第4回 作曲ってどうやるの? モーツァルト「トルコ行進曲」に学ぶ

 お世話になっております、朽木です。


 思いのほか多くの方がこのエッセイを読んでくださり、たいへん大きな励みになっております。


 今回は少し実践編というか、実際の楽曲を例にとり、「作曲ってこんなふうにやっているんだよ」ということを示せればと思います。


 あくまでひとつのやり方ということになりますので、念のため。


 また、参考にするナンバーは著作権の切れたクラシック音楽を使用してみたく思います。


 著作権の生きている楽曲も、歌詞の引用などをしないかぎりは大丈夫だと思いますので、将来的に考えてみます。


 では、さっそくやってみましょう。


 引き合いに出すのは


ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲


ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331


の第3楽章、いわゆる「トルコ行進曲」になります。


 歴史的に当時、トルコの文化が流行していたので、当代の作曲家たちはこぞってトルコの軍楽隊の音楽を取り入れています。


 ベートーヴェンもやはり「トルコ行進曲」を作曲していますし、ハイドンの交響曲第100番「軍隊」にも影響を与えていたりします。


 なぜモーツァルトの「トルコ行進曲」を選んだかというと、やはり有名な楽曲であるというのがありますし、古典派時代の音楽であれば比較的に説明がしやすいだろうと判断したからです。


 おそらく誰でも耳にしたことがあるであろうというのは、大きな強みになりそうです。


 YouTubeのリンクを下に添付しますので、よろしければご一聴ください。


https://www.youtube.com/watch?v=GaFGsEV2prM


 わたしにとってこのナンバーの初体験となったポルトガルのピアニスト、マリア・ジョアン・ピレシュさんの演奏になります。


 先ごろ引退されたのが惜しまれるところですね。


 音源は公式のものだと思いますが、もし違っていたらご教示いただけると幸いです。


 このソナタはイ長調と表記されているとおり、全体がイ長調のスケールをメインとして書かれております。


 当然、途中で転調を繰り返したりもしますし、肝心の「トルコ行進曲」の第1主題はイ短調で書かれています。


 また、第2楽章ではニ長調のスケールも顔を出します。


 これは追って触れたいと思っているのですが、スケールの中にコードがあるように、異なるスケールにも親和性の遠近があるのですね。


 イ短調やニ長調はイ長調に近い調くらいに、ここでは思っていただけると幸いです。


 まずは最初の伴奏の部分に着目すると、なるほど、第1主題のスケールであるイ短調のコード(ラ・ド・ミ)を崩して作られているのですね。


 これは実に興味深いことです。


 低音部はヘ音記号になっており、五線譜上でいうと「ヘ」の形の記号の、タテに並ぶ二つの点々にはさまれる線が「ヘ」の音、つまり「F」「ファ」になっております。


 そもそもルート音である「ラ」は「A」「イ」の音ですから、なんだか納得がいってしまいます。


 さらに小節単位で見てみると、はじめの一音がすべてイ短調のコードのどれかになっていることに気がつきます。


 30年近くクラシックを聴いてきて、こんな仕組みになっていたことをいま知り、ちょっぴり恥ずかしくもあります。


 第2主題はイ長調で書かれており、中間部は「遠隔転調」と呼ばれる手法が使用されています。


 ある調から異なる調まで、じわじわと転調していくというやり方になります。


 特に「転調魔」とも呼ばれるシューベルトが、この方法を得意としています。


 最後に第2主題のイ長調に戻るところがグッときますね。


 長々と楽曲の解説(らしきもの)をしてきましたが、このエッセイの主旨である「作曲のやり方」という点に着目すると、このようにまず「スケールを選ぶ」ことが挙げられます。


 明るい曲を作りたいのなら長調(メジャーコード)、暗い曲を作りたいのなら短調(マイナーコード)とざっくり把握するだけでもまるで違うでしょう。


 メインにしたいスケールに属するスケールを覚えておくとさらに良いかと思います。


 まだまだ勉強不足であり、内容があいまいなところも多いですが、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。


 次回以降はスケールについて、もっと掘り下げていければと考えています。


 なるべくおかたくならないよう、今回のように楽曲の例もどんどん出していければと思います。


 それでは今回はここで失礼いたします。


 ではでは。

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音楽ジャンキー、音楽の勉強をする 朽木桜斎 @Ohsai_Kuchiki

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