第33話 共に
とりあえず山神様は俺と一緒に過ごすことで片がついた。一応普通の高校生だったはずなんだけどなと思う。人とは違うものが見えている時点で普通とは言えないかもしれないけれど。そろそろ日も暮れてきそうだから奏多さんたちに声を掛ける。
「奏多さん、そろそろ帰りましょう。もう日が暮れてしまいます」
「ちょっと待って、悠加。山神様はどうにかしてほしい。痛い、痛いよ!」
「山神様、後生ですからこちらに来て下さい!」
状況が渋滞している。どうしても守り人に捕まりたくない山神様は奏多さんを盾ににしながら逃げ惑っていて守り人は捕まえようと必死に手を伸ばしている。
「山神様も一緒に帰りましょう」
そう言うと山神様は動きをピタッと止めて、俺を見た。他の二人も同様に動きを止めている。
1番動きが早かったのは山神様だった。猛スピードで俺に突撃してきた。よほど嬉しいのか巻き付いたり、スリスリしたりそれはもうやりたい放題である。
「待って、悠加⁉︎連れて帰るってどういうこと?」
「どう言うことだ、人間!」
二人ともとりあえず落ち着いてほしい。守り人の方はもう一人に引きずっていかれた。奏多さんには紋様のことを話した。痣のことがあるから心配していたけれど安全なのを確認できるとホッとしていた。奏多さんには心配ばかりかけている。本当に申し訳ない。
「全く悠加は本当に何をしでかすか分からないね。こっちがハラハラしてしまうよ」
「なんかすみません」
どうやら守り人たちも話がついたようだ。こちらに向かってくる。
「山神様〜我らが近くにいないからと言って好き勝手してはなりませんぞ。人間の世界のことは悠加殿によく聞いてよく学ぶ。そして早く帰ってきて下さい」
「お主は全く。山神様、悠加様や奏多殿に迷惑をかけるよなら即刻戻ってきていただきますから。ですがこちらのことは心配ありません。我らが前よりもこの山を豊かにして山神様のお帰りをお待ちしております。…たまには顔を見せにきて下さると嬉しいです」
山神様はクルルっと泣いて返事をしているようだ。
「悠加様、奏多殿しばしの間山神様をお願い致します。それから今更ですが私の名は月彦。隣にいるのが夜彦と言います。もし何かあればお呼びください。どこへなりと馳せ参じましょう」
妖が名前を教えるなんて滅多にないことだと奏多さんは言っていた。いいのかと思ってチラッと隣を見ると奏多さんも驚いていた。
「私たちに名前を教えてもいいのかい?もしかしたら悪用するかもしれないよ?」
「その時はその時だ。今回の件でお前たちは信頼に値すると私と月彦で決めたのだ。もし何かあれば私たちの見る目がなかったと言うものよ」
夜彦はフンと腕を組みながらそんな事したら呪ってやると言うようなで見てくる。俺も奏多さんも二人の信頼に応えられるように頑張らなければいけない。
帰ると言ったのに長話をしていたからか俺の首にマフラーみたいに巻き付いていた山神様がスルッと外れて夜彦に猛スピードで突撃していった。俺も周りのみんなも流石に驚いてみんな止まっている。なぜならあの小さい身体で夜彦をぶっ飛ばしたからだ。飛ばされた夜彦は目を回している。
山神様は宙に浮きながら他を一瞥すると次のターゲットに向かっていった。吹き飛ばされるものもいればスリスリされているものもいる。一体なんなんだ?そう思っていると
「僕の憶測だけど山神様なりの挨拶なんじゃないかな。多分」
奏多さんはそう言った。確かに、家族を送り出す時みたいな感じだ。
俺たちは山神様たちの挨拶が終わるのを待って家に帰った。
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