第三十五話: 怪鳥鳴、木立の中より
遠間には
高さ十数メートルほど、水平方向へ幹を広く伸ばし、大きな葉を茂らせたイチジクっぽい樹。
高さ十メートル近く、鋭い
そして、高さ
植物の種類には詳しくないのだが、そんなような樹木が数多く、辺り一帯に立ち並んでいる。
下草も非常に深く
熱帯雨林のジャングルには遠く及ばないにしても、十分に森と呼べる規模ではなかろうか。
「どれも外じゃ見掛けない樹だよね。実が
「いいや、後々を考えれば大きな収穫だぞ。果実が生るというのなら植樹を試してみたいものだ」
「こいつなんか、けっこう良い木材になりそうですぜ。村ン周りでも育ちますかね……」
一人、樹上に浮かび、一面に広がる緑葉の
風の精霊術によって音声をやり取りし、問題なく会話が成立してはいるものの、ここからでは密集した枝と葉――
はぐれたら困るな。周りの様子を確認したら、そろそろ降りていって合流した方が良さそうだ。
と、考えていたところで、下方の木々の中にいる何物かと……思いがけず目が合った。
「あたまさわって!」
『な! こ、こいつは!?』
「みんな、気を付けて! 樹の上に何か――」
――バサバサ! バサバサバサっ!
「ケヒャアアアッ!」
「うわあああ!」
その数、三体! 人間サイズの……肌色の……って、ちょっと待て! なんだこれ、
「どうした!? なにがあった、シェガロ!」
「落ち着け、旦那! 樹上に敵だ! まずい! こいつらはっ!」
「あたまさわって!」
「全員! 絶対にやるんじゃないよ! 分かってるね!?」
「「「「「へい、
そうして、
地上では、どうやらマティオロ氏を始めとする
キン! キン!という硬い物同士のぶつかる音が絶え間なく響き、時折、怒鳴り声が上がる。
だが、耳に入ってくるそうした慌ただしい通信音声に意識を向ける余裕は、
宙に浮かぶ僕の周囲を飛び回り、
――バッサバッサ! バササササァ!
「
臭い! とにかく臭い! と言うか、汚い! 尋常ではないほどに。
「ギャア! ギャア!」
「うるさい! 触るな! 近寄るな!」
足先に生えた長く鋭いかぎ爪で攻撃してくるクサイドリどもを、スコップで
爪の先には腐肉がこびりついており、引っかかれようものなら一発で
こいつらの姿は、全体的なシルエットとしては、大きな鳥そのものと言って良いだろう。
手はなく、両肩から腕のように伸びているのは、それぞれ一メートル以上もある翼だった。
腰から下は羽毛に覆われ、尻には扇状に広がる尾羽も生えている。
にも
しかも、体付きこそ
『いやいや、僕はこれをそんな風に形容したくはない! 断じて!』
その
ふるふると揺れる小振りな胸など、本来ならば思わず目を奪われてもおかしくなかろうに……。
『
「ぜんぜん嬉しくない! と言うか、臭いんだってば!」
不潔で下劣なその性はザコオニ並み……そう、言わば、こいつらは空飛ぶ雌のザコオニだ。
クサイドリは三羽揃って下方に陣取り、僕が降下して逃げられないよう行く手を
こちらが空中戦を苦手としていると一瞬で見抜かれたのか、意地の悪さもザコオニ並みか。
「
更には、絶え間ない波状攻撃と凄まじい悪臭を
「ケヒャア! ギャア! ギャア!」
『何してるんだ!? 早くまとめて叩き落としてしまえ!』
「わかってる……けど……うわっ!」
「シェガロ! 無事か!? ぬぅん、
「あたまさ――プヒ!」
「……ッチ! 旦那、ここは
参ったな。地上の方でも何やら苦労しているみたいだ。
ひょっとすると、これは少々面倒なことになるんじゃなかろうか?
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