風の矢が途切れないように次々と作り出し、風とナイフの猛攻で忙しそうにしている隙にとっておきの魔法を発動させる。
「闇の鎖・・・・マジか!」
そう、闇の魔法で作った鎖を地面から出し忙しそうに矢を防いでるブレストを縛り上げたのだ。これでもう動けないでだろ!俺は勢い良く首に向かって飛び込むと、ブレストが笑った。
やばっ!!!
気付いた時には手遅れで俺の周囲に沢山の輝く剣が現れ取り囲まれてしまった。
「ズルいぞ!」
「魔法ありって言っただろ」
「ブレストが使うのはズル!!」
「なんでだよ・・・・まぁ闇の魔法が使えるようになってるのは驚いたがもう少い強度を上げないと駄目だな」
そう言ってブレストは笑いながら体に力を入れると簡単に鎖が壊してしまった。今の手合わせではブレストは鎖に捕まるまで一切魔法を使っていなかったのだ。俺の周りを取り囲むこの空中に浮く剣はブレストの魔法で、自由自在に操れるらしい。なんか俺自慢の魔法だとか言ってたけど、これは色々ズルいから使うのは反則だろ!
「剣退けろよ!」
「はいはい」
「この剣出されたら勝てる訳ないじゃん」
「工夫さえすれば勝てるもんだぞ」
「嘘だ~」
「嘘じゃ無いぞ、ほら今日の鍛錬は終わりだ」
「は~い」
音も気配も無く表れ上に下に右に左にって自由自在に動く剣相手に勝てる訳ないじゃん!
「それにしても、クロガネは魔法の習得が早いな。誰かに教わったりした事無いんだろ?」
「魔法なんて俺達が教えてもらえるわけ無いだろ」
ブレストに魔法のことも教えてもらってるけど、どうやら俺が逃げる時に使ってた風の足場は魔法だったらしい。魔法ってもっとドカーンとかピカーンみたいな派手なやつだと思ってたぜ。風の足場はなんか足場が欲しいな~とか思いながら走ってら使えるようになったから、誰かに教わった訳じゃ無いんだよな。
「身体強化も軽くなら使えてたし、風の魔法なんて理論を覚えて使うもんなんだけどな~・・・・」
「何となくで出来るもんだぜ」
「そういう奴もまあまあ居るけど、クロガネは魔法に関して才能があると思うぞ」
「へ~金稼げる?」
「おう、沢山な」
「なら魔法も頑張る」
金を稼ぐためなら何となくで使えるから要らないと思う退屈な魔法の勉強も頑張るぜ。さて、鍛錬が終わったことだし依頼を受けに行かないとな!
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