第33話

 つくりものでも あせのながれる 夏野なつかな


 嘘の風景をまえにして、夏の猛暑、汗をしたたらせている。つくりものの公園の風景でも自然を感じる。人間の感性などあてにならないものである。青い空に、白い雲が流れていれば、下半分の風景はどうでもいいらしい。



 わらべらの 二坪ふたつぼばかりの 青田あおたかな


 都会のなかの公園の一隅に、子供たちが使用する課外授業の田圃がある。狭い田圃がコンクリートの枠内にいくつか在る。夏には田圃のなかは青々とした稲が風になびいて、見ている私の心のなかにも涼やかな風がわたってゆく。



 水道すいどうを 清水しみずとみたて りょうをとり


 酷暑の夏、公園の木陰にいても涼しくない。照りつける太陽を、逃れるようにして公園の水道口まで這ってゆく。水道蛇口を目一杯ひねって、勢いよく水を出す。蛇口の下に頭をかざして涼をとる。流れる水を見て、小滝にみたてる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

句集 東京路上生活 藤宮史(ふじみや ふひと) @g-kuroneko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ