第2話 霊感度 

霊感


霊的な何かを感じてしまう力




それにも感度があるみたいだ


自分がこういう事を意識したのは、坊さんになったからではない




霊感の強い友人がいたからだ




自分が感じる範囲だと




その感度調整はラジオやテレビに似ている。




声が聞こえる時の自分も感度1くらいだろう


ラジオで言えばザーザー音の中からかすかに言葉が聞こえて注意しないと聞き取れない程度の感度


ゲルマニウムラジオみたいなもんかな




その友人は感度5、見えちゃって困る位




車とすれ違えば




「あの車、人殺してる」




とか




「あそこのマンホールから上半身出してる」




とかいい加減なことを言う




でたらめかと思った




ある日、自分の首が痛い日に会ったら




「坊さんのくせに随分拾ってきたなぁ、首痛いでしょ」




だって




「ちゃんとお勤めしてるのかぁ?」




いやいや 大体自分の首のためにお勤めしないだろ




と言うわけで、お勤めついでに首の辺りの方々の供養もしたら




楽になった。。。




それからは




「今日も拾ってきたね」




なんて言われても 




まぁそのまま連れて帰って供養した方が良いでしょ




お勤めついでに供養をしてる




それでも自分は、その肩に乗ってる実態を見たわけでもそれらの声を聞いたわけでも無かった。




でも彼は私の鈍感なチューナーのブースターやアンテナの仕事をしてしまった。




その道は、以前暴走族が幽霊を後ろに乗せてしまい半狂乱になったという噂があった道なのをすっかり忘れていた




深夜その道を軽自動車の助手席に彼を乗せて走っていた




信号で止まる




バリっ




電源の入ってないカーステのスピーカーが一瞬響く




彼が何かに気が付く




「んっ!!」




「ちょっと乗ってきたみたい」




えっ




彼の方を見ると






助手席の窓から覗いてる顔




外から覗いてるので正確には乗ってないのかもしれない




信号が青になっても固まっていたら




「そのまま発進してだって」




あーはいはい




でも 走り出してもその顔は消えずに覗き続けている




顔あるよね?




「おっ見えるようになってきた?」




って・・・窓に映った光や汚れが顔に見える錯覚ではないのね




ここ曲がるとあれがあるから、まっすぐ行こう


そう思ったら




「ここ左だって」




いやいやここ左に曲がるとあそこの方向だぞ




そして道案内の通り進むと


自分が昼間訪れた深夜には行きたくない場所に近づくそしてとうとう


そこの横を通るはめに






火葬場




火葬場の横を通り過ぎた途端




スピーカーがまたバリバリっと音を立てる




横を見ると顔はもう無い




「消えた」




あー 降りたんじゃなくて消えたのね




なんとなく理解した




しかし普通は火葬場から出て行くもんじゃないのか?




暴走族の噂とは違う話しで




自分があれを乗せた信号近くでバイク事故で知り合いの友人が亡くなった話を


後から聞いた。




そうか彼は自分が死んだことに気がついて無くて


自分が火葬された痕跡を確認しに行って




納得して成仏したのかな




 まぁ成仏したことにした方が良いかな






「ところでさぁ 顔がある間ずっとどこからかお経が聞こえてたよ」


とは 彼の言葉




うーん 俺では無いなぁ 先代とか先々代なのかなぁ。。。


それとも火葬場にいろんなお坊さんが読んだお経が残っていたのかもなぁ


その辺はよくわからないが




わかったことは




そして彼はあの晩、感度0の俺のチューナーを感度1にした。


と言うこと




怨むぞ




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現世界坊主 @aivas

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