夏休みが始まって間もなく、ママが部屋に来て手話で私にこう言った。


〈念のため、ウィルと待ち合わせした場所に一緒に行きましょうか?〉


 そう、今日はウィルと会うはずの日だ。

 私は待ち合わせ場所までママに車で送ってもらった後、ウィルが運転する車に乗って一緒に何処かに行く予定だった。

 だけど、細かいことは何も決めていないし、結局ウィルからの連絡もない。

 私は首を振った。


〈本当にいいの? 彼が来ている可能性だってあるのよ?〉


 私は再び首を振った。

 彼が来てくれるかもしれないなんて期待しながら、待ち合わせ場所で待ち続けるなんて私にはできない。きっと途中で心が折れてしまう。


 今日はウィルのことを考えないようにして過ごそう。私は決心した。もっとも、そんなの不可能だって分かってはいたけど。



 次の日のことだ。

 私が本を読んでいると、洗い物をしていたママが手話で私に玄関に行くように言った。

 玄関のチャイムが鳴ったらしい。


 普段、私が玄関のドアを開けることは少ないから、私はうっかりドアスコープを覗くのを忘れて、ドアを開けた。


「・・・・・・・」


 私はたっぷり10秒くらいはそこで固まっていたと思う。


 ドアの向こうにいたのはウィルだった。


 通じると思っていたわけではないけど、私は手話で〈なんで?〉と言った。


 彼はニヤッと笑って私を指さした。……意味はyou君は


 私が驚いて彼を見つめていると、彼は自分の胸に手を当てた。意味は……my僕の


 それから、ゆっくりと頭の横で腕を回し、自分の顔の方に手のひらを向けた……


 意味は……sun太陽


 私が見つめているウィルが、涙でぼやけてきた。


 なんであなたがここにいるの? どうして手話ができるの? 一体あなたは何を考えていたの?


 私は泣きながら、彼に抱きついた。彼は優しく私を受け止めて、そっと撫でてくれた。



 後から話を聞いたところ、彼は私の秘密を聞いてから、ずっと手話の練習に没頭していたらしい。

 そのせいで、メールをする暇もなかったという。確かに、彼の手話は二週間で身につけたとは思えないほど上手かった。

 昨日は、一日中待ち合わせ場所で私を待ってくれていて、私が行かなかったから、誕生日プレゼントを送った時の住所を頼りにここまで来たそうだ。


 私も、彼のためならこれくらい、いや、これ以上の事でもするだろう。

 

 だって、彼は私の太陽だから。


 もちろん、私なら真っ先に文字を書いてコミュニケーションをとることを思いついただろうけど。

 

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君は僕の太陽 Quill pen @22076an

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