第18話 嫉妬心

 辛辣な口調で言われたにも関わらず、ライリーシアは、その女性に対し笑顔を向けていた。

 

「そうだったね、モーラ」


(そんな嫌味っぽい感じの人に、ライったら、笑いかけたりして。名前で呼んでいるし……ライには、親切心で近付いているようだけど、私に対しては、すごく挑発的な感じで、このモーラって人、苦手だな……)


 ルウリーシアは敵意を感じられるようなモーラに、無言のまま不満そうな眼差しを向けた。


「パートナーとは乗船後、ミリディアの説明受けてから若干の猶予を与えられるけど、その後は、もう一緒に過ごせない規則なのよ!」


 これ見よがしに、ライの腕に自分の腕を絡ませて、忠告してきたモーラ。


(私と一緒にいれないのは、仕方ないとしても……どうして、モーラがライと腕を組んで一緒にいなきゃならないの? モーラって、ミリディアみたいに出る所はかなり出て、締まる所は締まっているメリハリの有るプロポーションしている……いかにも女の武器を強調するような身体付きで、そんな風にライに腕を絡ませたら、彼女の身体もライに密着するのに! 自分のパートナー以外の人に、身体を寄せ付けるなんて不謹慎な真似が、どうして出来るの? アクエリーシア星で、そんな事をした場合は、極刑なのに!)


 モーラの言動が、ルウリーシアの不安を掻き立てる。


(ライは、私以外の女の人から、こんな風に身体を密着するほど接近されて、どう思っているの? まさか、私とは違う体格をした女の人の身体の感触を心地良く感じているなんて事はないよね? さっきは、ライの言葉を信じて大丈夫って思おうとしていたけど、やっぱり、私には無理かも知れない……)


 モーラ一人が、ライリーシアに近寄って来ただけで、もう嫌悪感と嫉妬に駆られて、今までの自分ではないように感じられるルウリーシア。


(こんなに自分がヤキモチ焼きだなんて知らなかった……自分以外の人がライに近付くのも止めさせたいくらいなのに、ツインレイは宇宙船の中ですら、もう一緒に居る事も許されないなんて!)


「私は、そんなルール、ミリディアから聞いてない……」


 モーラに対し、やっと口を開いたルウリーシア。


「ミリディアは、そんな事をわざわざ言わなくても、もう周知の事だと思っていたのよ。募集要項に載っていたわよ。まさか、しっかり目を通してないの?」


 いちいち敵意を抱いているようなモーラの口調が、ルウリーシアの癇に障っていた。

 

(ライは、このさっき知り合ったばかりの女の人に、私がこんな風に言われて、嫌な気持ちにならないの? 私は、こんな嫌味な人とライが一緒にいて欲しくないのに!

いかにも自分に自信が有って、私を見下しているような感じで、そうやってライに腕を絡ませている動作も止めてもらいたい!)


「ごめん、モーラ。僕とルウは、離別の話をまだ終えていないんだ。終わり次第、また、皆の所へ行くから、待っていて」


 ルウリーシアの気持ちを察し、ライリーシアがモーラを遠ざけた。


(モーラが行ってくれてよかった! でも、皆……って?)


 モーラが去って行った方に目を向けたルウリーシアは、先刻、ライリーシアを取り囲んでいた女の人達が、モーラと同様の気持ちでいるように感じ取られるような雰囲気で、二人の方に視線を向けていた。

 

「ライ、あの女の人達って……?」


「まだ、教えてもらっている途中だったから。ルウがミリディアに呼ばれている間も、親切に色々、ここでの生活についてアドバイスしてくれていた」


(あの人達は、私がミリディアに呼ばれていた間だけじゃなく、この後も当然のように、ライが自分達の元へ来るのを待ち望んでいる……ミリディアから聞いていたけど、ライは、私だけじゃなく、他の星の女の人達の目から見ても、魅力度が高いっていうのは、こういう事だったの……?)


 今後の事を考え、視界に入る女性達に対し、不安と嫉妬が入り混じった気持ちが募るルウリーシア。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつか必ず逢える、その時まで ゆりえる @yurieru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ