ギリシャ物語 Ⅱ【後編】

本城 冴月(ほんじょう さつき)

ギリシャ物語 これまでのごく簡単なあらすじ

『ギリシャ物語』これまでのごく簡単なあらすじ(その1)

 【※この物語は、恋愛・歴史フィクションです】


 時は、紀元前372年


 ギリシャは地中海を囲んで、数多くの都市国家ポリスが林立し、勢力争いにしのぎを削っている時代。


 18歳の美貌の青年、ティリオン・アルクメオンは、誤解から、自分の父親の将軍長アテナイ・ストラデゴスを斬る、という大事件を起こしてしまう。


 命をとりとめた父親の意思と、父親の麾下きかにあるアテナイ氏族組織の切なる願いで、事件はもみ消されたが、本人は知らないまま逃げ続けることになる。


 ティリオンを追うのは、ティリオンに強い愛情と忠誠心を持ち、『アテナイの氷の剣士』の異名を持つフレイウス。


 ティリオンの武術の師であり、『第一の近臣』でもあったフレイウスの目的は、処刑ではなく、ティリオンを保護し無事にアテナイに連れ戻すこと。


 だがティリオンはそれを知らぬまま、スパルタに逃げ込んでしまった。


 学問と芸術の盛んな民主制国家アテナイ、対してスパルタは、スパルタ教育によって鍛え上げられたスパルタ戦士軍団を持つ、二王制軍事国家である。


 アテナイとは犬猿の仲のスパルタ。


 スパルタ領に逃げ込めば、フレイウスとアテナイ軍は追ってこれないからだ。


 逃げ込んだスパルタで出会ったのは、15歳でおてんばじゃじゃ馬の、スパルタ王女アフロディア姫。


 生まれたポリスの慣習が大いに違うため、最初は行き違いもあったふたりだが、ティリオンとアフロディア姫はやがて恋に落ちる。


 ティリオンがアテナイ軍に追われていることを知ったアフロディア姫は、幼馴染クラディウスの協力も得て、懸命に彼を守ろうとする。


 一方、ペルシャ帝国の脅威を察知したアフロディア姫の兄、アギス王家のクレオンブロトス王は、ギリシャをひとつにまとめて対抗するために、苦労して『ギリシャ全体平和会議』を開く。


 しかしここに、スパルタ主導のギリシャ統一を快く思わないテバイ・ポリスの策略家、エパミノンダスという人物がいた。


 平和会議にやってきたエパミノンダスは、スパルタのもうひとつの王家、エウリュポン王家の老王アゲシラオスと結託する。


 エウリュポン王家の老王アゲシラオスは、アギス王家の若い王クレオンブロトスの名声を妬み、恐れていたのだ。


 結託したふたりの悪だくみによって、クレオンブロトス王は騙され、『ギリシャ全体平和会議』から遠ざけられ、結局、会議は決裂してしまう。


 アフロディア姫のそばにいたティリオンの正体もばれて、密偵として嫌疑をかけられ、捕まって拷問される。


 アフロディア姫に嫌われたくなくて、姫にさえ素姓をいつわっていたティリオンは、愛する姫の心を失いそうになる。


 そのとき、愛するがゆえに姫をいつわった自分の姿が、自分を騙し続けていた父親の姿と重なり、彼は、父親の悲しくも深い愛情に気づくのだった。


 最後には処刑されそうになるが、全てを知ってもティリオンを愛する姫の願いと、クラディウスの友情によって、彼は逃がされた。


 紀元前371年


 『ギリシャ全体平和会議』が決裂したため、テバイ国領土で『レウクトラの戦い』が起こる。


 策士エパミノンダスと、自らの国が負けてでもクレオンブロトス王を殺したい狂的なアゲシラオス王との、内通による裏切りの罠。


 さらにはテバイの『神聖隊』と、新戦法の『斜線陣』もあって、クレオンブロトス王率いるスパルタ軍は『レウクトラの戦い』で敗戦してしまう。


 瀕死のクレオンブロトス王から妹のアフロディア姫を最後に託されたのは、奴隷兵に紛れ込んで姫を守ろうとしていた、ティリオンだった。


 ティリオンはアフロディア姫を連れて、戦場を逃げる。


 しかし、捜索兵の多さに逃げきれず、ティリオンに一目惚れをした村娘レジナと、その弟ソリムの家にかくまわれることになった。


 その家で偶然、テバイのダリウスと、スパルタ・エウリュポン王家のフォイビダスの密談を聞いてしまう。

 

 密談の内容は、テバイとエウリュポン王家の内通と、アフロディア姫の兄クレオンブロトス王が、敗戦後五日たってもまだ敵に手に落ちていないという話だった。


 愛する兄の生存を信じてしまう、アフロディア姫。


 医師としてクレオンブロトス王の傷を診たティリオンは、王の生存には懐疑的だったが、それでも姫のために、行方不明の王の情報を得ようと考える。


 クレオンブロトス王の生死と行方に関する情報を得るため、ティリオンは女装して、村娘レジナと共にテバイ陣の酒宴に潜入したのだった。

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