先生が出来た?
さてさて昨日盗めなかったから今日は稼がないとな~って思ってたんだけど・・・・
「何で付いて来るんだよ!」
「俺が何処に行こうが自由だろ?」
「付いて来るなって言ってんだよ。衛兵に言うぞ!」
「なんて言うんだ?」
「ガキを狙う変態野郎が居るって!」
「誰が変態野郎だ」
盗みをするっていうのにこんな目立つような奴と一緒に居たんじゃ出来る訳が無いい。もし変な奴が付いてきたら、いつもは入り組んだ道に逃げたり屋根に上がったりして撒いてるんだけどこいつ相手だと無理!
「はぁ、昨日の事はありがとうだけど何で付いて来るんだよ。お前も俺を攫おうってか」
「そんなこと絶対にしない」
「分かってるよ、そんな怖い顔すんな」
俺を攫うつもりなら寝ている間に連れ去られてるからな。でもそれ以外だと俺を付き纏う理由なんて無いだろ。
「・・・・実はなお前に提案があるんだ」
「なんだ?」
「冒険者にならないか?」
「・・・・俺みたいなやつが慣れる訳ないだろ」
何を言うかと思ったら・・・・冒険者って荒くれどもとかすっげぇ強い奴がなる仕事なんだろ?後はダンジョン?ってやつに潜って魔物を倒して金を稼ぐって聞いた。そんなの非力な俺には出来ない。他にも町の外で魔物や動物を狩る仕事もするらしいけど、前にガキ共が街の外で魔物を倒して金を稼ぐって言ったっきり、その後姿を見たことが無い。
外の世界に自由に行ける冒険者に憧れたことはあるが、俺程度じゃ魔物に食われておしまいだ。
「いや、お前には冒険者になる才能がある」
「・・・・字も読めねーし金の事も分からない。冒険者ってのは、依頼を受けるんだろ?俺にはそれが分からねーから無理だ」
「字や金の計算は俺が教えてやるし、冒険者のことは俺が色々教えてやるよ。これでも、四級冒険者なんだぜ?あと少しで三級だがな」
「意味わかんねー何でそこまでするんだよ」
ただのガキにそこまでする理由が分からねぇ。俺なんて少し足が速くて少し街の事を知っているだけのそこら辺にいるガキだぞ。四級とか三級とかよく分かんないけど、ブレストって強いんだろ?俺なんて要らないだろ。
「お前が心配だからだ」
「はっ少し前に会ったぐらいでか、優しいんだな」
なんだよこいつ俺が可哀そうだって言うのかよ!別に俺は好きでこうやって生きてるだけだし、お前に助けてもらわなくても自分で生きていける!助けなんて要らないんだ!
「どうしてお前はスラム街に住んでないんだ?」
「・・・・あそこは弱いガキとジジイババアばかりだ。そんな奴らに助けてもらう訳にはいかねーだろ」
自分のことが出来るようになるまでスラム街に住んでたけど、あそこは俺より弱い奴ばかりだ。世話する子供が減った方が楽だろ。
「そうか、お前はスラムの子供達を守ってるんだろ?そいつらは幸せもんだな、こんな頼りになる奴が守ってくれるなんて」
「・・・・」
「でも、お前は誰が守ってくれるんだ?」
「自分の身は守れる!世話なんていらねぇ!」
「あぁ確かに上手く生きてるみたいだがこの世界は力ある者が勝つように出来てるんだ。昨日、もしマフィアを仕向けるのが失敗してたらどうするつもりだったんだ?」
「・・・・それは」
「倉庫で戦った時もお前の戦い方は危うかった。暗く無ければ、反撃されてたぞ」
「でも、生きてるし!」
「あぁ幸運にもな。お前は賢いし度胸もあって恵まれた身体能力がある。だけど、その活かし方と伸ばし方を知らないだろ」
「別に知らなくて生きてられる」
「あぁだがこの世界は物騒だ。また同じことが起きても可笑しくないだろ?力を付ければもっと子供達を守れるようになるぞ。金も稼げるようになって盗まなくても生活出来るようになる。もしお前一人だけでも解決できる力を付けてやる。どうだ、悪くないだろ?」
・・・・確かに俺だけじゃリジーを助け出すことは出来なかった。また同じことがあったら今度は助けられるか分からない。この街では、多くの人が集まるから危ない奴や怖い奴なんかも沢山集まってくるんだ。これからも、同じような事が沢山起きるかもしれないから力は欲しい。だけど、こいつを信じて良いのか?
「本当に強くなれる?」
「あぁ一流の冒険者にしてやる」
「何でそこまでしてくれるの」
「お前が懐かしい奴と似てるからだ」
「そうなんだ・・・・それじゃあよろしく」
「あぁよろしくな」
ブレストは凄く優しいけど少し悲しそうな顔をしていたので、助けて貰ったし信じることにした。もし騙したら全財産盗んでマフィアのボスに頼んで懲らしめてやるからな!それにしても、俺に似てる奴か~この街で生まれて長い間色々な人を見たけど、俺みたいな黒髪、黒い瞳何て見たこと無いけどな~外だと居るもんなのかな?
「それじゃあ、まずはお前に名前を付かないとな」
「名前?別に要らねーよ」
「駄目だ駄目だ、呼び名が有った方がコミュニケーションを取りやすいだろ?」
「コミュニ・・・・なんだそれ」
「親睦を深めるってことだ。それに、冒険者になるには名前が必要だ。良いの考えてあるんだよ」
なんだか俺の名前を決めるのを凄く楽しそうにしているから断れる感じじゃね~な。まぁタダなら貰っとくか・・・・
「お前の名前は今からクロガネだ!」
「クロガネ・・・・?」
「あぁ黒い鉄の名称だ。鉄は柔軟でどんな物にだって加工できるし鍛えれば鋼になり、どんなものでも斬り裂く最高の武器にだってなるんだぜ。これからは俺が鍛えまくってやるから、覚悟しろよ」
「クロガネ・・・・それが俺の名前だな、分かった」
「あぁこれからよろしくな、クロガネ」
「よろしく」
聞いたことが無い言葉だけど、ブレストにはこの言葉が俺に合ってるらしい。ちょっと変わった名前だけど、俺の見た目も変わってるし今に始まったことじゃ無いしな。俺は伸ばされた手を掴み握手すると、
「じゃあ、早速冒険者ギルドに行くぞ!」
「今から?」
「あぁ今からだ、善は急げって言うだろ?」
「???」
言っている意味はよく分からないけど、きっと難しい言葉なんだろうな。ブレストは俺の手をしっかりと握り大通りを進んで行く。手を握られるなんて、ガキじゃ無いんだからと思ったけど嬉しそうにしてるので大人しくしておく。今から行くことになった冒険者ギルドは、街の正面から大通りを突き進んだダンジョンって呼ばれてる場所の隣にあるガキ達が沢山住めそうなほど大きな建物だ。冒険者はそのギルドってところで依頼を受けるらしい。
小綺麗なブレストが汚い俺と一緒に居るのが珍しいのか、色々な人に見られながら冒険者ギルドに着いた。外からでも聞こえる程賑やかな声だが、ここはいつも人が居て騒がしいのだ。
「クロガネは中に入ったことあるか?」
「無い」
「そうか、冒険者になったら沢山来ることになるんだから慣れるさ」
「別にビビってない」
「そうか、じゃ入るぞ」
初めて入ったギルドは賑やかで煩いってのがピッタリな場所で、馬鹿みたいに大きな剣を持った奴や叩いたら折れそうな奴など色々居る。だけど、酒場とかで飲んだくれてる奴らとは少し違うな。
「登録所は・・・・空いてるな」
「あの人が居ないところ?」
「そうだ」
カウンターの向こうに、同じ服を着た姉ちゃん達が並んでその前に行列が出来てるが一つだけ並んでない場所がある。空いてるってことはあそこだよな。ブレストに連れられ行くと
「やあ、登録をしたいんだが良いか?」
「はい、現在順番待ちの冒険者様は居ませんのですぐにお手続きを行えます。登録するのは貴方様でしょうか?」
「いや、俺はもう登録済みだ。今日登録して欲しいのはこっちだ」
「大変失礼しました。文字の読み書きは可能でしょうか?」
「出来ない」
「畏まりました、それでは書類に関しては私が代筆と読み上げさせていただきます」
ブレストを見た後俺を見たのに、全く顔が変わらない姉ちゃん。いつもなら嫌そうな顔されるんだけどな~
「まずは、年齢を確認させてください」
「クロガネ歳は幾つだ?」
「え~・・・・確か10とかだった気がする」
「10歳ですね、少し小さいように思えますが体の大きさも問題ないようです」
親が居た時から歳なんて数えて貰った事無いから、歳なんて聞かれたって分からないんだよ。俺の大きさはブレストの腰ぐらいだけどこれくらいが普通だ。それに、毎日飯にありつける訳じゃ無いしスラムに住んでて大きなガキなんて居る訳が無い。
「10歳だったのか・・・・」
「なんだよ」
「いや、これからの予定を立てただけだ」
「お名前を教えてください」
「クロガネ」
「クロガネ様ですね。得意な武器はなんでしょうか」
「ナイフ」
「動物や魔物を倒した経験はありますか?」
「ない」
「特技はなにかありますか?」
「・・・・逃げること?」
「分かりました」
特技なんて聞かれたって衛兵や面倒な奴らから逃げることぐらいしかない。ブレストは、はぁと溜息をつくと
「移動などの風の魔法が使える」
「そうなのですね、記録しておきます」
「???」
魔法なんて使えないぞ俺。その後は姉ちゃんから長くて眠くなっちまうような話を、ずっと聞かされ続けたが大事なことだというのでしっかりと聞いておく。冒険者同士の争いには基本介入しないとか、死んでも責任はないとか冒険者って面倒なんだな。
「以上です。何か質問はございますか?」
「ない」
「それでは、冒険者カードをお渡ししますね。大事なものですから無くさないようにしてください」
姉ちゃんから茶色い金属の薄い板を貰うと、何やら書いてあるが読めない。
「これで、冒険者登録は終了です。貴方の冒険に祝福があらんことを」
俺達は姉ちゃんの所から離れて並んでいるテーブルと椅子に座ると、ブレストは頭を撫でながら
「これでお前も冒険者だ」
「簡単なんだな」
「あぁ、なるのは簡単だ。だが、クロガネはこれから色々勉強しないと駄目だぞ。あそこに紙が沢山貼ってあるのは分かるか?」
「おう、冒険者が沢山いる所にある奴だろ?」
「そうだ、依頼は毎日あそこに張り出されてそれを取ってあのお姉さんたちに渡して依頼を受けるんだがお前には紙に書いてあるのが読めないだろ」
「あぁ少し分かる奴もあるけど、殆ど分からない」
「依頼の内容を知らないと、後々大変なことになるから文字が分かるようになるまでは依頼を受けることは禁止だ」
「でも、金を稼がないと」
「依頼が出来るようになるまでは、面倒見てやるよ。こう見えても金持ちなんだぜ」
こう見えてって・・・・まぁ確かに此処に居る冒険者たちの半分はそこら辺でよく見る荒っぽい奴らだがもう半分は小綺麗な奴らだな。中々に金を持ってそうだぜ。
「それじゃあ、次行くぞ!」
まだ行くところあるのかよ・・・・
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