『道に惑う―うつと書くことで分析する小田―』

小田舵木

『道に惑う―うつと書くことで分析する小田―』

 道にまどう。僕はすっかり迷子になってしまったらしい。

 どの道に迷ったかって?それは人生という道さ。

 僕は今までの人生を突っ走ってきたんだけど。今やすっかり足が進まない。

 どういう風に歩いたら、人生のゴールに辿り着けるか、さっぱり分からなくなってしまったんだ。

 

 今や僕は生きるに値しないクソ。即ちニートで。

 働きに出にゃならんなあと思いつつ、仕事に応募することも出来ていない。

 こういう人間には安楽死という選択肢を与えて欲しいなって思う時がある。

 僕はカート・ヴォネガットの作品を思い出す。安楽死が手軽になった世界の話を。

 その作品では街中に安楽死パーラーがあふれており、安楽死することが世間の為になると喧伝けんでんされている。

 僕なんて。世界から消去されたところで、問題はない…と言いたいところだけど。

 友人と家族が居り。彼らの事を考えると死を躊躇ためらう気持ちが出てくる。


 僕はなんとはなしに生きている。

 だが。将来という未来のヴィジョンがさっぱり湧いてこないのだ。

 僕はうつにかかっていて。未来を悲観する傾向がある。

 もっと楽に構えればいいのに。君は言うだろう。

 だが、僕の壊れたニューロンは自分を傷つける思考ばかりを僕に提供して。

 僕は雁字搦がんじがらめをかけられているようなモノだ。自分の暗い将来ばかりが頭に上る。


 こうやって。うつです!!って喧伝してると。

 僕にはうつしか無いのか、って気持ちになってくる。

 エッセイを書こうとすると、いつもこの問題が出てきてしまって。

 僕は未来への記録のためにこういうエッセイを書くのだが、未来の僕もうつを抱えている気がする。うつは治る病気ではない。寛解かんかいはするかも知れないが。


 思考が一点に収束しない。

 これは薬の副作用のような気もする。

 だから。僕の文章は行き当たりばったりなのだ。

 なんて言い訳。本当は僕が文章を書くのが下手だからだ。

      

                 ◆


 

 僕は文章を書くのが好きだ。こうやって文章を書いている時は自分自身から開放されるから。

 文章を書くというのは、自分の思考の檻から出る行為なのだ。僕にとって。

 まあ?エッセイを書いている時はこうやって自分の思考をベースに文章を書かなくてはならないが。


 僕は慢性的な嘘つきだと思う。小説を書くという行為は嘘をつく事だから。

 嘘は悪いものではない。人を傷つけない限り。

 僕は嘘の世界をこしらえて。嘘の登場人物を用意する。そして彼らに嘘の台本を渡す。

 そんな現実世界のシュミュレーションを僕は楽しむ。神を気取るのだ。

 

 僕は自分の人生がままならないから、小説を書くという行為を楽しめる気がしないではない。

 僕の人生が満たされていたら?僕は小説を書いただろうか?

 きっと書かなかっただろうな。だって現実世界という出来の良い物語を愉しめばいいんだもの。


 僕は小説書きとして。何を目指しているのだろうか?

 昔は書籍化作家になりたかった。だから公募にも挑戦し続けて。

 7作は送りつけたんだけど。全て一次選考で落ちた。僕はその結果に絶望したものだ。

 

 だが。今は思う。自分の物語は凡百ぼんひゃく以下だ。大した世界を創れてはいない。


 でも僕は物語を書くのを止めていない。

 それは何故か?

 それは僕が嘘…小説に救われているからだ。僕は小説を書くという行為で自己を治療していると思う。

 だから最近はリハビリと称している。そのリハビリは中々効果が高い。僕は7月の末までぶっ壊れていた。だが、リハビリを36日続けた結果、規則正しい生活リズムを取り戻す事に成功している。その上、ハローワークにも通えるようになった。

 これは結構大きな進歩である。うつで小説が好きな人は試してみて欲しい。


 今の僕は小説を書き続ける事を目標に書いている。まるで自給自足。

 だから、今日みたいにネタが浮かばないと焦る。今日はPCを起動して、1時間は文章が書けなかった。その時の苦しみよ。

 

 もし、書けなくなってしまったら?

 考えるだけで恐ろしい。今年の4月から7月にかけての大うつ期が再来すると思う。


 大うつ期は―リンボ辺土だ。僕の精神の中のリンボに迷いこむ事になる。

 そのリンボでは僕は完全に希望を失う。そこでは今以上に未来を思い描けない。

 リンボは僕の生命力をも奪う。僕は中毒の煙草をその時期は止めていた。煙草を吸いたいという、割と大きな欲求さえ、そこではかき消されてしまうのだ。

 

                  ◆


 大うつのリンボを彷徨さまよった僕は。割と本気で死んでしまいたかった。

 6月に31になってしまい。僕は名実ともにおじさんになって。

 10年前はこんな未来を予想してなかった。僕は当時、引きこもり専門の団体の寮に居て。そこで曲がりなりにも青春を過ごしていた。あの頃を思い出すと、嫌な事もたくさんあったが、楽しんで人生を過ごしていたと思う。


 あの頃は。僕の周りには友人が居て。昼までのパートをこなして帰ってくると、彼らとどうでも良いような時間を過ごしたものだ。

 そんな彼らはいま遠くにいる。そして僕とは違ってちゃんと人生を生きている。

 それを思うと情けなくなってくる。僕だけが足を止めて彷徨っているのだ。


 僕は血気盛んな若者だったが。今ではすっかり牙を抜かれて大人しくなっている。

 あの頃は色んな人に噛み付いて。年上の先輩たちに甘やかされていた。

 ああ。あの頃に戻りたい…なんて一瞬考えてしまう。そして彼らと語り合いたい気がする。あの当時は一瞬でも早く寮を出て自立することを考えていたのに。


 自立した僕は社会の荒波に揉まれた。

 この頃の思い出と言えば…「親の顔が見てみたい」と罵られた事かな。

 僕は仕事が出来なさ過ぎて職場の足を引っ張っていたのだ。

 だが。まだ若かったから。無理矢理にでもしがみついて、ゆくゆくは社員まで登りつめたが。


 僕は最初の会社で4年ほど過ごした。転勤させられて、その先でぶっ壊れてしまったのだ。

 のこのこと実家に帰ってき。僕は畑違いの職場に転職した。

 その職場は地獄だった。熱気のこもる工場にち込まれて。真夏にエアコンなしで肉体労働していた。その上。年末にボーナスが出ると、自社の製品を買わされて。

 僕がぶっ壊れるのは時間の問題だった。

 僕は前職の段階でうつの傾向を強めており。最後のトリガーを引いたのが2つ目の職場だったのだ。


 僕は27の頃から、うつと向き合っているが。

 まったく治る気配はない。寛解の傾向さえ出てこない。

 これは僕がうつという病気で疾病利得しっぺいりとくを得ているからではないか?と疑う事がある。

 疾病利得…病で得られる利益の事だ。僕はうつであり続ければ多少働かなくても許される…

 だが。疾病利得を疑う前に―


 うつ。でも障害者手帳が出ないレベルのうつ。こういう中途半端な病気はたちが悪い。

 仕事を探す上で、かなりのネックになるのだ。

 ハローワークに行って。正直に今の状態を話す…「うつ病明けで社会復帰をしたいのですが…」「障害者窓口へどうぞ」「どうも」「はい。ところでアンタ、手帳持ち?」「いいや」「んじゃあ。大した事はしてやれんよ」僕はうんざりする。役に立たない。


 正直面倒臭くなって。ハローワークの前で勧誘をしている派遣会社のところへ行って。「お仕事お探しですか?いいのありますよお」「実はうつ(以下略)」「それでも大丈夫です、担当営業に繋ぎましょう」「ありがとうございます」

「で?貴方の経歴は?」「かくかくしかじか。うつです。一ヶ月に二度通院してます」「それじゃあ。就職できませんよ。クライアントさん、うつ嫌がりますから」ああ。


 僕は中途半端なうつなのだ。薬をオーバードーズしたりはしないし、自殺を考えてロープを用意するまでは出来るがその先は出来ない。

 だから通院投薬で済んではいるが。病いで得られる利益など殆どない。せいぜい疾病手当しつびょうてあてが受給出来たくらいだ…これは少しは利益だったのかも知れない。

 

                   ◆


 僕のうつは他の人と比べてどうなのだろう?たまに考える事がある。

 僕はうつになってから、うつ病関連の本を読み漁った。だがそれは参考にならなかった。あまりにもうつの病態が広すぎる。

 どの本を読んでもしっくり来ることはなかった。

 多分。この文章も他のうつの人の参考にはならないと思う。

 なのに、何故、うつ関連の文章を書き続けるか?

 それは先程から言っているように未来への記録の側面もあるが、自分の病態を世間に問いたいという気持ちもあるのかも知れない。


 僕のうつ病は果たしてうつ病なのか?

 それともただ働きたくない故に言い訳に徹しているのか?


 一応、僕には医者のお墨付きはある。きちんとうつの診断を下されてはいる。

 だが。僕はこんな病気、欲しくはなかった。もっとまともなニューロンが欲しかった…


 ああ。何を書いているんだろう?だけど書かずには居られない。

 こんな文章、誰も必要としないだろう…

 

                   ◆


 暗くなってしまった。カクヨムにポストする文章なのに、読んでくれる読者様の事を全然考えてなかった。


 僕は2022年からカクヨムユーザーで。そろそろ投稿した文章が100を超える。

 僕の文章は―最初は読まれる事がなかったが。『自動人形オートマタシリーズ』の頃から宣伝するようになって、それなりに読者様がつくようになった。

 これはありがたい話なのだが。

 僕は欲が深いらしい。一度読者がつくと、もっと読者を欲するようになって。

 1月から4月の頃は某SNSに一日張り付いては宣伝をし続けた。

 あれは―良くなかったな、と今は反省している。

 あれは精神衛生に良くない。何で一日宣伝しながら文章を書いているのに、読者様がつかないんだ?と病んだもの。

 だから。最近は。誰もSNSをやっていない早朝に作業を始め、皆が動き出す朝には作業を終えるようにしている。そしてPCをシャットアウトして、他の事をするようにしている。


 僕は何で文章を書いて。カクヨムにポストし続けているのだろう?

 先程の結論は自己治療だが。もうちょっと分析をしてみよう。


 僕は結局。書籍化作家の夢を捨てきれていないような気がする。

 今は文章を書く練習をしている…んだろう。多分。

 そのうち。長編を書いて。賞レースに参加したいと願っているような気がする。


 だが。

 今、投稿し続けている作品にもありがたい事に読者様はいるが、爆発的な数字ではない。

 この世の中。需要のないモノは供給はされない。

 僕の文章は誰にも必要とはされていない気がする。

 だって。こんなエッセイも。自慰的オナニー文章の域を出ていないもの。

 

 僕は文章を書くことで―飯が食えたら良いな、と思うことがある。

 だが、そのための具体的な努力はしていない。ただ、自分の満足行くように文章を書いているだけだもの。

 本当に文章で飯を食うことを夢見て、それに対して努力する者は。キチンとフィードバックを行ったり、自己の文体にも改良を重ねている。

 僕は他の作者様の近況ノートを読む度に頭が下がる思いである。

 僕みたいな自己満クソ野郎とは違ってトライアンドエラーを積み重ねている。


 

                   ◆


 

 今までのクソ文章を読み返して思ったこと。

 僕は努力することから逃げている。努力すべきところで―逃げ出す。

 そう。逃げの達人なのだ。逃げの小田。

 小田は人生の至るポイントで努力を怠った。だから今の有様なのだ。


 僕には価値などありはしない。魅力もない。カネもない。何もかもがない。

 それはお前が努力をしてこなかったからである。自明の事実。

 そうして。今、このようなエッセイを書き散らし、。なんと醜い事か!


 醜い僕は―貴方あなたがたに乞うているのだ。

 と。

 

 …感情が高ぶってしまった。今は煙草を吸って落ち着いてきた。

 だが。この構ってちゃん根性。どうにかしなければ。

 

                   ◆


 人は人との関係性の中で初めて人間になる…我が父がよく言う。

 僕はその意見に反対したい。僕は人の中で生きていたくはないのだ、さっきの叫びとは矛盾しているが。


 僕は他人が苦手だ。どうしても愛せない。それは僕が自己中心的だからだろう。

 僕は出来ることなら。世界から切り離されたい欲がある。

 だが。そんな世界は暇だろうなって思いもある。


 アウトサイダーの世捨て人になれたら。どんだけ楽になることか!

 世の雑音を廃し、自己満足の中に終始する―ん?

 今の僕も。世の中からは切り離されていて。自己満足みたいな文章を書き連ねているぞ?

 お?もしかして。今の生活に終始しがちなのは―僕がこの世界に満足しているからか?


 …ヤバイ事に気が付いてしまった。

 このままでは。一生この生活からは抜け出せないのではないか?

 でもなあ。このままだと迷惑かけ通しなんだよなあ。

  

                   ◆


 さてさて。もうこの何を書いているのか分からなくなってきたエッセイも5000字を超えてしまった。

 そろそろ締めの時間にしたい所だ。


 だが。僕はこんな整理されてない文章を締める言葉を思いつかない…


 おっと。そろそろハローワークに行く準備をしなくてはならない。


 だから。この自己分析文章はここまでにさせてもらおう…

 これ、僕の文章の中で一番締めが汚い作品になろうとしているな。


 だが。人生というものは、そうそう綺麗に割り切れるものでもないのだ。

 僕は今回分析したようなクソみたいな精神を引きずりながら今日も生きる。

 変える努力をしろって?うん。考えとく…


                   ◆


 

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『道に惑う―うつと書くことで分析する小田―』 小田舵木 @odakajiki

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