第一話 ━ロディ、逃走━
***
「あんた誰だ?」
「えーっと…おろしてからにしてくれるかな?」
「ああすまない、逆さまだったな」
くるっと180度回転し、地面にふわっと着地する。
「自己紹介が遅れたな。
俺はロディ、ここエルルブラグ共和国の第4王子だ」
日本じゃない?
だったら英名を名乗るべき、えーっと…
「私はノア」
「ノアか、あまり聞かない名前だな」
「元々別の世界にいたから」
「へー、その割に勇者枠じゃないんだな」
「勇者?」
「宮廷魔道士が集まって異世界人を召喚するんだよ、
ちなみに俺もたまにやる」
「なんで?」
「魔力量が異常に多いんだとかでさ。
普段は魔力を燃焼し続けることで隠してるんだ。」
「私には魔力はどのくらいあるの?」
「一応宮廷魔道士くらいあるな、
転移者は移ってくるときに体に魔力を大量に取り込むから」
「ふーん…」
「俺の魔術は微妙に常人と違って『結晶化』って能力なんだ。
あんたのは雷だがな」
雷…
雷かぁ…
「立ち話も何だ、家にこいよ」
***
「あんたは前の世界で何してたんだ?」
「ヒーロー」
「ヒーローか!そりゃかっこいいな」
「あなたは?」
「ロディだ」
「ロディは?」
「AIの制作をしてる」
「最先端技術じゃない」
「Ultimas、異世界語で『最新』って意味だそうだ」
「スペインかねえ…」
出された紅茶を口に近づける。
ゴロゴロと雷が鳴り響く。
「不穏だな」
「外晴れてるのに…」
バン!と音がしてドアが蹴破られる。
「やべ、バレたか?」
「えぇ?」
「ノア、おまえは走って逃げてろ」
展開される魔法陣。
「一瞬とめてあとで行く」
ᚥᚪᚵᚪᛖᚱᚢᚱᚢᛒᚢᚱᚪᚵᚢᚾᛟᚾᚪᚾᛁᛟᚴᛁᚥᚪᚱᛖᚾᛁᛏᛁᚴᚪᚱᚪᚥᛟᚪᛏᚪᛖᛏᛖᚴᛁᚥᛟᛁᚥᚪᛞᛖᚴᚪᛏᚪᛗᛖᚤᛟ
━━━━
敵が瞬時に岩で固められる。
「大丈夫そう?」
「ノア⁉お前は逃げてろって━━━━」
「私ね」
靴紐を結ぶ。
「速さには自信あるよ」
呼吸を整える。
体に力がみなぎる感触。
まもなく光をまとって━━━━
「go」
ロディを抱きかかえ、一瞬で外へと飛び出た。
「なんで追われてるの?」
「エルルブラグの王位継承権を破棄して逃走したからだ」
「どこまでいく?」
「そうだな、まずは━━━━」
「隣国のセンナロク王国へ!」
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