第34話 平穏

あれから2週間経った。俺はあの後久しぶりに家に帰って母さんからの長い長い説教を受けた。でも母さんが俺のことを心配してのことなので俺は甘んじて受けた。


次に笹崎先輩の事。

笹崎先輩は真白が足止めしてくれたおかげで俺たちのところに辿り着く事なく痣が消えた反動からか意識を失ってしまったらしい。真白が近くを通りかかった人に伝え、救急車で運ばれていった。今は学校に来ていない。噂では手をつけられなくなったから精神病院に入れられたっていうのが流れている。本当かどうかは知らないが。


そして山神様。

山神様は今も俺と共にいる。マフラーのように首に巻き付いていたり、腕に巻き付いていたりとほとんど俺にくっついている。食事とかどうすればいいのか分からなかったから試しにクッキーをあげたら喜んで食べてた。真白も甘いものに目がないみたいだったから口に合ってよかった。


そして奏多さん。

奏多さんは俺がこの件に巻き込まれていたから仕事を休んで俺についててくれていた。その反動で今は返事も返せないくらい忙しい日々を過ごしているみたい。これは真白からの情報。毎日仕事から帰ってくると死んだように眠っているらしい。原因は俺にあるから後で日持ちするお菓子を持っていってあげよう。


「は〜る、カワイイ子でもいたか?」


「臣、お前は相変わらずだな」


「せっかく、高校生になったんだから楽しまないと損だぜ、はる」


「はいはい、せいぜい羽目を外さないように、ほどほどにな」


「その辺はちゃんと弁えてます〜。はる、また今度どっか遊びに行こうぜ」


「そうだな、考えとくよ。その前にお前はテストどうにかしろよ?」


「はは、なんのことやら。テストなんて余裕余裕」


この高校は中学の時と違って中間テストがなく期末テストだけなのだ。故に各科目の範囲が半端なくて俺も最近は毎日勉強している。目の前の臣を見る限りヤマはってどうにかしようという魂胆なのだろう。甘い、甘すぎるぞ。


「そういえばさ〜、なんか腕にあんの?お前最近よく腕触ってるじゃん」


「いや、何もないけど。そんなに腕触ってるか?」


「ん〜、なんか気になっただけ。なんもないなら別にいい」


……山神様が気になってつい触ってしまっている。授業中は首に巻き付いているからそんなに気にならないけど、腕に巻き付いてる時に落ちてないかついつい確認してしまう。こうなったら常に首にいてもらうしかないな。俺は今もなお腕に巻き付いている山神様をソッと見る。どうしたの〜?っていう可愛い目で見てくる。俺が山神様を撫でると山神様はクルルと鳴いて返事をしてくれた。






本当にちゃんと帰って来れて良かった。俺一人ではどうにもする事が出来なかった。奏多さんたちが居てくれなかったらゾッとする。俺は自分をみんなを守れるくらいに強くなりたい。改めてそう思った。

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蒼井ノ妖手記 @Y_uki

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