その6 ごめんなさい。
屋根裏部屋の天窓から、1人で空を眺めている。
もう、帰れないんだよなあ...。
犯罪に巻き込まれ、命を脅かされる恐怖体験なんて、一生に一度さえ無いと思っていた。
それ以前に、異世界に転移する事がありえないんだけど...。
この世界に来て、自分にできる事を精一杯やった時、いつも...あなたがくれたモノが役に立ちました。
宿泊業のノウハウ、それに、今日の...。
私は、愛されていた。
そして今も、愛されている。
イケちゃんは、無条件で私を好きで居てくれる。
そして与えてくれる、色んなモノを。
きっとあなたもそうだった...でも、私にはわからなかった。
私には、見えてないモノがたくさんあった。
イケちゃんはお金持ち。
あなたはそうじゃなかった。
だから、人一倍頑張らなければいけなかった。
自分、従業員、親、そして私...全てを助けるために。
その中で私が、足を引っ張った...。
何が悪いかさえ、わからずに...。
ガキだった...あまりにも...。
うっ...ううっ...。
私は人生で初めて、感謝の涙を流した。
「ありがとう」と言いたい。
「ごめんなさい」と伝えたい。
でももう、それはできない。
今、私は、他の人に真っ直ぐ愛されています。
だから、その愛に、私も同じエネルギーでお返ししたいと思っています。
その気持ち、その方法、その力は、あなたが与えてくれました。
ありがとう。
そして...
さようなら。
ああ、あっちの世界でも、私にヨメる力があったなら...あなたを支えてあげられたと思います。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい...。
....
イケ:「五段盛りパクチーサンド一緒に食べよう!」
屋根裏部屋に続く梯子の下から、私を呼ぶ夫の声がした。
この涙と鼻水は、絶対に見せられないね。
YOMELU! 砺波ユウ @Yuu_Tonami-2022
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