第二話 ━センナロクじゃなくてウクラムザスへ━
***
「ちょっと…ノア…」
「何」
「酔った」
「えぇ⁉」
「吐きそう…」
服にゲロ撒かれたくないな…
ぴたっと止まる。
「一旦休もう」
***
あたりを見回す。
周りは一面草原で、本当文字通り何もない。
都会住みとしちゃ珍しい光景だ。
「大丈夫?」
「あぁ…ありがとう」
ペットボトルの中の水を飲み干す。
「センナロク王国まであとどのくらい?」
「待ってよ」
ロディはポケットからイヤホンのようなものを取り出すと、耳に装着した。
「wednesdayを起動」
『了解いたしました』
「続いて座標を特定」
『了解いたしました』
「〜〜〜、〜〜〜〜」
『〜〜〜〜〜〜。』
AIを開発してるってほんとだったんだ…
「あと王都まで2000kmほどだってよ、広すぎだろこの国…」
「遅めに走って5分ってとこかな」
「やめてくれ…」
かなりトラウマなようだ。
「どうすんの?これから」
「ᛏᛁᚴᚪᚾᛟᛏᚢᛏᛁᚤᚪᛁᛋᛁᚥᛟᚥᚪᚵᚪᛏᛖᚾᛁᛟᛋᚪᛗᛖᚴᚢᚢᚴᚪᚾᚥᛟᛏᚢᚴᚢᚱᛖ」
手に次々と土や石が吸収されていく。
「ᛁᛗᚪᛁᛏᛁᛞᛟᚥᚪᚵᚪᛋᚺᚢᚳᚺᚢᚢᚾᛟᛗᛟᚾᛟᚥᛟᛞᚪᛁᛏᛁᚾᛁᚴᚪᛖᛋᛖ」
家かぁ。
リアル駅から3年築5分じゃん。
さすが魔法使いといったところかな。
「入ろうか」
***
「で、あの人達は何なの?」
ソファに寝転びながら答えた。
「王家直属の特殊部隊だよ」
ロディ曰く、自分は王位継承に全く興味がないのにしつこく追い回してきて
今は隠れているが何をしてもすぐ見つかる、ということだ。
「魔法でなんとかなんないの?」
「なんねえんだよなあ、それが」
一つ大きなため息。
「一応この家にだって意識阻害の術式を書けてはいるんだけどなあ…
やつら全員”勇者のなりそこない”だからすぐ見破ってきちまう」
「勇者のなりそこない?」
「召喚されたはいいものの英雄にはなれなかったヤツのことだよ。
功績がなくたって宮廷魔道士なみの力があんだから工夫すりゃそこらの国軍より大分強い」
魔法…か…
「ねえロディ、ちょっと」
「ん?」
「魔法のこと教えてくれない?」
***
「教えるなら姉さんのほうがいいと思うよ」
「第三王女?」
「そう」
ソファからやっと起き上がる。
「名はレティファ。
俺より年が3つ上で、俺と同じく逃走者。
異国で魔術のセンセイやってる」
「異国って?」
「ウクラムザスってとこだ。
ここからじゃ人間の足なら半年はかかるがな」
「どっち?」
「あっちだけど…」
「OK」
パリ…と電気が弾けるような音。
「…今から行く気か⁉待てっt」
「go」
光が風を掻き立てる。
「聞いてないし行っちゃったし…」
「あそこ若干スラムなんだよなあ…」
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