エピローグ
来るもの全てを破壊しつくした私は今、駅前にある公園のベンチで一人ポッキンアイスを貪っています。
味は一つしかありませんが、アイス代がゼロ円になる事を考えれば、ありがたいことこの上ありません。
でも、ソーダばかりだと飽きてしまいます。
あの日からちょうど一年が経ちました。
大々的に報道されたニュースは世間をとても騒がせたことです。
何もない空間から人がたくさん出てきた。
戸籍は無く、出身地も不明。
だが、日本語を話す。
まったくもって不思議な事です。
当事者の一人として対応に追われていた役所の方々へ、申し訳ない気持ちを感じる一方、逮捕されて全員死刑! などとならないのは嬉しいです。
もし、そんなことが起きでもしたら逆に「クスっ」と笑ってしまいそうです。
あぁ、やはり一番うれしいのは体育の成績が上がったことでしょうか。
いや、それよりもうれしいことがあります。
新しいお友達ができたことです。
丁度駅の方から走ってきている女の子がいます。
「ごめん、お待たせクリシェ!」そう言って隣に飛び込んできました。
「……ですから、私はクリシェと言う名前ではなく」
「じゃあ何なの?」
「私の名前は――ですよ」
「でもクリシェはクリシェじゃない?」
そう言って彼女は足を「バタバタ」としています。
「頭でっかちとはこのことです! そうです! 早くいきましょう! 映画が始まってしまいます!」
「そういえば映画何見るか聞いてない」
「言っていませんでした。題名は……」
私達はベンチから立ち上がります。
ポッキンアイスを強く握りしめました。
アイスの世界でアイスをふる トリスバリーヌオ @oobayasiutimata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます