第三話 ━ラダ━

***



「っと…」

立ち止まる。

「道知らないなあ…」

きょろきょろと見回すも、あたり一面草原。

「仕方ないな…もどって…」

そのとき…

(気配…いや殺気⁉)

飛び退きつつ振り向く。


これオークってやつかな。

倒すべきなのだろうか…


気配の察知をより敏感にする。

「誰か追われてる?」

走ってその方向に向かう彼女は、

レティファのことなど完全に頭から抜け落ちていた。



***



やっぱり人が追われてるね。

大丈夫か…?


前の世界でできるようになっていた『注視』を使い、

詳しく、それも草の一本一本まで見る。

(明らかにエルルブラグの格好じゃない…異国者?)


瞬間、その女性が飛び上がり回し蹴りを食らわせた。

オークが吹っ飛ぶ。

(おお、拳法かな?)

いいね、そういうの嫌いじゃない。


跳び、腹をどつき破った。

塵微塵となって消える。


「すげー…」



***



「で、そこにいるのは何者あるか?」

この距離から感知された。

隠してないとはいえ…

「返事がない、つまり友好的意思はないってことね…」

ああ、忘れてた。


歩き出ていく。

「どうも」

「初めましてある」

うおっ、かわいい。

「わたしはラダ。なぜあんたこんなところにいるある?」

「ウクラムザスに行こうと思ってて…」

彼女の顔つきが一気に厳しくなる。

「やめといた方がいいあるよ」

「なぜ?」

「いまあそこは本当にやばいある。

 さっき倒したのはオークだけどあの街には上位種のキングが4,5体いるある

 このラダちゃんでも勝てないね」

オークキング?

異世界にはそんなのもいるんだなあ。

「レティファって人知ってる?」

「エルルブラグ第三王女の?」

「そうそう」

有名なんだなあ。

「彼女はウクラムザスで協会を築き人々を守ってるあるよ

 英雄の魔術師ね」

かっこいいなぁ…

「あなたはここに何しに来たの?」

「ダンジョン攻略ある」

ダンジョンかあ。

なんとか階層とかに分かれててクリアするとレアアイテムとかもらえるやつだよね?

たぶん。

「ついていってもいい?」

「だめある、子供が来るようなところじゃないね」

ちぇ、だめだったかぁ。


考え込む。


「尾けるか」



***



『気配消去』!

おそらくこれで気付かれはしないはず。

そろりそろりとついていく。


ここか。

意外と入り口は大きいんだね。

ラダのあとに続いて降りていく。


開けた空間に出た。

思ってたタイプのダンジョンと違って、一つ一つ迷路になってるみたい。


突然ラダが構え、拳に力を溜める。

「へあっ!」

ガラガラ、と音を立てて壁が崩れる。

この力も魔力が関係しているのか?

とはいえ、流石にダンジョンの壁を崩すのはやりすぎだと思う…



見ててわかったことは、

このダンジョンには主にオークとチェストに化けてるミミックがいて、

ラダからしたらあまり強くないということ。

チェストは何個も存在すること。

ダンジョンの壁は決して脆くはないこと。


あのパワーは呼吸に由来していると思う。

『気』、とか言うタイプのやつなんだろうか。

何はともあれ面白そうだ。


「はっ!」

ヒビが入る。

「割れない…?」

彼女自身も困惑しているようだ。

分厚そうだね。

2,3回やってやっと崩れたが…

「…っ!」

どうしたどうした?


あー…

そりゃあ驚くわ。


オークキングが3体だもの。



***



顎を蹴り上げる。

よろめき、一体は倒れた。

あと二体、絶望的状況。

傷もかなり負っている。


「やめておけ、勝てるわけがないのだ」

オークが口を開いた⁉

オークって喋れたっけ。

ラダもまずいと感じているようだ。

ゆっくりと後退している…

「逃がすわけがないだろう」

壁が閉じた。

オークが飛びかかった。

上段回し蹴りを叩き込むも、二人目に吹き飛ばされる。

「がッ…」

壁に衝突した。

血を吐き、崩れ落ちる。

瞬、壁を蹴り飛びかかる。

猛烈な連撃。

目にも止まらぬ速さで打ち続ける。

一人は粉微塵になったものの、疲労がかなり溜まってきているようだ。

「愚かさよ」

振り向くとそこには最後のオークキング。

「あれは質量を持つただの幻覚だ。

 いわば我のコピー」

指先に魔力が集められる。

「貴様は我に勝てない」

━━━━土狼餓牙━━━━

土の針が向かうが━━━━

間一髪避けた。



「助っ人が必要そう?」

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