第16話 同じ想いでいてくれるなら

先刻、ミリディアやメリストスに諭されていたものの、意固地になり認めたくなかった内容を心の中で反芻するルウリーシア。


(だから、私一人の時には、誰も寄って来なかったの……? 私は、異性から感じられる魅力度が低いから? それで、ライが私の方へ近付いた時に、周りの女の人達の目付きが険しい感じだったの……?)


 まだミリディアが説明した内容さえ疑問に感じていたルウリーシアは、こうして早々に、それを証明するような出来事が目の前で展開されるとは、予想もしていなかった。


(こんな事が、乗船してすぐに繰り広げられるなんて……アクエリーシア星では、私とライとの間に、何も優劣なんて存在しなかった……誰も、私達ツインレイに割り込むような事なんてして来ないし、私達だって、他のツインレイの相手に、好奇心から接近するなんて事も無かった。それなのに……)


 ルウリーシアとの会話中も、ライリーシアは周囲の女性達の視線を一身に集めていた。

 そして、ルウリーシアに対しては、その視線とは別の種類の視線を浴びせて来ていた。


(ライはずっと私だけを見てくれて、私もライだけを見て生きて来た。地球へ行って、物理的距離で離れていたとしても、ライとの心の繋がりだけは、失われる事は無いと信じていたのに……地球どころか、その前の乗船段階で、もうこんな先制攻撃のような事態に遭遇するなんて)

 

 宇宙船に乗船する前から、ライと離れる覚悟は出来ていたつもりのルウリーシアでも、その状況は受け入れ難かった。

 

(覚悟は出来ていたはずなのに……でも、まさか、それがこんなに早く、まずミリディアから言われて、まだ納得したくない気持ちでいるうちに、もうライの周りでは、こんな展開になっていた。体験するまでは容易く捉えていた事が、いざ体験してみた途端、今ある現実から目を反らしたくなるなんて……)


 ふと、アクエリーシア星でのライリーシアからの言葉を思い出したルウリーシア。


(私らしくない……? また、そんな風にライからは言われそうだね。って、どういう意味で言っていたの? 慎重派なライと違って、好奇心優先で、後先考えず行動する無鉄砲さの事? 今更、そういう自分の落ち度に気付かされても、もう遅過ぎる……だって、宇宙船はもう既に地球に向けて出航しているのだから……)


「ルウ、どうしたの? ずっと、黙ったままで」


 テレパシーが通じない宇宙船内。

 今までと違って、ライリーシアは、彼女に直接尋ねるより他に、心の中を知る術が無い。


「ライも、ミリディアから聞いたよね? もしもなんだけど……私が、強制送還になったら、ライも一緒に、アクエリーシア星に戻ってくれる?」


(ライは、どう思っているの? 今、私がいなくなっても平気? このまま、地球で私と別々に生きて行けそう? さっきから、あんな風に、色んな星の女の人達に囲まれて、引く手あまたの状態だから、もしかして、その中に、私よりずっと好きになれそうな人とか、もう見付けられたの? アクエリーシア星での日々よりも、ずっと刺激的な生活がライには待っていそうで、私とは真逆に期待に胸躍らせている?)


 願わない方向への想像を進ませながら、ルウリーシアは、乞うように尋ねた。


(そんなのイヤ! 私には、ライだけなの! こうして、少し違う時間を過ごしただけで、私、本当に今さらだけど、それが確認出来た! 地球どころか、この宇宙船に乗る前から私の不安は芽生え始めていたけど、今はもうピークかも知れない! それなのに……どうしたら、ライとこの先もずっと一緒にいられるか考える時間すらも、私達には、もう残されていないかも知れない……)


 ライリーシアの返答を期待しながら、それが自分と相反していた場合を考えると気が気でないルウリーシア。

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