第17話 その言葉を聴けただけで

 ライリーシアの返答を待ちつつも、その返答が自分にとって望むものでは無かった時の覚悟が出来てないルウリーシアは、自分の問いかけを後悔した。


(例え、望み通りの答えをもらっても、何だかライの事を信じてないように受け止められそう。そんな考えの私には、ライから期待してない答えが戻って来ても、仕方ないのかも知れない……)


 ルウリーシアに大きく影を落としている疑惑には気付かず、ライリーシアは、彼女からのその質問自体が信じられ無い様子だった。


「そんなの愚問だよ! どうして、君がいないのに、僕が一人で地球に行けると思う?」


「ライ……」


 今まで煩わされていたルウリーシアの憂いを一気に吹き飛ばすほどの威力が、ライリーシアの返答にあった。


(ライが、私が欲しかった答えを返してくれた! ライのその言葉が聞きたかった! そうだよね……ライの事を一瞬でも疑った私がどうかしていた。私がライだけを想うのと同じように、いつでもライは私だけを想い続けてくれている! それだけ確認出来たなら、もう私は、大丈夫!)


 ライリーシアの言葉で、自分達ツインレイの繋がりの深さを再認識させられたルウリーシア。


「ごめんね、ライ。ここに来て、今までと違う事が多過ぎたから、私、気持ちが付いて行けなかっただけなの……」


(これからは、こんな風にライに聞いてもらえる事も無くなって、テレパシーで意思疎通する事だって出来なくなるんだから。些細な事くらいで、いちいち動揺してばかりいられない!)


 本来の目的を思い出し、気持ちをしっかりと保とうとするルウリーシア。


「地球へのフロンティア活動は、ルウが望んだものだから、僕はその希望をかなえてあげたいだけなんだ。だから、もしも、ルウにとって想定外の事が多くて負担となるなら、ミリディアからは、今ならまだ間に合うって言われてるし、一人で抱え込もうとしないで!」


 先刻のルウリーシアの動揺ぶりが尋常ではないと感じ、気がかりそうなライリーシア。


(ライ、いつも通り、優しくて、私の事を第一に考えてくれている。このフロンティア滑動は、私が提案した事なんだから。その私が、ライの事を信じずに、周りに飲み込まれているなんて、バカみたい!)


「ありがとう、ライ。私は、本当に、もう大丈夫!」


「ルウ、無理してない?」


 ルウリーシアの瞳を覗き込み、気持ちを探ろうとするライリーシア。


(念を押してくるライの視線が、今は苦しい。無理してないなんて言ったら、嘘になってしまうから。言葉にしなくても、テレパシーが使えなくても、ライには、そんな気持ちが見抜かれてしまいそうだけど……)

 

「ライの言ってくれた言葉が有るから、私は、大丈夫!  ありがとう、ライ!」


 ライリーシアの視線を反らし、明るく居直ったルウリーシア。


(私の希望で、もうとっくに船出したのだから、いつまでも、自分の気持ちの中に閉じ籠ってばかりいられない! 私は、もっと強くならなきゃ! ライがいなくたって、一人でも大丈夫なくらいに強く!)


「お別れの挨拶は済んだのかしら? そろそろ、この宇宙船での生活様式に慣れてもらわないと」


 先刻、ライリーシアに群がっていた女の人の一人が、痺れを切らしたように二人の会話に割り込んで来た。


(誰……? さっきの取り巻きの一人? 私達の会話に割り込んで来るなんて……)


 自分に言い聞かせた決意が、早々に揺らぎそうなルウリーシア。

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