届かないから。

第41話 充電だから。

 海里side


「らいくん、あのさ──」


 僕がずっと、らいくんに会いたかったこと。


 お願い、聞いてくれるんだよね?


 らいくん、上目遣い弱いのに、なんでこんな時だけ渋るの?


 僕は、かわいくないの?


「僕にかわいいって言って?」


 やっと、言えたのに。


ーー


 最近、らいくんの様子がおかしくなった、、というより、僕に対して過保護になってきた。


 何があったの? ってくらいに快凪くんを警戒しているような気もするし、僕に誰かが近づくだけで、その人を睨む。


 二人が喧嘩したのかな? って思っているけど、何か違うような気もして。


 そう考えつつも、僕はらいくんに駆け寄った。


 今はクラスに二人きり。


「らいくんっ! 今日から流架くんが僕の家に泊まるから、三人で帰ろっ!」


「ん。あっ、その前に充電させて」


 らいくんがそう言いながら僕の体をらいくんの大きな体で包む。


 らいくんの暖かい胸に、僕は顔をスリスリさせた。


 最近、恒例化しているこのぎゅーはなんなんだろ?


 僕は嬉しいからいいけどっ!


「おーい。お二人さーん? そろそろ帰りません?」


 流架くんの声が聞こえて、僕はらいくんから離れようとした。


 でも、らいくんは僕を抱き締める腕を強くした。


「ら、らいくん! 流架くんいるからぁ」


 僕は真っ赤になって反抗する。


「まだ、充電終わってないんだけど...」


「雷斗、後で俺がいないところでしてくれ、、非リアに恨みでもあるのかよ...」


 らいくんは拗ねながらも僕を離した。


 拗ねてるのがかわいい、って少し思っちゃったのはらいくんには内緒にしないとっ!


 でも、流架くんがいないときだと、誰も来ないって分かっているってことだから、らいくんが...。


 僕は昨日のらいくんの唇の感触を思い出して真っ赤になる。


「雷斗、そんなに海里見てたら海里の顔に穴、空くんじゃね? てか、もう帰ろーぜ」


「これくらいで空かねーだろ。あー、帰るか、、」


 僕の顔に穴は空かないんじゃ...。


「そ、そうだね! 帰ろ!」


 僕はらいくんの腕にしがみつきながら、ドアに向かった。


「雷斗、そんなに睨むなよ...」


 そんな流架くんのセリフは、らいくんにおもいっきりスルーされていた。


ーー


「海里? お風呂入っていーよ」


「ありがと~! 入ってくるね」


 流架くんが洗面所から出てきて、僕は洗面所に向かう。


 流架くんは僕の家にたくさん来ているから慣れてるなー。


 そんなことを思い、笑みをこぼす。


──あっ、まだアザあるんだ...。


 流架くんの、早く終わればいいのに。

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一本線のいけないこと。 Asahi-Yuhi @asahi_yuhi

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