勇者の夢 第15話 目覚め

全てが終わり、王国のあちこちにはまだ火の手が残っている中で、勇者は無表情の瞳から一筋の涙を流して、仲間の亡骸を見つめていた。

すると突然、王国に雨が降り始めた。

雨は王国中の火の勢いを弱めた。

段々と火が消えて少し経った頃、近くの森からその時を待って居たかのように、大勢の魔物が王国に押し寄せて、戦後に転がっている人間や魔族、化け物の死体を食い荒らし始めた。

勇者は『シールド』でアラン達と自身だけを魔物に襲われないように包むと、彼らを食べようと『シールド』を囲んで無駄な攻撃する魔物達を無視して、その中で彼らの壊れた武器や別れた肉体を『  』で元通りに治し、『アイテムボックス』に1人1人丁寧に入れた後、ある場所へ『テレポート』した。


戦場から少し離れた場所に現れた勇者の『シールド』は割れて、雨に濡れながら見つめた先には、瓦礫に埋まっていた事で運良く魔族達に見つからずに、今にも息絶えそうな男女の2人が居て、勇者は『  』で気付いていた。

この王国で唯一生き残っている人間だった。

瓦礫で見えない2人だけを正確に『シールド』で包んだ勇者は目の前に『テレポート』させ、あの時のように『回復』、ではなくそれを超えた『  』を使用して2人を健康な状態へ戻した。

奇跡の魔法を何度も使った影響なのか、降っていた雨はいつの間にか止んでいて、雲間からは光が漏れて虹もかかっていた。

勇者は2人を『アイテムボックス』に入れて、魔物が集まる前に再び『テレポート』で自身の住みかへ移動した。


住みかへ戻った勇者は、『アイテムボックス』から5人の仲間を1人ずつ順番に土に埋めてお墓を作った。

『  』で仲間達の持っていた『アイテムボックス』から武器を取り出し、墓標として差し立てたり、立て掛けた。

5人全員のお墓を作り終えた勇者の前に、木漏れ日の中から女神が現れた。

女神「ありがとうございました。あなたが消えてしまう前に、願いがあるのか聞きに来ました。最後のチャンスです、何か願いはありますか?」

勇者「私の『アイテムボックス』の中に人間が生活できる環境を作って欲しい、そして私が持つ『アイテムボックス』のスキルを、中にいる人間にそのまま渡したい。」

女神「わかりました」

勇者の『アイテムボックス』内に楽園が作られ、そのスキルは勇者から2人に与えられた。

そして勇者はその場に倒れ込み、体は光となって崩れ始めた。

空を見上げながら最後に心の中で、今までで最も強く願った。

("過去の自分に、この記憶を送りたい")

そして勇者は消滅し、強大なエネルギーだけがその場に残った。

女神はそれを見届けた後そのエネルギーを取り込むと、勇者の"最後の願い"が女神の体に流れて女神の記憶の一部を写し取り、女神が持つ『未来視(非常時)』を通じて過去の自分と女神が干渉した時、この記憶は勇者へ流れ込んだ。




勇者は目覚めた。

私はこの世界に来てから何度もこの夢を見ているが、今でも目覚めた時には涙を流している。

そうしていると、魔王が同じベッドから起き上がり私を抱きしめてくれる。

私も魔王を抱き返して互いの右肩を少し濡らしながら安心する。



女神「勇者と魔王の予想外の行動で、設定した本来の目的を果たさないまま勝負が決着してしまいました。更に、どちらか1人は死ぬ予定だった所を2人共生き残った事で、2人との約束によって私の魔力は想定量の倍以上を消費させられ、計画もほぼ失敗。まぁ2人の分まで彼らの子に期待する事にしましょう。ついでに今回の裏目標も、その頃には再び必要になるでしょうし、今度は失敗した時のために代案も用意しておきましょうか…」

女神があなたに気付く。

女神「失礼、聞かれていましたか。ですが、彼らに何も伝える事のできないあなたなら問題は無いでしょう。これ以上聞かれるのも面倒ですので切りますね?それではまたいつかお会いしましょう。」


---END---

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デメリットだらけの魔術世界[日記] グリムるろーニキ @gurimururoniki

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