第6話
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「まず、冒険者組合は魔物の討伐に加え、ダンジョンや未開拓地の調査、攻略、と二つの性質を持った組織です」
「成立はおよそ九百年前。勇者様による魔王討伐後に発生した魔物の暴走災害における民間人の互助組織が元となっており、互助組織の中心人物であったゼラニウム・ラードーン様が災害終結後に『未来の人々の平穏の為に』とそれまで市井からの少ない寄付でなんとか成り立たせていた状態から自分が居なくなっても正しく機能するよう財政状態を整えたものが現在の冒険者組合となっています」
「その成立ゆえに冒険者組合の主な務めは魔物の討伐。ダンジョン、未開拓地の攻略はその魔物討伐のスペシャリストたる冒険者に国が委託したという形の二次的な職務となります。まぁ、どちらも重要なことに変わりはありませんが」
「とにかく、それら二つが冒険者の仕事となります」
「魔物討伐の依頼は国や街、村などから出されることもあれば個人から出されることもありますが、基本的に依頼者から依頼料を組合が受け取り、その二割を仲介料として天引きして、残りの八割を報酬として依頼を達成した方に渡す、という仕組みは同じです」
「魔物の脅威度が上がるにつれ依頼料は比例して高くなるのですが、ここで問題となるのが依頼料を払えない方の場合です」
「当然ながら都市から離れた村は自給自足で貨幣を持たない場合も少なくなく、組合に依頼を持ってきても基準の最低料金も払えないことがあります」
「この場合依頼が国などの機関に届けられ、そこで騎士団や警護団が自身で問題を解決する、または国が代わりに組合に依頼をすることになります。ちなみにどちらも為されなかった場合は組合が緊急依頼として組合員にお願いをする、という形になります」
「ただしこのような問題を少なくするために依頼の最低料金は可能な限り低く設定させています。そのため最低ランクの依頼、例えばE級の魔物【ゴブリン】の討伐などですが、それらは一回の報酬が一日三食で生きられるかどうか分からないくらいにはなります」
「そのため冒険者組合では魔物の素材の買い取りを行っています。素材の運搬の為のマジックバックを組合が無料で貸し出し、討伐依頼で倒した魔物を解体していただき、その素材を組合で買い取りさせていただきます。ちなみにですがマジックバックの貸し出しは無料ですがその際には魔物の素材は組合に優先的に卸すことを契約していただくことになっています」
「長々説明しましたが、要するに冒険者の基本的な収入源は依頼の報酬と魔物の素材買い取りの二つ、ということです」
「次に、依頼受注の仕組みについてです」
「まず魔物の脅威度はA~F、最上位のS、と七段階に分けられ、そこからS~EではS+、S、S-のように更に三つの段階で分けられます」
「Fはほぼ無害な魔物。Eは装備を整えた二十代前後の男性で対処可能な程度の魔物。Dは騎士などの職業軍人一人で対処可能な魔物。Cは一個分隊、Bは一個小隊で対処可能な魔物。Aは中隊で対処可能。Sは大隊でも対処出来るか怪しいほどの強さの魔物です。まぁ、言葉だけでは実感が湧かないでしょうけど、こうして定められています」
「当然のことですが討伐依頼の報酬は依頼の魔物の脅威度に応じて高くなります。そしてそれ故に身の丈を知らず自分の実力より格段上の魔物を討伐しようとする方も少なくありません。その為に作られたのが冒険者のランク制度です」
「組合に加入した方は必ず最初はEランクから始まりD、C、B、A、Sと、依頼の達成率と昇給試験で実力を認められれば順に昇給していきます。そして自身のランクと同じか、それ以下の脅威度の魔物の討伐依頼しか受注出来ないことになっています」
「注意事項はいくつかありますが、重要なことでまず一つ目はEランク冒険者の除名処分についてです」
「ご存じの通り、冒険者組合の組合員であることを示すカードは関所などで身分を保証するものとして機能します。これは冒険者組合発足以前から続く人々を守ってきたという実績と信頼の積み重ねによるものです」
「その為、組合員にはその信頼に足るだけの最低限の貢献を果たしていただきます」
「具体的には、Eランクの方は二週間に一つ以上の依頼達成。Dランクの方は月に一度、Dランクの依頼を達成しただくこと、となっています。これを達成出来なかった場合、組合からの除名処分となり、その後一年間組合に再加入することが出来なくなります」
「次にランクの降格処分についてです」
「これはどのランクの方にも適用されるのですが、その方のランクと同じ脅威度の魔物の討伐依頼を三回連続で失敗した場合は降格処分とさせていただいております。また降格した方は次に昇給試験を合格した際には、技能演習として何度か同じランクの冒険者の方と依頼をこなしていただくことにしています」
「最後に、冒険者の方が起こした街や街道への損壊、また事件、事故についてです」
「組合員の依頼の最中に起こした過失による器物損壊、例えば、そうですね……【ミノタウロス】を投げ飛ばした先に重要な壁画があり、それを破損した場合などですね、そういった場合は組合に責任が問われます。…………あの時は各所に謝罪するのが大変でしたが」
「まぁ、それはともかくとして。このように依頼に際する中での事故に関しては組合員に責任が問われることはありません。その一方で、故意の場合や依頼と無関係なところでの事件に関しては我々、冒険者組合は関知しません。昨日のいざこざでも分かる通りですね」
「以上で重要所の説明は終わりです。実際の依頼の受け方などは受付のポポル君に聞けば教えてくれますので。それで、今までの話で何かご質問はありますか?」
「その、【ミノタウロス】で壁画を壊したっていうのはいったい何が……?」
「あーー……。まぁ、話したこと以上でも以下でも無いのですが」
「組合本部の職員、というか幹部の人間は基本的に組合支部で対処不可能な依頼の監督、あるいは解決を任されるのですが、その一環としてダンジョンが発見、再発見された時に探掘を任されることもあります。今の私のようにですね」
「それで、ポポルの街から北西に馬車で三日ほどの距離にある街、トロントルで新しくダンジョンが発見されたときにも私が派遣されたのですが、その時の冒険者がとても癖のある方でして」
「それで派手に【ミノタウロス】を投げ飛ばし壁画を破壊したわけですが、まぁ、それ自体は良くあることなのでその時は気にしなかったのですが、探掘が終わり研究チームが入り始めた時にその破壊された壁画が使用されていた言語を読み解くために最も重要な部分であったことが分かり…………といった具合ですね。最終的には高名な再生魔術の魔術師に大金を払って修復してもらいました」
「何にせよ、あれは酷い思い出ですね。ただ唯一面白かったのは、組合の方で隠していた張本人を学者連中が探し当て非難しに行ってしまったことがあったのですが、何分その方が癖がありすぎまして、その人をどうして止められなかった、と本人を責めずに組合にそう非難してきたことですね」
「あはは……それはまた何とも……」
「えぇ。何とも言えないですよね」
「あはは……えぇ、っと……ノーブルは何か他に質問あったりする?」
「…………そうですね、後程、組合員の規約を詳しく教えてくださると助かります」
「分かりました。では規約書を用意させますね」
「よろしくお願いします」
「パールは…………やっぱり駄目か。朝からずっと起きてるのに気絶してるんですよ。どういうことなんだろう?」
「………………」
あやむてほをつのほわゆちてのつねのむえのにきのひとけのつおろみてのしとぬきとーるにてこてこひおてむこいねうこそひちめむのりんてのにこそひふそゆむめねのろひてきおねしやたはやまあかやにはらてこそにつむむとねはしつてののしとぬのにてけそはあまねなたまなりはたむねしくてめなりひつてのるなてむきてけほしせぬとおめへりなたつねやつあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ………………ぁぅ
「……【ケット・シー】は観測例が非常に少なく生態も謎に包まれていますから、こういうこともあるのでは?」
「そうなんですかね……?えーと、とりあえず、もう質問はない、かな?です」
「分かりました。では、これで正式にグローリア君もEランク冒険者です……といきたいのですがその前に少し」
「はい?」
「少しお願いがありまして」
「ノエル君と共にある依頼を受けて欲しいのですが」
「え?」
ほててねそつとをむてよんぬとれふなたむてけなゆいたてなむてなまにはしとめなかむえねらゎつほめはこなとゆくてゆそひむつのなえとめれ、んなとゆはょつけやつよゆのねほぬたえのほりむけたとにて
ヴァァアァァァァァァァァァァ…………グフッ
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