◆設定集: モンスター紹介(第二部・中)

 名前の表記は◆ 異世界語での呼称 /直訳気味な地球語名(シェガロ命名) ◆です。


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◆ ヘゴワー /ゴブリン(ザコオニ) ◆


 特徴:

 身長一メートル前後。体格は意外に細マッチョ。枯れ葉のような薄緑がかった茶褐色の肌。

 骨や石で作った素朴なアクセサリ、獣皮の腰布などを身に着ける。全体的に薄汚れていて臭い。

 先端の尖った大きな耳。不気味に赤く光る目。歯はすべて犬歯っぽい鋭さ。

 頭髪は一本もなく、禿げ上がった額の左右にそれぞれ短く伸びる二本の角を持つ。


 主な能力:

 そこそこ知能が高く、手先が器用。目と耳も良い。

 簡素な弓矢や打製石器などで武装する。特に好んで多用するのは仕掛け罠ブービートラップ

 オオカミやハイエナなどの野獣を使役することもある。


 解説:

 ほとんど世界中どこででも見掛け、人里近くに出没することも珍しくはない下級モンスター。

 主に、荒地や森林で群れを成し、獣と人の区別無く襲い、しばしば人間の女子おんなこどもをさらう。

 性質はとにかく邪悪。加えて言えば、狡猾、下劣、不潔。基本的には夜行性で暗がりを好む。


 種族にはオスだけしか存在せず、体格の近い哺乳類ほにゅうるいのメスを利用して繁殖する。

 生まれる子はすべてザコオニであり、ほんの数ヶ月で成人してしまう繁殖力の高さを誇る。


 旅人や小さな村にとっては非常に危険なため、冒険者たちも優先的に駆除対象としている。

 一対一であれば一般人でも無傷の勝利を見込めるが、残虐で狡猾な性質、群れを形成する習性、武器や罠を用い、別種の野獣や魔物と連携すること……などを加味して下級と位置付けられる。


「人里にも平気で入ってきて家畜や農作物、道具なんかを盗んでいくんだ」

『か弱い村人をさらうは、ホント、ろくな連中じゃないな』

「さらった子どもはいたぶって遊べる非常食として飼うんだってさ。女の人は言うまでもなく」

『……もう絶滅させてしまっても構わないんじゃないか、この厄介者ども』


 登場回: 第二部 序幕 前編「子どもたちと小鬼」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16817330669266240281



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◆ ロブニュグォルマ /グレイトホーン(サバナぎゅう) ◆


 大草原サバナ全体で若干じゃっかん数が棲息せいそくしている、牛とヒツジを掛け合わせたような下級モンスター。

 体高二メートルを優に超す巨体を誇り、頭部には特徴的な大きく硬い巻き角を二本持つ。

 ヒツジに似た光沢のある白っぽい毛があまり長く伸びないのは残念なところ。

 草食性で人を襲うことはないものの、一度ひとたび暴れ出せば一般人の手には負えない。

 たった一頭でさえ、土塁やさく、掘っ立て小屋……など、すべてを容易たやすく破壊しながら突き進む。

 飼育は困難だが、部位を問わず、肉は非常に美味うまい。メスのミルクも絶品。


『こいつが定期的にれればなぁ』

「もしも家畜化できたら、絶対、うちの特産品になるんだけどね」


 登場回(言及のみ): 第二部 第一章 第十三話「開拓村の食事風景」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818023213014546439



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◆ モントリー /スパローディアトリマ(オオスズメ) ◆


 特徴:

 まるまる太ったスズメを思わせる姿形。ただし、体高二メートル近くもあり、脚は太くごつい。

 通常はスズメらしくぴょんぴょん飛び跳ねるホッピング歩行をする。荷運びや疾駆しっくする際には、ガッシガッシと某恐竜映画ジュラ紀みたいな公園に登場するラプトルっぽい足取りになる。


 主な能力:

 空を飛ぶことはできないが、気流を操る能力を持ち、翼を広げて相当な速度で地を駆ける。

 ふわふわとした羽毛の間には絶えず緩やかな風が流れ、エアコンのように熱を維持している。

 力も強く、突進から繰り出されるくちばしや蹴りの一撃は、樹の幹をへし折るほどの威力。


 解説:

 大草原サバナで少なからず目にする下級モンスター。

 雑食性で、主食は小さな昆虫やイネ科の雑穀など。他の生き物を襲うことは滅多にない。

 卵をかえし、ひなのうちから人と馴らすことで賢く忠実な従魔じゅうまとすることができる。

 頑丈で粗食に耐え、騎乗、運搬、戦闘……様々に役立つかなり優秀な家畜と言える。

 ただし、肉や卵は激マズで食用にだけは適さない。


 エルキル領でも三十羽ほどが飼育されており、騎羽きばとして大活躍している。


 ちなみに、他地域ではあまり一般的な騎獣ではなく、馬と比べて色物と見なされがちである。


「僕の愛羽あいばはイーソーって名前があるんだけど覚えてる?」

『ダンジョンには乗っていかなかったから、少し、影が薄くなってしまったな。今にして思えば連れていっても良かったかも知れない』

「もう雛ではないけど、まだ若い子だし、危ない場所には連れていきたくなかったんだよ」

『お前、少しオオスズメに甘くないか?』


 登場回: 第二部 第一章 第十九話「幼児、鳥を思う」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818023214269667467


※かごのぼっちさんから頂いたイラストがあります。イメージの一助にいかがでしょう?

 近況ノート: https://kakuyomu.jp/users/proetos/news/16818093074234977689



     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



◆ ビッキンソーヤ /ソーンウィップゲンリセア(百叩樹ひゃくたたき) ◆


 イバラに似たとげだらけの長いつるを何本もむちのように振り回す植物型の中級モンスター。

 見た目は、多数の根を動かして地上を歩き回る、高さ二メートルほどの樹木といったところ。

 枝や葉は付いておらず、替わりに前述の触手じみた細い蔓を幹全体から四方へ伸ばしている。

 一本だけ掃除機のホースを思わせる極太のくだを備えており、攻撃して弱らせた獲物を吸い込み、根元付近にある大きな袋の中で麻痺毒と溶解液を浴びせながらゆっくりと捕食していく。


 ダンジョンに限らず、大草原サバナでも稀に出現することがある要注意モンスターである。


『意外とえぐいモンスターだ』

「子どもだけで草原サバナに出ちゃいけないというのは大体こいつのせい」

『普通の草むらにまぎれていたりするんだよな』


 登場回: 第二部 第一章 第三十四話「あんなこんなモンスター」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818093075395696467



     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



◆ ヒュラターリー /ハーピィ(クサイドリ) ◆


 特徴:

 頭と首を含め、腰から上の胴体は人間の女。腰下は羽毛に覆われ、尻には扇状の尾羽を広げる。

 膝から下は鋭利なかぎ爪を備えた猛禽類もうきんるいの脚となっており、両肩からは腕の代わりにそれぞれ翼長一メートルはありそうな鳥の翼が生えている。

 女性部分は細身の美人と言って良く、鳥の部分は精悍せいかんさも漂う、均整の取れたシルエット。

 ……なのだが、全身余すことなく老廃物にまみれ、もはや、元の肌や羽根の色も分からぬほど。更には、残飯ざんぱんの腐肉、排泄物、泥や砂埃……ありとあらゆる汚穢おわいがこびりつく。

 え難い悪臭、下劣な性格がうかがえる表情なども相まって、ただただ醜悪しゅうあくの一言に尽きる。


 主な能力:

 飛行能力はそこそこ優れている。特に水平飛行時の最高速は誇れるレベル。

 高空から汚物や石を投げつけてきたり、耳障みみざわりな金切り声を浴びせてきたり。

 悪臭の凄まじさはちょっとした公害。目や鼻が弱ければ刺激によってダメージもありえる。

 蹴りのレベルが意外と高く、刃物と呼べるほど鋭いかぎ爪を空中より連続で繰り出してくる。


 解説:

 深い森の樹上や岩山の崖壁がいへきなどにしばしば小規模な群れを成す下級モンスター。

 その性質は、狡猾、下劣、不潔……と、空飛ぶ雌のザコオニといった印象を受ける。

 と言っても、邪悪さではまるで比較にならず、自分らよりも数が少なく弱そうな相手だけしか襲わないこともあって、脅威度は数段落ちるとされている。

 人里近くにみ着いた場合、悪臭や衛生的な問題を引き起こすため、駆除対象ではある。


 種族にはメスだけしか存在せず、体格の近い生き物のオスをさらってきて繁殖する。

 卵生であり、かえる子はすべて同種のクサイドリ。


 余談だが、生まれ育った環境で性格を大きく変化させることが知られている。

 通常はザコオニなど下劣なモンスターを父として育つため、同様の性質となってしまうものの、卵のときからクリーンルーム並みの清浄環境に置いておき、清らかな水、美しい音、かぐわしい匂い……などにだけ触れさせて育て上げれば、清楚可憐な美声の主として成長させることも可能。

 この個体はセイレーンと呼ばれ、育成難易度の尋常ならざる高さゆえ、モンスターマニア間で相当なステータスになっているとかいないとか。


「くっ、思い出すだけで鼻が曲がりそう」

『これからは見掛けたら即スチーム洗浄だな』

「あの森に水浴び場を作ってみたらどうかな? 自発的に身繕みづくろいしたりしないかな?」

『あっという間にドブ沼にされる未来しか浮かばないぞ』


 登場回: 第二部 第一章 第三十五話「怪鳥鳴けちょうなく木立こだちの中より」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818093075605632152


※こちらも、かごのぼっちさんから頂いたイラストがあります。二点! 別項とのツーショット。

 近況ノート: https://kakuyomu.jp/users/proetos/news/16818093078586904524

   〃  : https://kakuyomu.jp/users/proetos/news/16818093078587151443



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◆ バルティアク /ジャイアントツェツェ(ハエーハエ) ◆


 特徴:

 体長十二センチほどの巨大なハエ。体色は赤黒く、腹部には黄色いすじ模様を持つ。

 ただのハエではなく、様々な精神障害と睡眠障害を経て、最終的に死へと至る昏睡こんすいをもたらす眠り病の媒介主である吸血昆虫ツェツェバエをモデルとしている。


 主な能力:

 目にも止まらぬ高速飛行をもって獲物に噛みつく。吸血速度もサイズに見合って相当なもの。

 最大の武器は、口から吐き出す黄ばんだ色をした腐食性ガス【病毒の息ミアズマブレス】。

 その名称の通り、単純な腐食ダメージを与えるだけにとどまらず、においをいだ者の頭と身体からだを徐々に麻痺させていく、眠り病の症状に近しい病毒の追加効果をあわせ持つ。


 解説:

 腐敗した物や汚水が多く溜まった不浄の地に群れを成す昆虫型の中級モンスター。

 脅威度は非常に高いものの、まず人の生活圏に現れないことは救いと言える。

 虫除むしよけや火を駆使し、犠牲さえ覚悟すれば、一般人でもかろうじて撃退できなくはない。


『ハエやみたいな害虫の嫌らしさは小さいからこそだと思っていたが……』

「こいつらを見ると考えを改めるしかないよね」


 登場回: 第二部 第一章 第四十一話「たかられて宝出た沼畔しょうはん

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818093076675582020



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◆ パルマルフク /ジャイアントアノフェレス(デッカ) ◆


 特徴:

 体長十センチほどの巨大な。体色は枯草カーキ色、腹部だけは鮮血の赤。羽根には錆色さびいろ斑模様まだらもよう

 ただのではなく、地球において年間二億人もの罹患者りかんしゃを叩き出し、そのうち四十万人以上を死に至らしめる最凶の感染症マラリアの媒介主ハマダラカをモデルとしている。


 主な能力:

 高速かつ複雑な空中機動に加え、気配を消し、風景に溶け込む穏身おんしん能力をもって獲物へ忍び寄る。

 超速度で突き出される細長い口吻こうふん――禍々まがまがしい注射針は、ほんの一刺しで多量の血を吸い出す。

 同時に、高熱と貧血を伴うマラリアとよく似た諸症状を引き起こす病毒を一瞬で注入可能。


 解説:

 森の奥などにある、薄暗く、空気のよどんだ水辺に群れを成す昆虫型の中級モンスター。

 前項ハエーハエと同様、人の生活圏で見掛けることはほぼありえないだろう。

 ごく普通のツェツェバエとハマダラカだけで十分すぎるほどの脅威である一般人にとっては、こんなモンスターに襲われることなど想像したくもない悪夢である。


「とにかく攻撃が当たらない!」

『姿は見えず、耳障みみざわりなモスキート音ばかり聞こえてくる!』

「『うざすぎる!』」


 登場回: 第二部 第一章 第四十一話「たかられて宝出た沼畔しょうはん

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818093076675582020



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◆ イノベイトラヴァ /ブラッドアノマルルス(ノブスマ) ◆


 熱帯の深い原生林などで夜間、ごく稀に出現する中級モンスター。

 体長は五十センチほど、ムササビによく似た皮翼ひよくを持つ齧歯類げっしるいウロコオリスの姿をしている。

 血の如く赤い毛皮に包まれた胴体に対し、長い尻尾はびっしり鱗に覆われ、爬虫類はちゅうるいを思わせる。

 頭部はややコウモリっぽいが、顔の二倍に広がるヤツメウナギないしヒルのような口が衝撃的。


 あくまで滑空能力の範疇はんちゅうとは言え、空中での速度と機動性は相当なもの。

 風を操る能力を持つため、その動きは実質的に飛翔とほとんど変わらないレベルである。

 夜行性で音もなく宙を舞い、人や動物に飛び掛かっては牙を突き立て、生き血を吸い尽くす。

 奇襲を防いで戦闘になった場合、強力な風属性攻撃を仕掛けてくるため、脅威度はそれなり。


「あれ? 思ってたよりも小さなモンスターなんだ」

『確かに妙かな。こいつの皮膜だっていう赤マントは一メートル以上の長さがあったのにな』

「鳥のジャンボに燃やされて半分になっちゃったけどね」

『……もしかすると、あれはかなり貴重な品だったのでは?』

「そう言えば、焦げたマントを見たパパとジェルザさんが泣きそうな顔をしてたような」


 登場回(言及のみ): 第二部 第一章 第四十二話「希望、シュールでナンセンス」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818093076876199637

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