現在進行形で未来へ進む古代ギリシャ

カクヨムでは非常に有名な作品です。コメディ創作論で知られる作者さまですが、今作の横顔は凜としています。

古代ギリシャはもう遠い過去なのですが、魅力的なキャラクターによって現在進行形の歴史かのように息吹を生じ、かつ超大作であり完結せず物語は今も未来へ向かい続けています
未来へ向かうと書いたのは、「あの頃には戻れない」から前進するしかない感がすごいんです、ギリシャ物語は
かなり主要人物でも容赦なく亡くなってしまいますし、逃避行で逃げれば逃げるほど、逃げた先がさらに地獄が待ってる。ページを捲るほど事態はやり直しが効かない方へ向かってしまうんです
どんな展開や悲劇でもあり得るだろうという緊張感が常にギリシャ物語には渦巻いている
スパルタ衰退、そしてアテナイ・テバイ連合、マケドニアの台頭とペルシャへの反逆へ向かう時代、明日見えぬ内乱のギリシャの中でそれでも未来へ向かわんとする少年少女のたち、ギリシャ物語の青春だと思いました


「ティリオンVSフレイウス」
Ⅱはついに、ティリオンとフレイウスが対峙します。(連載中現在)
ティリオンを守るために剣を磨いてきたフレイウスがティリオンと対峙しなければいけない
そして前述の「どんな展開や悲劇でもあり得るだろうという緊張感」の中、ギリシャ物語屈指の好カードは
後編の花形であり読む動機になるでしょう


読む順番で読んだ感じが変わる珍しいシリーズなので、旧作に触れながら後述します
理解しやすいのは「初代→外伝→Ⅱ」、でも時系列的には「外伝→初代→Ⅱ」なので、どちらが正しいとは言い切れない

「ギリシャ物語」
スパルタが舞台です。どのキャラも初対面として登場するので読みやすいと思います
ティリオンたちの今の10代とそんな変わらない青春から、後半一気に乱世なんだという厳しさが出て、その温度差で「非日常トリップ感」が出ます。
ここの切れ味がすごいので、外伝で事前知識を入れない方が「落差」がよく出る気はします。
テバイ軍や、スパルタの教育システムとか、スパルタの料理おいしくないとか、ギリシャ知識が面白い形で登場します。

「ギリシャ物語外伝」
アテナイが舞台です。ティリオンの苦しい少年時代、それを守れなかった剣士フレイウスの物語。
初代より外伝を先に読んだ場合は、ティリオンの素性を知りつつアフロディアと出会うことになり、それもそれで逃避行として緊張感があるかも知れません

アテナイはエーゲ海があって文化的なポリス。医療、芸術、被服、料理屋……それにまつわるいろんなキャラが出てスパルタ編とは異なる賑わいがあります
アテナイこの時代にすでに親権?のような概念もあるという。それがまた物語に密接に関わってくる。すごい。そんなとこから話広がる。博学なんです
古代アテナイが想像よりずっと近代的なこと、そしてその文化がルネサンスや近代の法律にまで影響を及ぼす萌芽を感じる外伝です
BL要素が増え、初代ギリシャ物語と毛色が変わります



さーっと書いてしまいましたが、
作者さまの作品はとても安定していて、安心して読めます。
そして博学です。知ってそうで知らない古代ギリシャ、触れるきっかけになるのではないでしょうか

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