Humanoid

森野哲

Episode.0

いま、義母にあの日の答えを伝えられたら、何と答えるだろうか。


「楓ちゃん、誕生日プレゼント、何がいい?」


やけに遠慮気味に、よそよそしく聞いてくるもんだから、当時の私は無愛想に「本当の家族」なんて最低なセリフを吐いた。


あの人がいなければ、今こうして生きていることすらできなかったのに。


いまなら、何と答えるだろうか。


義母の葬式の日、私は知った。

自分という人間は、「感情」を母のお腹の中に忘れてきたらしい。


涙を流すことはおろか、感情がちっとも動かない。

花を添えられた棺桶で眠る義母を見て、私はまじまじと観察していた。

人間が死んだら、こんなにも血色が引くんだ……とか。

死んでるのが嘘みたいに、微笑んでるところとか。

義母って、こんな顔をしていたんだ……とか。


そんなことを冷静に観察している自分が嫌だった。

そして、葬式に来てくれた数少ない親戚の人たちに、自分の冷徹な一面が知られることが酷く恐ろしくて、必死に隠そうとしたけれど、どう頑張っても涙は出なかった。


そして、そんなことを考えている自分が恥ずかしかった。


私には、およそ人間の子が持つべき感情が欠落しているのかもしれない。


どこまでも、正常な人間とは程遠い……そう、人間もどき。


Humanoid.







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Humanoid 森野哲 @hyakushoseinen1230

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