第173話 掴んだのサ!尻尾を!
なんだかんだトラブルが有りつつも楽しかったグループデートの翌日、国家機密さんから待ちに待った一報が入りました。
『掴んだのサ!尻尾を!』
メッセージアプリに表示されたのはその一言だけでしたが、何の尻尾を掴んだのかは言うまでもないと思います。
あ、ちなみに国家機密さんの端末は週替りで変更されているらしく毎回表示されるユーザー名が違いますが、彼女自身の口癖を文面に表示して送ってくれるので間違ったりすることはまず無いです。割と特徴的ですからね。
とりあえず、掴んだ情報を確認しに諜報班のお部屋へと移動しましょうか……。
移動した先で待っていたのは、床に散乱する栄養ドリンク(めっちゃ高いやつ)の瓶と目を爛々と輝かせて鼻歌を歌っている比良坂さんちのみっちゃんと、ソファーの上で丸くなってネコのように眠っている国家機密さん。
椅子に座って恐らく報告書と思われる文書をパソコンで作成している咫村崎センパイ、その膝により掛かるようにして眠る清嶺さんという修羅場終了後の様相でした。
これは相当苦労した感じですね。
あ、流石にこの修羅場に居させるわけにはいかなかったのか藤吉さんの姿は見えません。
「あらセヴンスさん、いらっしゃい。ちょっと私達は皆手が離せないのだけど適当に寛いでもらってよろしい?」
唯一ちょっと余裕がありそうな咫村崎センパイにそう言われますが、この惨状の何処に座る場所があると……?
というか、これ報告書待ったほうがいい感じなんじゃないですかね?
ほら、みっちゃんなんて空間の穴に手を突っ込んで謎のライフルを引っ張り出してますよ?
……ってライフル!?
「んふふー、慌てて拠点を放棄したせいか重要な証拠を回収しわすれてたみたいだにゃー」
ああ、なるほど……。
それがここしばらくの出撃で理珠さんを狙ってくれやがってたライフルですか。
理珠さんの対狙撃性能が高かったおかげで何事もあませんでしたが、運が悪ければ理珠さんの頭をぶち抜いていた可能性がある銃と考えるとちょっと壊したくなってきますね。
いや、物品自体に罪があるわけじゃないのはわかってるんですが。
「というか、敵の正体とかの情報ってどうなってます?」
敵の拠点を発見したと言うなら、正体とかもわかってる感じでしょう。ゾンビ3人合体で巨大ドラゴンを作り出したりした連中はどこのどいつなのでしょうか?
とりあえず、国家機密さんの頭をソファーから浮かせて膝枕をする形で座った私に1枚の紙が突きつけられました。
お、ドラゴン化する3人のゾンビじゃなくて指揮官側の人員でしょうか?
いかつい男性と、魔生対の魔法少女達と対して年齢が変わらなそうな少女の写真が印刷されています。
えっと、どれどれ?
……いや、思いっきり以前倒した組織の残党ですよねこれ?
雨後の筍みたいにぽこじゃか湧いてくるジ◯ン残党じゃないんですから、現実世界で壊滅した組織の生き残りがリベンジしてくるのは正直勘弁してほしいです。
えっと、このいかつい男がマクシーム?マクシム?ですかね?名前はともかく姓はコロコロ変わるから記載されてないっぽいですね。
で、私を拉致して殺してくれたり、リトヴィンツェヴァ姉妹をひどい目に合わせてくれやがった
やらかしたのコイツが次の局長に任命したエヴゲーニヤとかいう博士じゃないですか!なんでコイツは私に復讐する事にしたんですか!
まったく、はた迷惑この上ないです。
で、もう一人の女の子が……。
……えっと、大山田風舞雅?ふうがとでも読むんでしょうか?
あ、いや読み方は別に書いてありました。
えっと、かぜにまうみやび?おおやまだかぜにまうみやびさん?
公の場じゃ絶対名乗りたくない本名ですねこれ。
で、大山田って事は……。はい、案の定例のクソ教祖の娘ですね。
って、あのクソ教祖結婚してたんですね……。
こっちはまあ、私に対して復讐してくる感情がわからなくもないですがめんどくさいのはどっちにしろ一緒です。
あ、魔力保有者でもあるんですね。流石に超能力者ではないみたいですが、敵として倒そうとした相手の能力を娘も持ってるとか、この子あのクソ教祖的にはどういう扱いだったんでしょうね?
んでんで、過去再現で盗聴した結果変身後の名前は千疋狼、根源は支配と統率……と。
なるほど、この根源なら3人のゾンビを1体のドラゴンに合体させることは不可能では……無い……のかな?
そして、ここまで調べておいて現在の潜伏先は不明と……。
なんか諜報班の方々、いつになく苦戦してますね。
「これだけ時間かかった割には全然調査進んでないじゃんって思ったよね?これには深い理由があるのサー」
おっと、私のガリガリな太ももの寝心地に耐えられなかったのか国家機密さんが目を覚ましましたね。
なんか、幻術系の魔法を使う相手が居て思うように追跡できない的なのはザマさんから聞いた覚えがありますが実際どんな感じだったのでしょうか?
「これがサー?明らかに自分たちが覗き見られてる前提のムーヴしててー、その上で魔法で偽装して追跡だけは絶対サせないみたいな?」
ふむ?具体的には?
声には出しませんでしたが、私の表情から言わんとしたことを察したのかセピア・フィルムさんが続けます。
「なんだかんだサ?わたしの過去再現による調査でもみっちゃんの覗き穴でも殆どの情報を視覚から取得してるわけじゃん?」
まあ、過去再現の物品を手元でいじくるのは魔力消費が激しい的な事を前に聞いた記憶がなきにしもあらずなので多分そうなんでしょう。
「で、今回の敵はそれを見越して幻覚魔法を使って定期的に姿を消したり、拠点までの道のりを回り道に回り道を重ねてクッソ長い道のりを辿ったりして魔力消費が追いつかなくて簡単には辿りきれないとかそういう手を使って撹乱してきてたわけ」
なるほど?
確かに過去再現による追跡も魔法で行うからには、あまりに長い距離を長い時間を掛けて移動されてしまうと魔力切れになって追いきれないとかは有効そうな手です。
その上で、定期的に姿を変えたり消したりされたら追う方はたまったもんじゃないですね。
うーん、かなり強力な調査系魔法だと思ってましたが案外穴はあるものなんですねぇ。
問題はなぜ国家機密扱いのこの魔法の存在がバレたかですが……、クソ教祖の娘なら会議襲撃とか諸々の出来事から推測していけばワンチャンこの魔法にたどり着ける可能性が無くは無いですね。
恐らく元から猜疑心が強い系の人間なんだと思います。やれる対策は全部やっとけ系といいますか。
で、取った対策がたまたまこちらの諜報班の調査魔法に対してクリティカルを叩き出した的な感じでしょうか?
となると、今回倒さなきゃならない敵は悪人ではありますが生身の人間であると……。
なんだかんだ特殊な魔物だったり人間をやめた融合生物だったりとは戦いましたが、真っ当な人間相手というのは初めてですね。
いや、私は良いんですが理珠さんやミラさん、他の魔法少女の子達に人殺しなんて業は背負わせたくないんですよねぇ……。
まあ、マクシムとかいう男の方は良いですよ。
身体能力は人間の枠をどうやっても超えないでしょうし、なんだかんだ
問題はかぜにまうみやび(笑)の方なんですよねぇ。
まあ、無力化して拘束まで持っていけなかった場合は大人である私が責任を持って仕留めましょうか。
あれ?戸籍がない場合って過剰防衛とか業務上過失致死傷罪とかってどうなるんでしたっけ?
まあ、上司がザマさんですしなんとかしてくれるでしょう。多分。
「で、今日付けで大山田の娘の方を指名手配する手続きしといたから、これから更に動きが制限されて行動が読みやすくなるんじゃないかにゃーと思うのサ」
お、さすが手が早いですね。
あれ?男の方は?
「あ、マクシムの方は既に国際指名手配済みだったからコレといっしょに行動してるよーって通達だけ。ただ、日本人って欧米人の顔見分けるの苦手だから期待は出来ないかなって」
……なるほど。
というか、結局現在の居場所に関しては諜報班でもまだ掴めてないんですね……。
なんだかんだ、やっぱり恐ろしいのは人間なんだなぁという気がします。
とは言え、包囲網は確実に狭まってますし案外明日にでも補足できちゃったりするのかもしれませんが。
これは、ドラゴン騒動の終わりも近いですね。
ようやく枕を高くして眠れる日が来そうです。
☆★☆★☆★☆
セヴンスさん、それフラグや……。
ということで後は拠点を見つけて殴り込むだけだよという段階になりました。
このままなら拠点に比良坂さんちのみっちゃんが爆弾でも送りつけて終わりな流れですが、はてさて?
次回、「白兎、還らず」
銀河の歴史が……じゃなくて、次回更新予定は12月28日21時予定です。
よろしくお願いします。
あと、更新日に行っているコメント返しですが作者体調不良により別日にて行います。
申し訳ありませんがよろしくお願いします。
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中二病の魔法少女ゾンビ ~心はアラサー、戸籍はアラフォー、そして体はロリゾンビ~ 禍成 黒いの @blakk
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