大型安売りスーパー・ボディー
ハナビシトモエ
当店は何でも取り揃えております
自家用車で駐車場に入った。新しいスーパーに行くよって言っても二歳の末っ子が行きたがらないので、
チラシで『二月十四日、
「ただいま大変混雑をしております。どうかお待ちください」
夫と子どもたちを連れて列に並ぶと、水とキャンディーが配られた。
「お暑いかと思いますが、あと十分お待ちください。夏も消えると書いて消夏するでしょう」
その寒いギャグで少し冷えた。
思いのほか早く順番が回ってきた。でもここしか出口は無さそうなのだが、裏から帰ったのか。そういうシステムかと思い入った。お客がいたとは信じられないほどきれいに陳列された食品。
「イートインもあります。お弁当も安くしております」
見て回ることにした。朝どれ海鮮丼二百円、卵十玉八十円、鶏胸肉グラム九十円。
「安いのか?」
安いってもんではない、恐ろしいほどに低価格だ。
「ママ、臭い」
確かに少し生臭い、スーパーを立ち上げるのが初めてなのかもしれない。どうせ投書箱があるだろうから書いておこう。だが、他のスーパーにはあってないものが何かある。レジだ。すぐにレジスペースはイートインになっているみたいだ。
変なスーパーだな。レジがバックヤード近くにあるとしてこの導線ではイートインまでの棚を通らないといけない。
万引き対策がなっていない。
「ママ、
息子の
サービスカウンターが無い。夫もいない。男二人して何をやっているのか、イートインもやはり客がいない。かなり不便だ。カートの上のかごに入っている肉と海鮮丼。いつ食べることが出来るのか。
「スーパーボディーにご来店下さり誠にありがとうございます。当店はあと十分でレジへとご誘導させていただきます」
やはり入れ替え制か。ではなぜイートインコーナーを?
また戻すのか。お母さんに必要な物を聞こう。そう思って電話をした発信音は鳴ったが、通話にならない。
お母さん、トイレかしら。
最低限な物を買って、みんなが集合しているバックヤードに行くような扉の前に来た。驚くほどに女性ばかりだった。
「当店のレジは自動計算式レジでございます。整理券をお取りください。順番にお呼びいたします」
「ねぇ、ママ。陶くんもパパもいないよ」
「すぐに合流出来るわよ。一番だって、すぐに呼ばれるわよ」
扉の向こうにはきれいなレジが五台ほど、さすが新築。商品は取り上げられたが、密を避ける為、袋詰めした後返されるとのことだ。
「このご時勢ですので、貴重品を外して、この消毒器にお入りください。商品をすぐにお返しします」
消毒器は縦型のカプセルホテルのような透明の
上から消毒液が入ってきた。服の上から
『これより最終洗浄を行います。これより最終洗浄を行います』
最終洗浄? 上から水が滝のように落ちてきた。これはおかしいと娘の方を見ると娘は泡を出して手足をバタバタと動かしている。
私はどうにかしようとして筒を叩くもびくともしない。
私の首まで水が上がってきた。どうして、どうしてこんな事に。顔を上げて隣を見ても娘は浮いていて、意識が戻る気配が無い。
今日、来なければ良かった。水を飲み。意識が無くなるまで何で、が消えることは無かった。
「二月十四日新装開店。濃いお客様もお待ちしております。ニンニクやニラはいりません。皆さんの臭いは消火出来ません。残さずきれいに食べきれます」
「消火ってなんじゃこりゃ、普通は食べきれないくらい商品があるものだろ」
「一人分の弁当がちょうどいいって事なんじゃないの?」
「近くだし、行ってみるか」
ニンニクやニラはいりません。皆さんの消化は出来ません。皆さんをきれいに食べきれます。
大型安売りスーパー・ボディー ハナビシトモエ @sikasann
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