第82話 悪夢のクリスマス Ⅱ
――12月24日、秋葉原。
秋葉原ダンジョン管理支局内ではマニュアルにのっとり、各種対応に追われていた。
「防衛隔壁、全て起動を確認! これで避難の時間が稼げます!」
「ダンジョン環境省より入電! ブレイクエリア内へ対ダンジョン特自部隊が派遣されるとの事です!」
「秋葉原警察署及び各派出所、ブレイクエリア外への避難誘導を開始!」
「日本ランカーのアカネ氏と連絡が取れました! クランの方々と一緒に対応へ向かうそうです!」
「各探索者クランも協力して討伐及び避難誘導に当たるとの事です!」
各セクションからの伝達を聞きながら、支局長である近藤は秋葉原の地図を凝視していた。
その地図には秋葉原に存在する全てのダンジョンの入口が記載されており、そのうちの十五箇所に丸が描かれていた。
丸印は蟻巣ダンジョンへ通じる入口であり、大量のモンスターが吐き出されるであろう出口であった。
「くそ……! よりにもよってクリスマスとはな……! だがアカネ氏がいるというのは心強い。問題はどこから奴等が現れるかだ」
世界ランクとは別に日本国内において、多くの功績を残し戦闘能力や探索能力に秀でた探索者の中で100人がランカーとして登録される。
その内の一人であるアカネ、日本トップクラスの実力を持つ彼女は、約50名の探索者で構成されたクラン【アニマルズ】のリーダーでもあった。
そして秋葉原には20を超えるクランが存在しており、それぞれが行政と連携し、今回のDBBに対応していた。
「ダンジョン内の監視カメラはどうなっている! カメラの捕らえた箇所からモンスターのルートを割り出せ!」
近藤が吠えた。
「今やってます! ですがカメラの数が多すぎて!」
「そんなの当たり前だ! 言い訳はいいからさっさと手を動かせ!」
近藤は、フロアに鳴り続ける電話の呼び出し音を掻き消すような大声で部下を叱咤する。
第一波がどの入口から出てくるのかが分かれば、探索者達へ伝達出来る。
モンスターの動向が分かれば対ダンジョンモンスター用兵器の使用もスムーズとなる。
しかし問題なのが――。
「局長! やばいです! ブレイクエリアがどんどん拡大していってます!」
「蟻巣ダンジョンの入口は秋葉原の端から端まで十五箇所あるんだ! 予想の範囲内だろう!」
「しかしこのままでは秋葉原の街どころか、台東区や墨田区、文京区や中央区までブレイクエリアに入ってしまいます!」
「予想の範囲内だと言っている! 緊急マニュアルを読んでいないのか貴様! 泣き言を言っている暇があるなら各支局に連絡を取り協力を要請しろ!」
秋葉原中に散らばるダンジョンの入口全てが、ブレイクエリアの中心点となってしまっている事。
これが一番の問題だった。
通常のDBBであれば入口は一つだけなので、そこから半径二キロ以内がブレイクエリアとなる。
しかし蟻巣ダンジョンは秋葉原の東西南北の外れにも入口があるために、その分範囲も拡大してしまうのだ。
「だから二、三箇所のダンジョンコアを休眠状態にすべきだと言ったんだ! あのバカ区長め!」
蟻巣ダンジョンは元々七つの小規模ダンジョンが、偶然に通路で接続されてしまったものだ。
その全容は解明されており、最奥にある各ダンジョンコアは破壊する事でダンジョンの休眠化を促す事が出来る。
休眠すると数ヶ月から数年の期間、そのダンジョンにはモンスターが湧かなくなる。
そうなると、モンスターから得られていた素材が市場に流通しない事になり、そこへ訪れる探索者もいなくなり、探索者向けのショップや飲食店なども売り上げが下がり打撃を受けてしまう。
そういった経済的下落を忌諱した各自治体の長が、ダンジョンコアの破壊をしないよう区長へ嘆願したのだ。
区長もそれに同意した結果、七つのダンジョンコアは共鳴し、この度の大規模なDBBが発生してしまったのだった。
複数のダンジョンが同時にブレイクするという事象は、過去に一度だけ確認されている。
それが青木ヶ原樹海に存在するダンジョンであり、今や日本最大の魔境と化してしまった場所である。
現在樹海は分厚い壁で隔離されているものの、その中はモンスターや未知の動植物で溢れかえるファンタジー世界さながらの様相なのである。
「絶対に、絶対に防衛を成功させるんだ! 東京に魔境を誕生させてはならない!」
近藤は自らに言い聞かせるように言葉を吐き出す。
蟻巣ダンジョンの全ての入口には、今回のような緊急時の使用を目的とした特殊隔壁が設置されている。
それが最初の防衛ラインであり、避難や対策の時間を稼げるであろうと期待されている護国の壁である。
以前からダンジョン入口に隔壁を設置する話は上がっており、この秋葉原を始めとして全国各所で試験的に設置が導入されていた。
そして今日が日本初の実戦運用となる。
この隔壁がどこまで通用するのかは未知数だが、少なからず多少の時間稼ぎにはなるであろう。
「局長! 敵ルート及び出現予測地点出ました! すごい数です!」
「よし! 直ちにアカネ氏及び連絡のつく探索者、ダンジョン特自部隊へ知らせろ!」
敵の進行速度と出現するであろう入口は判明した。
ここからの対応で街の被害の大きさが決まる。
メインモニターに映し出されているおびただしい数のモンスターを睨みつけ、近藤は拳を固く握りしめた。
【祝!40万PV!】】俺だけ使えるジョブ【ガンナー】でPKKしていたら、襲われていたのがアイドル配信者だったせいでバズり散らかしてしまい、アイドルのコーチングをする事になってしまった 登龍乃月@雑用テイマー書籍化決定! @notuki
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