第7話
□□□
はい、正気に戻った私です。
いやぁ、まぁ、言い訳したいんだけどもね?それでも、ちょっとファーストちゅーを奪われただけであそこまで精神がおかしくなるとは思いもしなかったよね。
廃人みたいに文字の羅列しか頭に浮かばなかった状態でも一応あの初ちゅーはあくまでも小動物に対する母性やらなにやらをぶつけるための行動であってノエルさんにも大した意味があってやったわけではないと理解はしていたんですよ。
もう少し、愛玩動物としての猫という自覚を持つべきだったよね。そうでもなきゃこれから一体何回気絶やら狂騒やらをしなければならないのよ、ってね?
でもね?童貞(少女(猫))の私には刺激が強すぎたのよ。
なに?あの暴力的なまでに柔らかさとほのかに伝わる体温のぬくもりは。
えっちすぎる……
童貞にはえっちすぎた。
確かにさ?私もここ数日間でメアリーちゃんのお胸をふみふみしたり色々ペットであることにかこつけてセクハラしたけどさぁ……
あくまでも自主的に、ついでに覚悟があったから楽しめた訳じゃん。
あんな不意打ちをするのは、もうっ、卑怯すぎる!
誰か私の代わりになってみろ!
百戦錬磨のイケイケボーイまたはガールだって昏倒するわ!!
私が馬鹿にされる筋合いは無い!
決して無いのだ!!
まぁ、誰かに泣いて懇願されたとしてもこのシチュエーションは絶対に誰にも譲ったりしないけどな!
ガハハハハッッ!!!
□□□
はい、ちょっと冷静さを失いましたけど今度こそ正気になった私です。
現在メアリーちゃん一向は一昨日まで滞在していたポポルの街から見て南西の山道を登っています。
というのも冒険者組合で受けた依頼のために山の向かい側の中腹にあるという小さな村に向かっている最中なのである。
そしてこの一向はいつにもなく雰囲気が陽の気配で満ち溢れている。
というかメアリーちゃんが一人で陽オーラを出しまくっている。
その原因は……
「それでそれでっ!?どうしたんですか!?」
「……別に普通。ゴーレムの出すビームを避けてそのまま凍り付けただけ」
「その魔剣でですよね!」
「うん」
「本当にすごいですよ!良いなぁ……私もそんな冒険してみたいです!」
「そう……」
メアリーちゃんが楽しそうに飽きることなくある人物に話を聞き続けている。
その人物はきらめくような長髪をなびかせ、それと調和する美しい白銀の鎧を纒い、氷細工の薔薇のような印象を見ている人に与えるが……私にはもうファーストキスを奪った残念美人の印象しかない人物。
そう、ノエルさんが同行しているからであった……
□□□
遡ること三日前。事は私が狂っていた時に起きたという。
その事を教えてくれたノーブル曰く。
「まずここから南西、一日の距離にある山の中腹にある小さな村の近くにゴブリンが塒を作ったという話が組合に持ち込まれEランク冒険者のチームが討伐に向かったそうです」
「しかし調査を進めたところ、特E級の【ゴブリン"戦士"】や【ゴブリン"祈祷師"】などが数体確認されたため、そのEランク冒険者は自身達の手に負えないと判断し討伐を中断、組合への報告の為の一人以外は村の警護の為とどまって監視を続けているそうです」
「にゃ?」
「特E級などは特定危険個体の略称だそうです。実際は変異個体や特殊技能の持つ個体は確率的に生まれるため特定とは言い難いと思いますが、とにかく通常種と比較してより危険な個体のことをそう呼称するそうです」
「にゃー」
「報告を受けた組合の支部長であるファフニール殿が誰を討伐の為に送ろうか頭を悩ませていたところ私達がやってきた、ということだそうです」
「にゃーる」
「特E級の魔物は、種類によりますが、DからC級ほどの強さとして設定しているようです。そのため本来はEランクである私達には任せられないそうですが他の冒険者を帯同させることでその冒険者が主体として討伐依頼を受けた形にする、とのことです」
「にゃ?」
「同行するのはノエル・グレイブ殿。この街に来た時に通行料を肩代わりしてくださった方です」
「にゃっ!?」
□□□
……という事情があった。
ちなみにこれを聞いた私は混乱状態からようやく回復したところだったというのに記憶がフラッシュバックしまたぶっ倒れたけど、それはまぁ良い。
ただ私の心情よ。
もう、両手に花で嬉しいやら、あのキスで恥ずかしいやら、メアリーちゃんとノエルさんのてぇてぇが見れてぐへへって感じやら、ノエルさんが想像以上に人間に対してクール保ってて悲しいやら、でもそれはそれとして素っ気ない感じも解釈一致だなって納得するやら色々ごっちゃ混ぜになってんのよ。
特に見張りのために起きてたノエルさん以外が寝静まった時のあれは酷かった。
目を閉じると色んな感情とかが渦巻いてどうしても寝れなくて目だけ閉じて丸まってた時、突然ごそごそと何かが動く音がした。
その音源は誰かを起こさないように慎重に動き私の前で座った。
その後はじっーーーーーー、っと視線だけが私に向けられた。
この時点でどういうことか完全に察していたけど一応バレない程度の薄目を開けて見てみた。
当然、ノエルさんだった。
その綺麗な瞳の奥で何を考えているのか…………は何となく分かったけど……じっーー、っと見つめてくる。
私は微動だにしない。
相手も微動だにしない。
ピクッ、っと動いてみた。
ノエルさんもビクッ、ってなった。
あくびをしてみた。
ノエルさんがハッ、っとする。
ちょっとだけ気付かれる程度に目を開けてみる。
完全知らんぷりを決められた。
そのままもっかい寝るふりをしてみた。
またじっーーーーーーっと見られ始めた。
…………いや、どうしろっていうのさ!?
どうすれば良かったってのよ!?
なんかすごい気まずかったわ!
結局メアリーちゃんが夜番を交代するまでずっと見てきてたし!
ついでにメアリーちゃんが一人で見張りするのは寂しいだろうなぁと思ってしれっと膝の上に移動して寝ようとしたらノエルさん、とんでもなく恨めしそうな目で見てきてたし!
どうしろっていうのよ!?
童貞少女にそんな面倒くさげ女性の対応とか出来ないから!!
もう、ほんとに気まず過ぎる。
こんなに気まずいのは前世でお姉ちゃんの首元にキスマークを偶然見つけてしまったとき以来だわ。
こんなんで私は本当に正気なのか、だって?
正気じゃないわ、バカタレが!!
カァッーーーッッ、ペッッッ!!
ふぎゅっ……!?
「……にゃ?」
「あ、ごめんね、パール。…………あの?」
突然立ち止まったメアリーちゃんにぶつかった。
隣を見るとメアリーちゃんより数歩後ろの位置で諸悪の根源たるノエルさんも立ち止まっている。
「どうかしたんですか?」
「……うん、お手並み拝見」
「え?」
「にゃ?」
「グギギッ……」
あ?
草むらから出てきたのは緑色の皮膚、ニンゲン風の形状をした生き物。
ゴブリンだ。
そう、ゴブリンだ。
見た目だけで人に嫌悪感を催させ、女性を食い物にし、やたらと十八禁の創作物で姿を見せる、あのゴブリンである。
言うまでもなく、百合を愛し、百合に愛される猫である私はこのゴミクズ共が吐き気を催すほどに嫌っている。
そして現在私は中々に機嫌が良くない。
つまり。
「ニャァァッッッ!!!」
「あっ、ちょっ、パール!!?」
こいつを生かしておく理由が一つもないんだよねぇ!!!
うらぁぁっっ!!!くたばりやがれぇッッ!!!
最強種に転生したら超絶美少女にテイムされました 森野熊次郎 @KUMAGIRO23
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。最強種に転生したら超絶美少女にテイムされましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます